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#ルイーズ・グリュック

グリュック 詩抄 (10) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (10) Translated by Toshiya Kawamitsu

  涙を流す女王の肖像

わたしの父は 一番星
真夜中 やっと かがやいて
息子よ 父は 話しかけ
息子よ 未来は エメラルド
にゃあ にゃあ 鳴いて ピンク色
ふとった妻には にあわない
わたしの服は 黒い筒
サテンの肩に 寄りそって
ミュリエルとして わたし 生き
母に わたしを 所有され
階段 手すりに ひろがって
母のドレスは 大きすぎ
パーティー 終わった 庭園で
わたし わたしは メキ

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グリュック 詩抄 (9) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (9) Translated by Toshiya Kawamitsu

  庭のおばあちゃん

洗濯 まがった おばあちゃん
ヤナギの下に 草 ミミズ
世界は 列に 列の数
スパイス なしで 現実に
見える 家々 長い島
薬に酔って 夏 太陽
飲みほす パターン からの袖
ペン先からは 悲鳴 ひびき
孫の頭を 越えてくる
わたしは わたしの生を 生き
黄色の光は 線を ひき
オークの葉っぱ つる ワイヤー
変わる 変わらない 赤ちゃんと
溶けていくから 女の子
男の子

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グリュック 詩抄 (8) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (8) Translated by Toshiya Kawamitsu

  閉塞成冬

太陽 とげ とげ ハドソンは
氷に 削られ かち かち と
骨のダイスは 満開で
耳ざわり 骨 青白く
昨日の雪は 川 水面
毛皮のように ふわ ふわ と
とまったままで わたしたち
とどけに行こう プレゼント
吹きっさらしの タイヤ 去年
死んだ バルブの上 パイン
あらしに 削りとられても
立ってる 手足 赤裸々に
わたしは あなたが ほしかった

EARLY DECEMBER

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グリュック 詩抄 (7) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (7) Translated by Toshiya Kawamitsu

  銀筆スケッチ

チャイム もつれて 大西洋
わたしの妹 立っている
光のなかで 立っている
鎖のように つながれて
妹 越えて 藻のリース
破壊者 出会い また 別れ
カモメの腕輪 ぬけて 泡
風は しずんで 感じない
変わったことを 感じない
妹 みじかく 声をあげ
火の下 タオルを 焦がしてた

SILVERPOINT
Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (6) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (6) Translated by Toshiya Kawamitsu

   傷

空気は パンを かたくする
ハエと コオロギ ベッドから
見ている はねる 笑ってる
天気は こんなに ねば ねば と
存在 焼ける におい して
あなたは 本に 根をはって
あなたは あなたのことをする
まるで 胚芽の エンブリオ
寝室の壁 ペイズリー
蹴りあげるのを 待っている
愛する 借家 眉をよせ
心 やさしい 花と 種
垣根は ふわ ふわ 種 月光
ぶく ぶく ごろ ごろ ガ

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グリュック 詩抄 (5) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (5) Translated by Toshiya Kawamitsu

  迷子

動くものなど なにもない
檻のなかでは 花 こわれ
換気扇の花 力なく
ゆら ゆら ゆれて 茎 落ちる
したたり落ちる 細い腕
はえとり紙かと つるされて
ねじれる ひとりの 少年に
そのあと ふさいだ 出入口
ふといくさびに ピンでとめ
炭酸水に 舌を入れ
別の部屋には 父がいて
つかれて ふら ふら 松葉杖
おこられるのを 待っている
感謝 しぼって レモネード
うそ つく コップ

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グリュック 詩抄 (4) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (4) Translated by Toshiya Kawamitsu

  四月のいとこ

今日の天気は 深い 青
でこぼこ ルバーブ 中庭で
しゃがんでいます くつ くつ と
いとこは 笑う 赤ちゃんと
頭を たたいて とん とん と
窓から 見えます きら きら と
かがやく シリカ バジリコを
あたためている 黄土色
土の金襴緞子かと
車庫の 四角の 影のなか
臆病者の エメラルド
根茎植物 ゆら ゆら と
のびて ちぢんで 赤ちゃんと
のぞきこむ ひざ 風 送

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グリュック 詩抄 (3) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (3) Translated by Toshiya Kawamitsu

  電話しよう

あなたは わたしを ほうり投げ
わたしのなかに つかまえた
魚のように 飛び はねて
シロップ しずんで 鼓動 聞き
すべて すべて は 押し流し
拒絶したこと 押し流し
わたしのなかで 生きている
あなたは わたしのなかにいる
悪意に みちて ここにいる
愛してほしくなかったと
あなたは 言った だから いま

HESITATE TO CALL
Translated by To

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グリュック 詩抄 (2) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (2) Translated by Toshiya Kawamitsu

  感謝祭

南の国の少年が
すべての部屋で 円を 描く
わたしの妹 歌ってる
フェリーニ 歌う り り り りん
電話のまねして わたしたち
捨てたブーツに 歩かせて
すわって 飲んで 部屋の外
二九度で 迷い猫
道草 食べて ごみ 探す
バケツを 爪で ひっかいて
ここでは ほかに 音もなく
ストーブ 刃をつけ 広大な
慈愛の食事 用意して
母は 両手に 串を持ち
かくした皮膚が 見えていた

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グリュック 詩抄 (1) Translated by Toshiya Kawamitsu

グリュック 詩抄 (1) Translated by Toshiya Kawamitsu

  たまご

 1

車のなかで すべて 行く
車のなかで 眠ったら
砂丘の墓地に 天使 立ち
行ってしまった すべて 行く
肉は くさって 豆 笑う
さやに おさまり くつ くつ と
知らずに ぬすんだ わたしたち
エドガータウンで聞いたこと
ころがり 落ちた キリストが
生まれたときの 飼葉桶
下着を 洗う 大西洋
太陽の海 ふれた とき
光 ただしく 水 むさぼる
エドガータウンを すぎた 

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