見出し画像

[00円: 未常的随想詩] やみくもな時代に薬味としての科学をインドで試奏したら、失踪しかねぬ勢いで前のめりになってしまったこと

真空中に僅かな距離をおいて、
(もちろん真夜中に)
二枚の金属板を並行に並べる。

するとその金属板の間には、
電子と陽電子が対生成し、
生成したと思う間もなく、
対消滅する。

無から有が生まれ、有はまた無に還る。
(寄せては返し、寄せては返し、
返しては寄せて、たそがれに還る)

無から有へ、有から無へと、
切りもなく、果てしもない繰り返しが、
一瞬一瞬、続けられている。

それが、この宇宙の法則、なのですね。

ぼくらの体の中では、
三十七億二千万の細胞たちが、
休みなく働き続け、
死んでは生まれ、生まれては死んでを繰り返す。
(生の始めに冥[くら]く、死の終わりに冥い)

ぼくらはそんなことに気づきもしないまま、
百年ほどの短い人生を、
一日一日、
生き続け、
時には、
生きることに、
うんざりしながらも、
それでもやっぱり、生き続け、
ああ、気がついたらもういつの間にか、
半世紀を何年も超えて歳月を、
生きてしまいましたよ、これが、
馬齢を重ねるというやつですね。

北インドの聖地ハリドワルは、
ヒマラヤから降りてきたばかりのガンガーが、
インドの平野を滔々と流れる、
スピリチュアル・ナチュラル・テーマパークなもので、
インド中から巡礼客の人々が、
絶え間なくやってきて、
沐浴でお浄めをしながら、
水遊びに興じる土地柄なのでして、
その川辺には木浴場と遊歩道が整備されていて、
夕方になると騎馬警官が二人、
立派な馬にまたがって、
巡回警らをしています。

日本の感覚からしたら、
その二人のお巡りさんは勤務中、
という雰囲気ではこれっぽっちもなく、
ただ夕方の散歩に出て、
川辺でしばらくのんびりチャイを楽しんで、
それが済んだら、
また厩舎に戻っていくのです。
(何もかもが剥き出しで、貧困も牧歌も、
すべてがあからさまな天竺よ)

新型コロナという名のウイルスのおかげで、
他州からの巡礼客はほとんどいないから、
例年だったらそろそろお祭りの季節で、
人混みで大変になるはずのところが、
今年は本当に静かです。

平穏[シャンティ]そのものが、
立ち顕れているのです。

そうは言っても、愚かな凡人のわたくしは、
日々奥さんと、些細でつまらぬことをめぐっては、
きゃんきゃんぎゃんぎゃん言い争って、
せっかく天の与えてくれた、
静なる時間を無駄遣いして、
いえ、そうそう無駄にばかりもしてはおれませんから、

その貴重な時間を切り取って、言の葉の切れ端をつづりながら、つぎはぎ細工で仕立て上げた、フランケンシュタインの怪物よろしく、得体の知れぬ生命体に命を与えようと、灰色の豆腐ようを納めた頭に浮かび来る、湧き上がる、ぶくぶくと発酵を続ける、150兆のシナプス接続ネットワークの迷走力で、
まあ、なんと言いますか、さして切れ味があるわけでもないのですが、

ふむ、このまったりとした中にも爽やかな檸檬の風味を感じさせるとともに、
痛覚と極めて近しい唐辛子由来のカプサイシンの刺激にも似た風味を隠し味に、
インドでもふんだんに使われるゴーヤの苦味にも似た、
夏のムシ暑さや梅雨時のトリ寒さすらも
(以下略)。

さて、みなさん、お聞きください。

インドには牛がいます。聖なる牛ですから、ヒンズーの人々は牛は食べません。
食べませんがけっこう邪険に扱っていて、露天の八百屋さんなど、商売に関わりますから、棒でぶっ叩いて追いやります。
そしてインドはベジタリアン大国。
インド式のベジタリアンは乳製品はオッケーです。

けれども殺生は嫌いますので、牛の胃から取るレンネットは使いません。
洋風のチーズはインド料理ではご法度です。

牛がいます。馬がいます。山羊もよく見かけます。

イスラムの人は豚を食べず、ヒンディーの人は牛を神聖視しますので、四足となるとヤギ肉になるのです。
(コルカタのムスリム街で、皮を剥がれ吊るされる山羊たちに合掌)

そして牛糞燃料[ゴバル]。

牛糞と藁などを混ぜて、大きめの平たい饅頭型に成形します。そして天日干しすれば、炭代わりに使えるゴバルは、大変重宝する携帯燃料です。

おまけに聖なる牛の産物ですから、お寺でも大活躍。

神聖な炉でこのゴバルを燃やして、出来上がった灰が、あのカーリーヘアの聖者サイババさんが、マジックであちこちに振りまいていたビブーティというやつなんです。

かような次第でありまして、闇雲の無明にすっぽりと覆われて、一寸先も見えぬがままの手探りを、続け綴りてニ千数百文字、
ちっぽけな頭蓋に閉じ込められた、千三百グラムほどの凡庸な脳みその、精と神との安定を、はからんがための言葉のあほ踊り、アルバトロスはあほう鳥、国際線の再開の目処も未だに立たない今日を、行方も定まらぬこの身ゆえ、はい、以上、寝そべったまま、起きたまま、二本の親指で寝言を、力いっぱい叩き出さていただきまして、真っ白な灰にそろそろなりそなビブーティ気分のわたしです。

もう日本はすっかり夜ですね。今日はそろそろペースを落として、明日に備えてお休みください。

ぼくはもうしばらくインドで無芸少食の時間を過ごさせてもらいます。

こんな暮らしができるのも、日本で頑張ってくれているみなさんのお陰だと、ちょっとずれてる火星人風の頭でも、ようやく理解できるようになりました。

みなさんホントにありがとうございます。

今日もバナナを食べて快食快便を心がけます。

ちなみにインドは猿も多いんです。お尻の赤いニホンザルに似たやつと、一回り大きめで豪快に走り回るオナガザルがいて、見ていて飽きません。野良犬も多いから犬猿の仲も実感できて、人生の幅が確実に広がります。

みなさんも機会があったら是非インドに遊びにきてください。
タイミングが合えば、いろいろご案内しますので。

てなわけでみなさん、ナマステジーっ♬

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 108

いつもサポートありがとうございます。みなさんの100円のサポートによって、こちらインドでは約2kgのバナナを買うことができます。これは絶滅危惧種としべえザウルス1匹を2-3日養うことができる量になります。缶コーヒーひと缶を飲んだつもりになって、ぜひともサポートをご検討ください♬