流れゆく力の果てにて迷えるは|随想詩|全文無料
人間なら誰だって、一人ひとりが間違いなく持っている、潜在的な力量について探求してみようじゃないか。
そうすれば、問題だらけにしか見えないこの世界が、可能性の宝庫だってことが分かるからね。
そのために必要なのは、自分の潜在力を信じることだけなんだ。
ぼくたちは皆、不完全燃焼を続けるちっぽけな存在でしかない。
不完全な個人が集まって、できる集団も不完全だし、集団同士でパイの取り合いをしてる社会だって、やっぱり不完全なものでしかない。
不完全だから問題はいつも山積みだけど、だからこそ変化の可能性をどこにでも見つけることができるんだよね。
自分の思うようにはいかない現実の中で、ぼくたちはいつも不満をいだき、いらいらに悩まされ、悲しみにうち沈む。
でも、その感情の揺れをしっかり見つめることさえできれば、それが解決すべき問題じゃなくて、葛藤を解消する道筋を教えてくれる道しるべなんだってことが、きみにも分かるはずさ。
揺れる感情をないがしろにして、心の奥底に未消化の気持ちを溜め込みすぎたら、心身ともに調子を崩しかねないから、ご用心、ご用心。
周りの人との関係のもつれってさ、関係が近ければ近いほど、感情に巻き込み、巻き込まれ、互いに白熱しかねないんだから、そんなときこそ心の落ち着きがものを言うってこと。
人との出会いがあれば、そこで関係を築き、お互いに何ごとかを学び、そうして場合によっては、涙を流して別れなきゃならないことだってあるだろう。
そのとき、からりと笑って「ありがとう」と感謝し、さらっと手を振って「さよなら」って挨拶できれば、その別れはまったく問題になんかならないんだ。
その別れこそが、まさにきみの人生へのかけがえのない贈り物になるのさ。
それでもきみは、何かが足りない気がして、もっとあれがほしい、もっとこんなことがしたいと、今きみは懸命になって足掻くかもしれない。
それでいいじゃないか。自分に何ができて、何ができないのか、とことん確かめてみないことには、人生に納得することなんて、できっこないからね。
そうしてうまい具合に、人より満たされた生活を手に入れられるにしろ、それともうまくいかなくて、夢はあきらめちゃって、ほどほどの人生をこれでよしと受け入れることになるにしろ、そうやってきみの命は続いてゆく。
その続いてゆく日々の中でこそ、きみは自分の潜在力について改めて考えることになるのさ。
だからぼくは言うんだ。
灰色の男に時間を盗られるな。
たったの1秒でも時間を無駄にしちゃダメだぞ。
瞬きするほどの時間をも大切にして、自分のために使うんだ。
そうやって、きちんと自分を宇宙の中心に置くことができれば、きみは自分勝手な振る舞いをするのをやめて、周りのみんなのために働くことができるようになる。
だからって、不完全さが消えるわけじゃないし、問題がなくなるわけじゃない。
だけども、不完全さの中に調和を見つけ出し、問題の向こうに葛藤の解消を望み見ることができるように、一歩一歩前進しながら、ときには後戻りもしながら、で、気がつくと出発点に戻ってたりもするんだけど、改めてよくよく辺りを見回してみると、あら不思議、いつの間にか一段と高い場所にまで登ってきている自分を見いだして驚くことになる。
そうしてきみは、昨日までのように周りの人間を競争相手だと思う愚かさを知る。
この世のすべての存在が、きみの足を引っ張っているように見えたとしても、本当はそうじゃなくて、実際にはこの世界の大切な法則を教えてくれていることに気がつく。
張り巡らされた緊張の応力の網の目は、抵抗すれば葛藤の原因にしかならないけれど、その力強い、押しては引き、ねじっては回す脈動の韻律に波乗る方法を知ったときには、一つひとつの命の素粒子が、久遠の踊りを舞い続け、幾恒河沙の空間の中有で夢を見続ける、そんな物語をいつまでもどこまでも紡いでゆく自分に目を見張ることになるのさ。
おめでとう。
きみは、この世界を生み出す無限の連鎖力の、かなめそのものだ。
生まれたときからそうだったことに、今こそ気づくんだ。
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流れゆく力の果てにて迷えるは
いつか光のもとに還るため
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☆時間泥棒の灰色の男という素材は、ミヒャエル・エンデ「モモ」より拝借いたしました。
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