2.28(11/89日目) 試合観戦
今夜は待望のレアル・マドリッドの試合観戦の日。
しかし夜まで特に用事はなかった。
ベッドの上でマドリード市内の地図を広げ、どこか行く所がないか探してみると、コロン広場の近くに「MUSEO」の文字を発見。MUSEOはミュージアムのことで、「Museo Argueologico」と書いてあった。調べると古代博物館という意味らしい。
早速バスでMUSEOに向かってみた。
到着し、入ってみると最初はミイラの標本などに感動したりしてそこそこ楽しかったが、古代史に興味がないので30分程もするとあくびが止まらない程に飽きてきてしまった。
どこのフロアの遺跡も同じ石コロに見えてしまい早歩きで出口を目指していると中庭を発見。ベンチでしばらく庭の景色を観ながら日向ぼっこ。
マドリッドは朝は寒いが、昼は気温が20度位まで上がりとても気持ちよい。眠ってしまいそうになったので、重い腰を上げ出口に向かった。
解説が理解できたらもっとゆっくり回れていたのにと思う。スペイン語がもっと上達したら改めて来てみよう。
博物館を出た後、書店に立ち寄りグラナダの情報を探してみた。マドリッド以外ののんびり出来る街に行ってみようと考えていて、のんびりといえばリゾート地→コスタ・デル・ソル方面がいいんじゃないかなということで、アンダルシアの北の玄関口とも言えるグラナダに行ってみようと考えていた。
グラナダの安宿が集まっているエリアを調べると、Gran Via Colon通りのLos MontesとLondaというホテルが安いとガイドブックに書いてあった。グラナダに着いたらそこへ行ってみよう。
ランチを済ませ一旦ホテルに戻ると、いつもは日中開きっぱなしになっている1階の扉が閉まっていた。
チャイムを押すと頭上の3階の窓が開き、例の受付のオジサンが顔を出し鍵を投げてくれた。
「グラシアス!(ありがとう!)」
鍵を受け取り、扉を開けて入ろうとした。
しかし鍵を入れて回しても扉はいっこうに開かない。よく見ると日本の鍵とは形が微妙に違った。
間違った鍵を渡されているのかもと疑いながらも苦戦すること10分。結局オジサンが心配して下まで降りてきてくれ中から開けてくれた。
どうやらこの扉の鍵は、時計回りに半周ほど回し、止まったところでさらに強く時計回りに回すと開くような仕組みらしい。
鍵は万国共通かと思いこんでいたが...、日本の常識は通用しなかった。
オジサンにお礼を行って3階まで一緒に上がる途中、
「今晩サンチアゴベルナベウに行くんだよ。」
と伝えてみると、今まで無愛想だったオジサンが
「本当か!?それはすごい。今日はレアル(・マドリード)が3-0で勝〜つ!!」
と急にハイテンションで話しだした。
ビックリして階段を踏み外してしまったが、どうやらオジサンはレアル·マドリッドの大ファンらしい。同じサッカー好きと分かるとオジサンは冗舌に喋り出し、最近のレアル·マドリッドの情報をいろいろ教えてくれた。
このホテル最終日にして、割といい人だということが判明した。
サッカーとワインは世界の共通語となにかの本で読んだことがあるが、正にこのことであると実感した瞬間だった。
19時すぎ、バスでサンチアゴベルナベウスタジアムまで向かい、一昨日約束した場所で今井さんと無事再開。携帯電話がなくても待ち合わせは出来るものである。
スタジアム外の売店でハムのボカディージョを買い、走り出したい気持ちを抑えながら速歩きでスタジアムの中へ。
ゲートをくぐり階段を登ると、照明で照らされたピッチが目の前に広がった。
試合開始まで待ち切れない7〜8万人の観客達の歓声やら雑談やらが、スタジアム屋根に反射して独特の臨場感を出していて鳥肌が立ってしまった。
今井さんとシートに着きボカディージョを食べながら試合開始を待った。ゴール裏に近い席だったためか観光客より、地元の観客の方が多いように見えた。
20時30分、キックオフの頃にはスタジアムは満員になっていた。アトレチコのスタジアムと比べて熱狂的なサポーターの割合が少ないように感じたが、スタジアム大きさが2倍近くあるのでそう感じるだけかもしれなかった。
10万人の観客が試合を見守る中、試合は徐々に盛り上がりスタジアムが揺れ始めた。隣の席では自前のウィスキーらしきものを入れた小さな瓶をジャケットの内ポケットに忍ばせ、周囲を気にしながら飲んでる人もいて、海外の映画かドラマかで見たような光景に思わず
「ほんとにこういう人いるんだー。」
と冷静に呟いてしまった。
試合の方は、すばやいパス、正確なロングパスとトラップ、サイドチェンジ、 最終ラインからのスルーパス。全てにおいてJリーグよりハイレベルな選手達によるフットボールショー。
もちろん今回の旅の一番のお目当てだったロベルト・カルロス選手も出場していて、サイドバックとは思えない行動範囲でピッチの左右に行ったり来たり、最終ラインにいたかと思うとから気がつけば最前線でシュートを放ったりと文字通り縦横無尽の動き。テレビ中継では周りの選手との連携がどうなっているか不思議だったが、生で観戦していたのでじっくりと観ることが出来た。
結果は2-0でレアル・マドリッドの勝利。リーグ戦首位に返り咲き大興奮の中試合終了した。
他の観客とともに流されるようにしてスタジアムの外に出ると、2mはあろう大きな馬にまたがった騎馬警察達が試合を観終わった群衆を見下ろすようにチャカチャカと蹄の音を立てながら白い息を吐き誘導をしていた。これまたヨーロッパらしくてカッコイイ。
ヨーロッパのこの雰囲気はなんだろうか、とても好きな雰囲気である。
混雑に巻き込まれないように今井さんと早々にバスに乗り込んだ。感想を言い合ったりして大興奮だったが、今井さんとはこのバスの中でお別れ。
しんみりとした空気が一瞬流れたように思えたが、握手をしていつかまた会う約束をして笑顔でお別れした。
マニアックなサッカーの話を何時間もすることができたり、一緒にサビオ選手に会えたり、スリから助けてくれたりで短い間だったがとてもとてもお世話になった。今井さんは数日マドリッドに滞在してから帰国するとのこと。
名残惜しい気持ちでお別れし、ひとり歩いて宿に戻ると、なんとホテルのオジさんが玄関前で出向かえてくれた。
あの無愛想なオジサンが、である。
「ほら、オレの言った通り、レアルが勝っただろ?」
と言っているのが分かるくらい勝ち誇った顔をして自分を見つけて走り寄って来た。
自分を出迎えてくれたというより、レアルの勝利の喜びを分かち合いたかったようだ...。
今井さんとのお別れの時は涙が出そうになったのをかろうじて堪えていたが、まさかの暖かいサプライズ出迎えに試合の興奮も相まってポロリと涙がこぼれてしまった。
一緒にホテルの階段を登る間、お互いに試合の興奮を伝え(何を言っているのか分からなくてもなぜか会話成立)、部屋に戻った。オジサンはテレビ中継で試合を観ていたようだ。改めてサッカーは世界の共通語だと実感した。
明日はグラナダに出発。
再びマドリッドに戻って来たとき、もう一度サンチアゴベルナベウで試合を観てみたい。
本日の出費
昼食 500Pts
美術館入場料 500Pts
MetroBus 260Pts
ボガディージョ 800Pts
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