どぶどろの天河を流る砂子こそ [随想詩・全文無料]

注目を浴びたい。
浴びたからといって、解決にはならないけどな。
そとそも解決したいわけじゃないんだ。
ただただ注目が浴びたいだけなんだ。

間違ってそんなことが起これれば、称賛だけじゃなく、侮辱も冷笑も投げつけられるだろう。
ついでに霊障だって起こるかもしれない。
けどよ、そんなことまで考えたってしょうがないさ。
飢えと渇きに支配された餓鬼が心の奥底で、ほしいほしいと叫んでるだけじゃないか。

それを霊障と呼ぶのなら、初めから俺は呪われているんだ。
呪いの上に呪いを重ねて、地獄から煉獄に堕ちようとも、それを覚悟してのことだとすれば、いいじゃないか、その呪詛の塊を、ほうらこの身で受けてやろう、あとできっと後悔するんだろうけどな。

浴びるほどに酒を飲んでいたときだってあったさ。いや浴びるには足りなかったな。そんなに強い人間じゃないんだ。

とことん落ちるなんて、俺には無理ムリ。ほどほどに酔っ払って、ほろ酔いは通り越してるけど、体が壊れるほどには飲めなくて、おまけに金もないから節約しながら安酒を飲みつないで、そうやって人生をやり過ごしてたこともあったってことさ。

毒を吐き出したほうがいいんだ。
吐き出された毒になんざ、誰も見向きはしないのさ。
みんなの鼻つまみものになるのが、俺さまにかけられたふざけた呪いってことなんだろう。

だけども不思議なもんでな、その毒にまみれた、腐臭を放つどぶどろの排泄物の中から、まだ誰も見たことのない、妙ちくりんな輝きを秘めた、そっと触れると透明な、シャボンがぱちんと弾ける塩梅で、ぷちぷちと生まれてくる無数の陽炎(かげろう)の、目にも微細な虹色の、群れなす小球がかちりんこちりんくちきちりんと、ささやき声をひそひそ交わし、はっと気づいたときには世界の天幕目がけて、一斉に空を駆け抜けてゆくのをきみは見て、ああ、この漆黒の闇天井を埋め尽くす銀の砂子の星々が、いつもぼくのことを見守っていてくれたのだなと、ほっとひと息ついてガンガーのほとりに一人、化繊の毛布にくるまって、夜明けがやってくるのを静かに待つことにするのさ。

-- どぶどろの天河を流る砂子こそ我を見守る祖母の眼差し

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