ポッドキャストができるまで 【編集編】(2024年2月追記)
ポッドキャストができるまで【収録編】の続きです。ポッドキャストは収録音源を編集することで、より魅力的なコンテンツに仕上がります。どの程度まで編集するかは各番組のコンセプトによりますが、ライブっぽい雰囲気の番組でも、実はけっこう編集をしています。自然な編集ができると、リスナーにとって聞き心地のよい番組になるはずです。
編集ソフトはAdobeとizotope
トトトトトーキョーの編集は、Adobe Audition をベースに izotope RX10 をプラグインとして使用しています。ノイズ修正はRX10のみで、Auditionオリジナルの機能は使っていません。イコライザーのみAuditionオリジナルのものを使用しています。
PCは Mac mini
使用しているPCは、Mac mini(2023モデル)です。CPUはM2 Pro、メモリは16GBのモデルです。音源などのファイルは、すべて外付けSSDに入れて作業しています。動作が重たくなることは基本的にありません。
ワイドモニターが圧倒的に使いやすい
音源トラックを切ってつなげる作業なので、ワイドモニターが編集効率を飛躍的に高めてくれます。というか、ワイドモニターでないと作業したくありません。Auditionは画面の左右にファイルやエフェクトなどの表示が並ぶほか、ラウドネスメーターなどの小ウィンドウも表示させ作業します。画面の小さいラップトップPCでの作業はあまりオススメしません。
基本ルールを知っておく
トトトトトーキョーでは、音量の平均値(LUFS/LKFS)が -13 ~ -15LUFSに収まるよう調整しています。これはSpotifyが -14LUFS を基準にしているためです。プラットフォーム側は独自にラウドネス(音量調整)調整し、各コンテンツに過度な音量差が生じないよう補正しているようですが、「音が小さいな」と感じるポッドキャスト番組も散見されます。
追記:番組の配信基準を見直しました。ラウドネスは -16LUFS、トゥルーピーク(TP)を-2dbにしています。プラットフォームごとにラウドネスの基準が異なるため、ヘッドルームに2db程度ゆとりを持たせたかったのが理由です。そうなると-14LUFSは窮屈な編集を強いられます。
音量調整は極めて厄介で、無理やり-14LUFSを狙って編集しようとすると音質の劣化を招くこともしばしばです。ある程度の音量を確保することは前提ですが、あとは「Spotifyさん、よろしく!」と、プラットフォーム側のラウドネス調整に委ねてしまうのも手かもしれません。Spotifyのラウドネス調整はかなり優秀です。素人が下手に編集を頑張るより、リスナーのUXを高めてくれるのではないかと感じることは多いです。
編集前の下処理が重要
追記:ポッドキャストの音声編集は順番に ①ノイズ処理(ホワイトノイズ除去、リバーブ除去など)②整音のためのEQ(ハイパス、ディエッサーなど)③コンプレッサー、となります。収録した音源によって、反響音除去やディエッサーが不要な場合は省略してください。
トトトトトーキョーにはヤマネとミヤモトの2人が出演しています。2人の声はそれぞれ個別にモノラルで収録しています。
Auditionで編集する前に、RX10で簡単にホワイトノイズを取り除きます。ホワイトノイズの除去方法はいろいろありますが、私たちは単純に「Voice De-noise」をかけるだけです。次にゲイン調整で2人の音量差をそろえます。前回の【収録編】で述べたように、32bit float で収録・編集しているので、この段階では、メーターと聴感で大雑把な調整です。TPが音割れ基準の0dbを少し超えるくらいなら気にしません。編集作業時にコンプレッサー・リミッターをかけて調整します。
リバーブ除去について
後段で説明していますが、リバーブ軽減処理はコンプレッサー直前、つまり編集作業の後半に行っていました。現在はこれを見直し、下処理段階で「De-reverb(リバーブ軽減)」もかけるようにしました。各トラックの反響度合いに合わせてリバーブ軽減処理をしています。個人の感想になりますが、下処理段階でリバーブ軽減処理をした方が、若干ですが、声がクリアになったかなと思います。
追記:リバーブ除去は整音作業ですので、上記のように編集作業の早い段階でしてください。
ブリード除去でひと工夫
ここは少しマニアックな解説なので、読み飛ばしていただいてもかまいません。32bit float録音で声量を気にせず話せるようになったおかげで、新たにブリーディングの問題が生じるようになりました。
二人で収録した場合、自分のマイクに相手の声がかすかに入ります。相手のマイクには自分の声がかすかに入ります。自分の声が大きく、相手の声が小さいとします。二人の音量を合わせるため、編集で相手の音量を持ち上げます。当然、相手のマイクにかすかに入った自分の声も大きくなります。これが不快なブリーディングの原因になります。
私たちの番組では、ヤマネの声が大きく、ミヤモトの声が小さいので、ブリーディングが生じやすいです。第五話、第六話はブリード除去を行わなかったため、ブリーディングが気になります。第七話以降はブリード除去を行い、音質が改善しました。このブリード除去は面倒な上、音質にも影響しやすいので、やらずに済むならやりたくない作業です。
▼ブリード除去をしたエピソード
▼ブリード除去をしていないエピソード2本
Auditionでの編集
ようやくAuditionでの編集作業に入ります。32bit floatのWave(Wavファイル)音源を編集する場合は、Audition側のビットレートも「32bit 浮動小数」に設定してください。
二人の音声トラックはいったんバストラックに
二人の音声トラックは互いの音声がずれないように「グループ化」しておきます。それから、二人の音声トラックは「バストラック」に束ねます。
最終的に音声やBGMの各トラックがミックスされて、一つの音源になりますが、ミックスされる前に出演者の声だけを束ねて「De-reverb(リバーブ軽減)」「De-click(電気ノイズ軽減)」などのエフェクトをかけます。
追記:De-clickはかけてもかけなくても大丈夫です。2014年1月現在、私たちの編集ではかけていません。
使用するエフェクトは?
まず、二人の各音声トラックに「パラメトリックイコライザー」「Mouth De-click(ぺちゃくちゃ音除去)」「De-ess(歯擦音除去)」「Breath Control」をかけます。ほとんど使いませんが、ケース・バイ・ケースで「De-clip(クリッピング除去)」も使用します。
追記:イコライザーはハイパス(ローカット)処理のみです。出演者の声質によってカットするエリアを調整してください。Mouth De-clickはマストで使用します。ディエッサーやブレスコントロールは最近はあまり使っていません。かけるとしても薄くです。クリッピング除去はバストラックでマキシマイザー(リミッター)処理をしますので、現在は使用していません。
二人のトラックを束ねたバストラックには「De-plosive(ふかれ・破裂音除去)」をかけています。
追記:De-plosiveも使ったり使わなかったりです。
コンプレッサーの調整は難しい
多くのポッドキャスターを悩ませるのが、コンプレッサーです。RX10を購入したときにバンドルでセットになっていた「Nectar3」を使っています。一般的にコンプレッサーは「手前(生音に近い側)で通すが良し」とされています。ただ、聴感上どうしてもしっくりきませんでした。これは好みの問題かもしれませんが、私たちはコンプレッサー・リミッターを最後にかけて調整しています。エフェクトの使い方は個性が出ます。正解はないので、それぞれがいろいろ試して好みの音を探っていくのがいいと思います。
追記:2024年1月段階の編集作業では、コンプレッサーを多段がけしています。一段階目はヤマネとミヤモトそれぞれの個別トラックにかけます。これはまず笑い声など突発的な大きな音を圧縮する役割です。二段階目は音声のバストラックにかけます。これで全体的に音量をならします。最終的にマキシマイザーで-16LUFS、TP-2dbに調整します。
トトトトトーキョーでは、音声は -6db ~ -9dbが中央値になるように、BGMはトゥルーピークが-25dbを超えないように調整しています。
BGMはArtlist
BGMはサブスクの「Artlist」を使っています。番組全体がおしゃれな雰囲気に仕上がります。逆に、ビート刻むだけの単調なBGMがないので、使いにくいと感じる場面もあります。
書き出しの設定
mp3に書き出します。トトトトトーキョーはサンプルレートが48kHz、ビットレートは16bitです。
追記:サンプルレートは元データに合わせるのがまずは基本です。あとは目指したい音質を狙ってあえて下げるという選択肢もあります。ビットレートについても、ダイナミクスを表現したい場合は24bitでもいいと思います。
書き出す前にラウドネスメーターでLUFSを確認していますが、書き出したファイルもRX10のLoudness Controlにかけて最終確認します。ここで波形や数値を見て、編集を微調整します。
トトトトトーキョーの紹介
編集の目的はリスナーにとって聞きやすいコンテンツをつくることです。セオリーを踏まえつつ、いろいろと試してみるのがいいと思います。
ポッドキャスト「トトトトトーキョー 東京初心者にささげるラジオ」は毎週月曜に配信しています。試行錯誤しながら収録・編集し、配信が進むにつれて音質も改善しています。お読みいただいたポッドキャスターの皆様からも、収録・編集についてご意見いただけると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。【収録編】にも書きましたが、ポッドキャストは楽しく収録、配信することが一番だと思っています。収録や編集はあくまでその「お手伝い」です。こちらで私たちの番組に興味を持っていただいた方は、番組をお聴きいただけると嬉しいです。
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