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2022年に読んだおすすめ本5冊

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2022年(に読んだ)おすすめ本5冊

スピッツ論
コミュニティの仕事をしていると実感するのは、人は好きなものの「ギャップ」について、どうしても喋りたくなってしまうということ。「みんな○○だと思ってるけど、実は○○なんだよ」という構文が成立すると、人は喋るのを止められない。さて、この本はスピッツを「分裂」というキーワードから解き明かしている。例えば「有名と無名」「反復と変化」「日本とアメリカ」などの視点を用いて、スピッツには様々なギャップが矛盾しながらも同居していることが語られている。通りで私のように、スピッツについて語る人がいつまで経ってもいなくならないわけだ。特に「愛のことば」の解説は必読。

ポジショニング戦略
「ポジショニングが必要な理由、それは私たちの社会が情報社会になったからだ」と宣言する本書(の原書)が発売されたのは2000年。マーケティング戦略の基本であるポジショニングという考え方を生み出した古典的名著、読まないわけにはいかないと手に取ってみた。ポジショニングとは、要はターゲット顧客の頭の中に「商品をどう位置付けるか」であり、2-30年前に生み出されたこの手法はまだまだ現役であることを本書を読んで改めて感じた。

多様性の科学
優秀な人を集めても勝てるチームを作れないことを書いた本。白人エリートだけを集めたCIAのチームがアメリカ同時多発テロ事件を見逃したのは、テロの実行計画が巧妙に隠されていたからではなく、イスラム教信者なら比較的容易に読み取れるサインを、そのバックグラウンドを全く持たない白人エリートは読み取れなかったからではないかという指摘からこの本は始まる。確かに思い当たる例は多い。例えば、どれだけ仕事ができて頭が良くても、子育てを真剣にしたことがなければ、幼児がぶるっとしたら「おしっこ」とはわからないし、家庭料理に向き合ったことがなければ、スーパーに大量に積まれた玉ねぎの中からおいしいものを見つけることはできない。頭がいかに良かろうと、経験や知識がなければ読み取れない情報や、思いつかない発想というのは数多くある。それゆえ、優秀な人だけを集めたところで、それが似たもの同士であれば、チームとしてのパフォーマンスには限界がある。肝に銘じたい。

夜と霧
第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収監され生き延びた経験を基に、人生への向き合い方について語った本。特に個人的に凄みを感じたのは、この部分。「私たち人間がなすべきことは、生きる意味はあるのかと「人生を問う」ことではなくて、人生のさまざまな状況に直面しながら、その都度、「人生から問われていること」に全力で応えていくこと」。極限状態から得られた示唆が、「人生の意味は、人生の方からあなたに問われている」というのは戦慄する。

テクノロジーが予測する未来
「web3楽しそう!」と初めてこの本を読んで思った。過去に読んだweb3本や記事のほとんどがポジショントークであり、なんならちょっと引いていたのが、この本で反転した。「世の中は"こうなる"」と「世の中を"こうしたい"」がうまくブレンドした、テンションのあがるビジョンが語られるのと同時に、フェアにweb3のリスクも語られている良本。思えば、梅田望夫さんにがWeb2.0を語ったウェブ進化論に衝撃をうけたことも、ネット業界で勝負したいと思った一つの理由だったことを思い出した。web3、いいよね。

その他のよかった本

  • 誰にもわかるハイデガー:自分の死を考えるのはとても怖く、とにかく避けてきたのだが、ハイデガーによれば、自分の死に向き合うことこそ人生を充実させる方法だと言う。とても影響を受けた

  • いかなる時代環境でも利益を出す仕組み:アイリスオーヤマのユニークな企業戦略を創業者が語っている本。「普通人はこう考えるじゃろ?私は逆だと思ったんだ。」というお話が延々と続く。成功者に典型的な「自慢げで鼻につく感じ」さえ気にしなければ、とっても面白い

  • これからの「正義」の話をしよう:2022年は哲学書(の解説本)を幾つか読んだのだけれど、この本が一番充実してた。コロナや為替の異常な変動など、世の中が明らかに変わってきているタイミングに読んでよかった

  • ワイズカンパニー:推し経営学者「野中郁次郎」先生(とその盟友「竹内弘高」先生)の最新著書をじっくり拝読。最高

  • 〈現代の全体〉をとらえる一番大きくて簡単な枠組み:超面白い本なんだけど、その面白さを表現できないのが悔しい。何冊か哲学書的なものを読んだことがあるなら爆笑できるからぜひ読んでほしい

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