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モリダイ生協のミハラさん

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M県S市杜王大学生協につとめる2年目職員三原勇気は、不慣れながらも持ち前のガッツで「用品チーム」の学生スタッフたちとともに次の新学期戦略を考えていた。そこへ突然の「物件仮予約」が…
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モリダイ生協のミハラさん 第3話

モリダイ生協のミハラさん 第3話

(ご無沙汰しておりました。第2話はこちらから)

3.増えていく宿題

「ミハラさん、顔色悪いですよ」
出勤早々、新サポカウンターでアルバイトをしているモリダイ人文学部4年の福谷いくえ、通称いくちゃんにそう声をかけられた。
「ええ、そ、そうかなぁ」
今日はいよいよ仮予約が降ろされると思われる職員MTGの日だ。緊張が顔に出てしまったのだろうか。学生に察せられるとは情けない。
「ミハラさんたしか夏に弱

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モリダイ生協のミハラさん 第2話

モリダイ生協のミハラさん 第2話

(第1話はこちらから)

2.不穏なMTG18:00からのMTGには、わたしと4名の用品チームの学生の、計5名が参加した。わたしとまどか、さっき話題にした岩貞、2年生の細川さん、4年生の初芝くん。元々学生6名のチームなので、主要なメンバーはだいたい揃っている。今日は、来月からはじまる商品研修の内容協議の日だ。新生活用品は品数が多く、モデルルームまるごとお買い上げの「セット」組もするが、基本的には新

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モリダイ生協のミハラさん 第1話

モリダイ生協のミハラさん 第1話

1.突然の決定事項「え、今年から物件の仮予約やるんですか!?」
「そうだよ、ただ、まだ理事会通ってないから、取扱は慎重にな」
私は驚きを隠せず大声をあげてしまった。壁をはさんだ向こう側にいる購買のパートさんたちに聞かれたかもしれない。ただでさえ声が大きいことで話題にされるのに、うっかりだ。だが、大声くらい出させてほしいレベルの案件であったこともまた確かだ。
「竹内さん、それどこからの情報ですか?」

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