授業の空き時間は鬼ごっこ
通常、授業の空き時間では提出物のチェックや授業準備、各部会の会議などをする時間に充てることが多く、ちょっと一息つく時間でもある。
だがこの学校では、空き時間は全くといっていいほどなかった。一部の生徒についていなければならないからだ。授業をしている方がはるかに精神的にも身体的にも楽である。
一番多発したのはエスケープ。授業中、教室から飛び出して学校内や他教室を徘徊して回る。その生徒がいるクラスに、空き時間の教員が張り付く。
ベランダ伝えに他教室に飛び移ることもあったので、本気で命の心配をした。
校外に出ることも度々あった。住宅街や森の中を、中学生と教員が走り回っている。
近所の方にも迷惑をかけた。
このような状況でも、ほとんどの生徒は流されることなく、授業に一生懸命取り組もうとしていた。授業中、走り回ったり奇声をあげる生徒がいるのだから、集中して取り組めるわけはなはい。
本当に辛い思いをさせてしまったが、それでもこらえてやるべきことをやろうとしていた。その姿に私自身が学ばせてもらった。
生徒がエスケープしたときのポイントは、全力で追わないこと。
こちらも必死になって追いかけると、逃げている側はさらに困らせてやろうという心理が働きやすい(と思う)
最悪なのは必死になって大声を張りあげながら全力で追いかけること。
冷静にゆっくりと追いかける。
するとトーンダウンしやすくなる。
私も初めは全力で追いかけていた。それが当たり前だと思っていたが、捕まえても、さらに逃げ出すだけだった。
近所の警察にも協力してもらい、逃げ出した時は連絡を取り合いながら対応した。
バイクでパトロールもしてもらった。
この流れを止めるのには本当に時間がかかった。後輩が先輩の姿を見ているので、中心人物が卒業しても、次の学年でまた同じことが起こる。
粘り強く対応して行った結果、エスケープは3年かけてようやく落ち着いた。
この経験から、生徒指導は予防の観点から考えていくべきだということを学んだ。何か起こってから対応する考え方では後手に回る。
当たり前のことだが、普段からの関係づくりや学級経営を間違えると学校や教員に対して不信感を持つようになる。
エスケープしていた生徒たちも入学していきなりそうなったわけではない。
学校の理不尽さやつまらなさを経験し、より楽しいことや刺激を求めてそうなっていった。
またそれに同調する仲間が複数いたことも、歯止めに時間がかかった要因だろう。
このようなことを起こさないように…と考えて学級経営をするわけではないが、「予防」のためにどうしたらいいかを考えることは非常に大切だと思う。
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