うさぎごと 第3回 布団と眠れない夜と蛹
眠れない夜がありました。布団にくるまって、横になりながら、目を閉じて1時間。目を閉じていてもダメだからとスマホを眺めて、YouTubeで動画を見たり、2ちゃんねる系のまとめ記事を読んだり、Twitterをスワイプしてみたり……気がついたら2時間。深夜で外は静まり返っていて、家族はもちろん誰の気配もしなくて、でもその静けさに安心しました。そのうちバイクの音が聞こえてきて、遠くで電車が走り出して……大嫌いな朝が来ます。朝が来て家族が慌ただしく支度をする音を聴きながら、自分は眠くなってきて、うつらうつらする自分にドア越しに家族が「いってきます」と言って外出します。その後に、ようやく眠りにつくのです。
そんな寝たり起きたり起きられなかったりを繰り返していると、心がじわじわと荒んでいきます。髪が汗と油で湿っても、風呂場まで行く気力がなくなって、食べることも、飲むことも、鬱陶しくなります。地球上の重力がすべて自分に集まっているように思えて、途方に暮れました。私はなぜここにいるのだろうか。動けないのにどうして生きているのだろうかと自問自答して、グーグルで「してはいけないこと」を検索して、ロープやタオルを吟味して……そんな風に一日をやり過ごしていたら、夕方になって家族が帰ってきて、足音が部屋に近づかないことを祈りながら、私はまた逃げ込むように眠りました。
それでもね、大丈夫です。引きこもっても大丈夫です。今、私はこうして文章を書いています。そのくらい、回復しました。「私は同じように回復しないから関係ない」と思われるかもしれません。布団の中にいた時、私もそうでした。一生、布団の中だと思っていました。でも、出ちゃいました。残念なことにどうやって出たのか、具体的な方法はよくわかっていないです。気がついたら徐々に布団から出ていました。
布団は心の「蛹」なのかもしれません。芋虫が蝶になる時、蛹に姿を変えます。長い冬の間、幼虫は蛹の中でどろどろに溶けるそうです。溶けて、春に生まれ変わります。人によって冬の長さは違うので、何年も何十年もかかる人がいると思います。まだ、どろどろなんだと思います。私は布団から出たとは言いましたが、まだどろどろになる瞬間があって、そんな時は毛布にくるまって目を瞑ります。敷布団の上に溶けていきます。
この「どろどろ」があればあるほど、人は魅力的で優しくなります。孤独を知っている人は、美しいです。根拠はどこにもないですが、断言できます。
なんだか、まとまりがない文章になってしまいましたね。布団の中から読んでくださったあなたへ、ありがとうございます。今晩は眠れることを、地球のすみっこから祈っています。
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