シンカ論:③捏造された「外国人差別」ヨドバシカメラとC95
2019年6月25日から、ライブドアニュース他が、ヨドバシカメラ京都店で発生したという画像のような行為を報じた。
このニュースのネタ元は、いちツイッターアカウントであった。
当然ながら、集団の一部の人の悪事によって、同じ集団の他の人を差別することは許されるべきではない。でなければ国・人種・性別その他の無数の理由で、他人の悪事で裁かれことになる。
しかしこのニュースを見たとき、筆者は強い違和感を持った。ヨドバシカメラによく行く人ならば「ファンインクァンリン(歓迎光臨)!」で始まる中国語の店内放送を覚えているだろう。そう、同チェーンはわざわざ店内放送を中国語で流すほど、中国人を歓待しているのだ。
今や日本の都会のたいていの場所では中国語を小耳にはさむ昨今だが、特にヨドバシやビックカメラなど大規模電機店にとって中国人観光客は重要な顧客層である。そうそう十把一絡げに邪険にするとは思えなかった。
実際には同店店長の説明によると、転売防止のために商品名を言えず「前の人と同じもの」などという者には断っていたとのことであり、商品名は中国語で言ってもらっても構わなかったそうである。その他テレビなどで報告された目撃情報もほぼ同様のことを述べており、その上で転売屋と思われる人物が自分で差別であると解釈し抗議していたとのことだ。
要するにガセネタだったわけである。ライブドアニュースは現在、誤った記事タイトルを修正している。
そもそも「前の人と同じもの」というリクエストに応えるのは、前の人が何を買ったかをバラすということに外ならず、厳密にいえば顧客情報の漏えいとなろう。その意味でも応じるべきではない。
私はこの話を聞いて、漫画『キン肉マン』をの一シーンを思い出した。
はぐれ悪魔コンビという悪役が夢のタッグトーナメントに乱入したときである。悪魔コンビのリーダー・阿修羅マンは、大会を運営する責任者が「飛び入りの参加は認められん」と正当な理由をはっきり述べているのに「以前は悪魔だったという理由だけで大会への参加を拒否するのかーっ」と騒ぎ立て、差別問題に仕立てて観客を味方に付けようとするのである(なお以前もなにも今現在コンビ名は「はぐれ悪魔コンビ」である)。
(ゆでたまご『キン肉マン』集英社)
本論で答えると都合が悪いので勝手に差別事件をでっちあげる。この転売屋の行動とよく似ている。
が、漫画は措いておいて、ここで実在の「でっちあげ差別事件」をもう1つ挙げよう。
2018年末に開催された『コミックマーケット95』。いわゆる“冬コミ”である。過去最大の動員数57万人を記録した同大会の終了後、ツイッター上でとあるアカウントが「『中国人・韓国人お断り』という貼り紙を見た」と報告した。
もしこれが本当のことであれば、私はこのサークルの行為はおかしいと思う。「中国人か韓国人に迷惑を掛けられた事情がある人では?」という憶測もネット上では出ていたが、仮にそうだとしても、冒頭の転売屋の件で言ったように一部の者の悪事のせいで関係ない中国人・韓国人を排除するべきではない。
本当のことであれば、だ。
ところが、当時同じことを報告した者は誰もいなかった。
参加者が57万人ということは、1日平均すると約20万の参加者がこのイベントにはいたということだ。その中には当の中国・韓国人も大勢いたのである(私もそこかしこで中国語の会話を耳にした)。しかし誰からもそんな声は聞かれなかった。
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