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施術者と一緒に向き合うことで知る、気づかなかった体からのメッセージ

不調が長引いたり慢性化してしまったとき、なんで良くならないんだろうと落ち込んだり、苛立ったりすることもあるかと思います。不調はない方がいいに決まってますが、その不調は、自分らしい日々を楽しむための「気づき」を与えてくれる存在でもあることを、最近出会ったお客様とのエピソードもまじえて綴っていきたいと思います。

「ワクワクする!」とおっしゃるお客様との出会い

私が勤めているサロンには毎週のように新規のお客様がいらっしゃいます。
先日も50代の女性がいらっしゃいました。
過去に大けがをされたことをきっかけに、体の巡りの悪さを強く感じるようになり、ヨガやもみほぐし屋さんでメンテナンスをしてはいるものの、多忙さもあり今までのケアでは物足りないと感じて、体験に来てくださったとのことでした。

通常提供している施術は、簡単に言うと全身にある経穴(ツボ)をオールハンドで優しく刺激することで、不調の原因となる巡りの悪さをリセットするという東洋医学の理論をベースにしたもの。人間の体というのは本当に不思議で、例えば首筋には胃のツボや小腸・大腸のツボといったように、「お腹の状態のサインを発してくれる」ツボが複数点在しています。

胃の経絡の見取り図と、施術するうえで参考にしているツボネット。
全国の鍼灸院の先生方が記録された症例を見ることができる。

そのため、たとえば首筋の痛みを無くす施術をするときは、結果として辛い首筋のみにアプローチするのではなく、同時進行で腹部・背骨のライン・下肢と、一見辛いポイントとは無関係そうな様々な場所にある他の胃のツボも刺激し、胃の経絡(ツボとツボを繋ぐエネルギーの巡りの通り道)の滞りを取り去ってあげるということをします。

そうすることで筋肉の過緊張がなくなり、コリや痛みが消えていきます。実際、滞りが強い経絡のラインはそこだけ筋肉が異様に硬くなっていることもあり、経絡とツボが「サインを出してくれている」のがよくわかります。

と、このようなお話を施術室の壁に大きく貼られている頭からつま先までくまなく点(ツボ)が打ってあるツボ早見表を一緒に見てもらいながらご説明し、「お客様のお体のツボたちがどんなサインを出してくれているか、一緒にみていきましょう」とお話しました。

するとお客様は一言、「そんなことがわかるなんてすごくワクワクします!」と、まるでこれから何かおもしろいことでも始まるかのように、ツボの場所をまじまじと見ながら言ったのです。

自分の今の体の状態を知りたい

この瞬間思いました。「お客様は今のご自身の状態をもっと知りたいんだな」と。ボディケアサロンに来たのだから、もちろん辛いところを楽にしたいし、蓄積した疲労やストレスから解放されたい。それは大前提としてあるもの。だけど、それだけじゃなかった。

ご自分が気がついていない、「不調から読み取れる体からのサイン」を知りたいのだと思ったのです。

2人で向き合い、見つめることで見えてくる「心身からのメッセージ」

もちろん私の仕事はお医者さんでもなければ鍼灸師さんでもないので、具体的な病気があるかどうかは当然判りもしなければお伝えすることもありませんが、その方にとってのウィークポイントがどこなのか、そしてそれが今辛い症状とどんな関係があって、具体的にどうケアするのがおすすめなのか。それを東洋医学的な観点からお伝えすることができます。

私からは施術者として、体から、時には心から発せられているサインを読み取ってそれをお客様にお話し、お客様からは、ご自身の日常のこと、最近大変だったこと、ご自身が大切にしたいこと、不調が悪化してしまうことでどんな点が不安なのかなどをお話してもらう。
施術中に2人でこんな風にお話をしていると、テーブルの上にはいつのまにか、心身がどんなメッセージを発しているかがわかるヒントが沢山並べられていることにお客様ご自身が気づきだします。そうすると自ら「やっぱりもっと早く寝るようにしよう」とか、「晩酌の頻度や量を減らそう」とか、ご自身でやった方が良いケア方法に気づくことができていきます。

不調があることはもちろん辛いことだけど

私は、こんな風にお客様と一緒にお体を見つめながら、お客様ご自身がお体との新しい向き合い方に気づき、すっきりとした表情になられる姿を拝見していると、いつも本当に尊くて愛しい時間だなあと思います。薬で即効で治したい、そうせざるを得ない場面は多々ありますが、「体とじっくり向き合う時間」も、ある意味で体自身が一番求めている薬なのかもしれません。
ご自身の体と一緒に向き合う専門的な知識を持った人がもう一人いると、体と向き合う時間は、より発見の多い希望を持てる時間になると思います。辛い時こそ一人で抱え込まない。これは本当にその通りだと思います。

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