ゼロから学べるフェルミ推定
トトロのとなりです。
定期的に皆さんが明日から使える情報、雑学をご提供しております。
1. フェルミ推定って何?それってつおいの?
皆さんフェルミ推定って聞いたことありますか?
なんか難しそうな響きの言葉ですが、これがめちゃくちゃ有用な考え方で、仕事ではもちろん日常生活でも使えるテクニックになります。
フェルミ推定とはほんのわずかのデータから桁レベルの粗い推定をする手法のことで、物理学者エンリコ・フェルミによって名付けられました。
例えば、一番有名なものとして、「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」といった見当もつかないような量を推定する例があります。今回はこの推定の方法をご紹介したいと思います。
2. フェルミ推定の考え方
フェルミ推定をするに当たっての一番大事な考え方は"ざっくり"見積もるということです。そのときには細かい数字はいらないので、桁数を表す10の累乗を使って計算していきます。これは、科学の分野でよく利用される手法で、基本的な概念を以下に説明します。
例えば、音と光の速度を考えた場合、音速は340[m/s]でまだ扱いやすいですが、光速は299,792,458[m/s]と非常に大きな数字となり扱いにくくなります。このときに、3×10^8[m/s](3億メートル毎秒)とすることで計算がすごく楽になります。この考え方は、厳密な数字を必要としないとき、気にしなくていいときに非常に便利になります。他にも、原子の直径はざっくり10^-12[m]、木の高さはざっくり10^1[m]、地球の直径はざっくり10^7[m]のように使用します。
この"ざっくり"した数字だけを使って素早くおおよその値を推定する方法がフェルミ推定です。こう言われると皆さんこう思われるかもしれません。
そんな推定法で妥当な答えが得られるのか?
ここが、フェルミ推定の不思議なところで、何かをざっくり見積もった場合、大きめに見積もってしまうこともあれば、小さめに見積もってしまうこともあります。フェルミ推定はこの過大評価と過小評価がお互いにバランスをとり実際の答えとせいぜい1桁しか違わない推定結果が得られます。
それでは、早速フェルミ推定を実際にやってみたいと思います。
3. フェルミ推定 実施例
最初に説明した、アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるかを推定してみます。最初は未知の要素が多すぎて見当もつきませんが、一つずつ考えていくと答えが見えてきます。
まずはシカゴ市の人口を求めるところから始めます。
シカゴ市は大都市ということはなんとなく分かりますが、正確な人口は分かりません。
感覚的に10万人(10^5 人)だと少し少ないような気がするので、100万人(10^6 人)くらいか、500万人(5×10^6 人)くらいかそのへんのような気がします。ということで、シカゴ市の人口はざっくり 10^6人 とします。
※実際は300万人弱みたいです。正しく推定できています。
次に、シカゴにピアノは何台あるかを推測してみます。全員がピアノを持っているとは到底思えないので、10人に1人(10^-1)か100人に1人(10^-2)くらいではないかとなんとなく思います。さらに幼稚園児とかおじいちゃんおばあちゃんとかは多分持ってないので、100人に1人(10^-2)として見てみると、シカゴ市にあるピアノの数はざっくり以下によって求められます。
シカゴ市の人口 10^6人 × ピアノを持っている人の割合 10^-2 = 10^4 台
では、それだけピアノがあるとき、ピアノ調律師は何人いるのかを考えてみましょう。とは言っても、ピアノを持ったことがない人は、例えば次のような数は見当もつかないと思います。
ピアノはどのくらいの頻度で調律するのか?
毎日何台のピアノが調律されるのか?
調律師は何日働くのか?
でも実際は、このようなことは知らなくても解けます。というより、素早い推定にはあまり重要ではないとされています。
それでは引き続き推定していきます。ピアノの調律は、勝手なイメージではそんなに簡単にできるものではなく、結構時間がかかるような気がします。ですので1人で年に数千台調律することは感覚的になさそうです。とはいえ、1年に10台だと少な過ぎるので、1人の調律師が1年に調律するピアノはざっくり数百台(10^2)としましょう。ということは、シカゴ市に必要なピアノ調律師の数は次のようになると推定できます。
シカゴ市のピアノの数10^4台 ÷ 1人が1年に調律する数 10^2 = 10^2 人
さて、皆さんいかがでしたでしょうか?
今回イメージや感覚だけで、それぞれの数字を仮置きして、それを基に計算していきましたが、ざっくり100人くらいかなということが推定できました。はじめに申し上げましたが、フェルミ推定は過大評価と過小評価がお互いにバランスをとって実際の答えとせいぜい1桁しか違わない推定結果が得られます。
ちなみに、実際のピアノ調律師の数は81人だそうです。
フェルミ推定、見事ですね!!
4. フェルミ推定で何が推定できる?
フェルミ推定のすごさは分かりましたが、当然こう思った人も多いと思います。
シカゴのピアノ調律師の数なんて興味ない
他に、もっと有益な情報を推定できないのかと思うのは当然だと思います。
結論から申し上げますと、あらゆる数はフェルミ推定で推定可能です。
例えば、フェルミ推定のことを書いた書籍で「現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート」というものがありますが、この本では以下のような内容を実際に推定しています。
<モノがいくつあるか?シリーズ>
○ 日本にゴミ箱はいくつあるか?
○ 日本にぬいぐるみはいくつあるか?
○ 日本にピアスはいくつあるか?
○ 日本にコピー機は何台あるか?
○ 日本に乗用車は何台あるか?
○ 日本に郵便ポストはいくつあるか?
○ 日本に電柱は何本あるか?
○ 日本に滑り台はいくつあるか?
<場所がいくつあるか?シリーズ>
○ 日本にコンビニはいくつあるか?
○ 日本に宅配ピザの店舗はいくつあるか?
○ 日本にスキー場はいくつあるか?
○ 日本にスターバックスの店舗はいくつあるか?
○ 日本に消防署はいくつあるか?
○ 日本に中華料理店はいくつあるか?
<生き物がどれいくらいいるか?シリーズ>
○ 日本に猫は何匹いるか?
○ 東京都に鳩は何羽いるか?
<世界シリーズ>
○ 世界遺産はいくつあるか?
<マーケットシリーズ>
○ ぬいぐるみの市場規模は?
○ 新幹線の中のコーヒーの売り上げは?
○ 自動車の年間新車販売台数は?
○ スターバックスの売り上げは?
○ カラオケの売り上げは?
○ タクシー1台の一日の売り上げは?
○ ピアスの市場規模は?
○ 割り箸の年間消費数は?
○ マッサージチェアの市場規模は?
○ 丸の内のラーメン店の売り上げは?
○ ゲームセンターの売り上げは?
どうでしょう。イメージが湧きましたでしょうか?せっかくですので、次回の記事ではこの中から、一つ取り上げて、もう少し精度が高いフェルミ推定を実施してみたいと思います。お楽しみに。
5. おわりに
以上が、フェルミ推定のやり方になります。私の体感的にこれを身に付けるか付けないかで、世の中の数に対する感覚が大きく変わってくると思います。
ぜひ皆さんも身近な数をざっくりでいいので、考えてみるクセをつけてみて下さい。
最後に今回のフェルミ推定から得た学びを一言でいうと
どんな数でもよく考えればなんとなく分かる
みなさん、今日も良い一日を。
もっと詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
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