[全文無料] つなぐ、命を、世界に。-- 随想小説
生きていくためには、つなぐことが必要だよね。
あらゆるものから切り離されちゃったら普通は死んじゃうもん。運が良けりゃ悟りが開けるかもしらんけど。
意識的につなぐわけじゃなくても、つながりがあるから生きてられるわけでさ。
こうやって電網の虚空に言葉を放つことだって、電波と電線に乗っかってとにかくどっかにつながってるわけじゃん。
絆なんて大げさに考えなくたってさ、生きてる以上つながってるんだよ。
でもさ、つながりがありすぎてうんざりするときもあるよな。
つながってるってことは、糸だかひもだか、ロープだか鎖だかはともかくとして、つまりつながりすぎたら雁字がらめだ。
結局は程度問題だよ。つないでるはずが、つながれちまって、見動きが取れなくなったら、本末が転倒してるってことだ。
そんなときは思い切って切らなくちゃ。ばっさばっさ切り払ってやるのさ。
でもって気がついたら、すべてのつながりが断ち切れちまってる。しまった、やりすぎたなと思う。そしたらまた一からやり直しだ。
人生なんて、そんなもんだろ?
何しろ元はと言えば138億年前の話だ。
拡がりもそれ以前もない、まさにまったくの空無の一点が爆発して、無数の素粒子が生まれ、気の遠くなるほどの時間をかけて集まって星が生まれ、気の遠くなるほどの時間を生きて寿命を終えて爆発し、幾世代かを繰り返した。
そうしてついに生まれたのが、我らが太陽と青い地球というわけだ。
想像もつかないほどの時間をかけて、何度だってやり直せばいいじゃないか。
短い人生だなんて思う必要はないんだ。
時間を測る物さしは、自分の心の中にしかないんだからな。
つながったり、切り離されたり、自由にやればいいじゃないか。
環境の圧力に呑み込まれたらおしまいなんだ。
つながりつつも切り離すんだ。
月面宙返りのような曲芸を繰り返して、世界を手玉に取って、逆に飲み干してやるんだ。
ほら、そっと、すうーっと、鼻から息を吸ってみろよ。
ゆっきりながーく胸いっぱい、宇宙中のエネルギーを吸い込んでやれ。
そして一拍おいてから、今度は小さく開けた口から、ふうーっと、ほそーく、まとわりつくしがらみを全部吐き出して、吹き飛ばしちまうのさ。
そうしてひと呼吸ひと呼吸、イチとゼロの間を行ったり来たりすることができれば、それを繰り返していくたびに、きみの命は世界にしっかりとつながれていくんだ。
やがて呼吸が止まり、体が土に還るときを迎えても、きみの命は世界と一つなんだから何一つ心配はいらない。
微笑みながら最後のひと息を吐いて、生まれる前に元いた場所に帰っていくだけのことなのさ。
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