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[実験的散文]もしも書き起こした文章から何一つ削らないとすれば

文章を書くのは伝えたいことがあるからだとあなたは思っているに違いない。

だからあなたはこの文章を読んで、これは一体ナニが言いたくて書いた文章なのだろうと怪訝に思うことになる。

文章には伝えたいことがあるという考えはおおむね正しく、実に常識的な考え方であるから、日々の暮らしというものを安全で安定したものに保ちたい人にとっては実に重宝する考え方である。

問題はあなたが、安全と安定を求めながらも心の奥底では冒険を渇望し夢の実現を待ちわびているという点にある。

そうであるならば文章には伝えたいことがあり、作者の気持ちは出題者が知っているなどという世間的な常識にどうして従う必要があるだろう?

あなたが国語を得意としたのは決して世間知が豊富だったからではない。むしろあなたは多くの人が関心を持つ世の中のできごとというもののどこがおもしろいのかさっぱり分からないまま生きてきた。

それにしても、とあなたは思う。心の奥底に冒険? 夢の実現を待ち望んでる?

言葉の安売りに飽き飽きしているあなたは、薄っぺらな宣伝文句には反射的に警戒と嫌悪の気持ちで応える。それもまた身を守るためには致し方のないことだ。

子どもの頃から人の言葉に期待し、結局は裏切られ、どんな言葉にも裏と表の両面があることに気づいてしまったあの日からというもの、雨が続く時候には晴れの日を夢見、晴れて乾燥する季節にはしっとり湿った日々を恋しく思う。そんなあなたがここではないどこかを求めつつも、そんな場所はないのだと諦め続けることは、ちっとも敗北主義ではない。心の安定を保つためには必要な、小さな小さなトリックに過ぎないのだから。

結局のところ多くの人間にとって人生というものは、自分の本当の気持ちには気がつかないままに出題者が考えたニセモノの気持ちに従って生きる安全志向の鳥かごに他ならないことにあなたが思い至るとき、あなたの鳥かごは砕けちり、ちりぢり無残の木っ端微塵、砂浜に打ち寄せる波が砂上の楼閣を崩してさらい綺麗さっぱり、やっぱり人生は儚い夢にすぎないのねと夢見る蝶ちょになりながら、で、つまりこの文章はナニが言いたかったの? と訊ねてみるものの作者にも分からぬその意味は問題の出題者に聞いてもらう以外ないのであって、そうです、この世界をお創りになったあのお方に聞いていただくしかないのでございます。

[約千字、執筆時間一時間弱。推敲なしのため誤字脱字陳謝]

☆執筆意欲を刺激してくださるしりんさんに感謝いたします。https://note.mu/slashdotdash/n/n6034047bc2d5

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