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自作短篇

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自作小説の短編をまとめています。400字詰原稿用紙で30枚から50枚くらいです。
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#短編小説

【短編小説】コはコウノトリのコ

  脳がチップ化されて以来、鳥が増えた。  死にかけた年寄りたちがこぞって自分の脳をチッ…

平松誠治
2か月前
3

【短編小説】理工学部 福来教授

 買い被られてきた人生だった。  丹下賢太郎は夕暮れが近づく高速道路を一路埼玉に向かって…

平松誠治
7か月前
10

【短編小説】ナオンとナオンの鉄の拳

 学園都市の内務政府が統制を強めてデュエルを禁止し、我々は少し暇になった。しかし 四季母…

平松誠治
8か月前
9

【短編小説】メディアコンバーター

 局長のブリーフィングを嗅ぎながら俺は眠気を催していた。つまり退屈していた。俺のキャリア…

平松誠治
11か月前
9

【短編小説】死神と取引するために必要ないくつかの準備について

 野球やサッカーを楽しいと思ったことは一度もない。  いや、私はむしろ子供の頃からこのよ…

平松誠治
1年前
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プロレス・スーパーヒーロー列伝 傲慢と偏見、ブルーザー・バンディット編【短編小説…

 三年ぶりに訪れたアマリロは相変わらず埃っぽかった。町を出ればすぐそこにあるのは砂漠であ…

平松誠治
2年前
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【短編小説】真実は拳に宿る

 ソビエトという国がなかったことはもはや定説となった。今から数百年前、ユーラシア大陸の大部分を統治していたソビエトという民主制の共和国があったという幻想は現在、ほとんど消え失せている。しかし、一部の学者がまだしぶとくソビエト実在説を唱えているのもまた事実だ。  私の指導教官である 四季母里教授は、今から半世紀前にソビエトなどという国はなかったという学説を学会に提起し、拳一つで反対派を打ち伏せてきた、この学説の重鎮である。しかし流石に寄る年波には抗えず、実在論者たちが勢いづいて

【短編小説】火星の大統領クリントン

 伯父の遺品の中に火星の土地の権利書があった。もちろんジョークグッズの類だろう。しかし各…

平松誠治
2年前
7

【短編小説】暗闇を抜けて漆黒の中へ

 泉慎太郎は学校の成績がよく、顔立ちも整っていたが、性格に難があったので女の子にはもてな…

平松誠治
2年前
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【短編小説】竹輪を裏返せると思う?

 スーパーで買ってきたおでんに入っていた竹輪に見とれていた私に娘が「どうしたの?」と聞い…

平松誠治
2年前
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【短編小説】リボルバー

 黒木から間に人を介して連絡があった時、俺はネパールのカトマンズにいた。宿のWiFiを通して…

平松誠治
3年前
14

【短編小説】荒磯博士と機械婦たち

 今さら言っても仕方のないことだけど、荒磯博士の仕事なんて手伝うべきじゃなかったんだ! …

平松誠治
3年前
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【短編小説】キスマークの男

 起き抜けにつんと鼻に入ってきた煙草の匂いがガラムの甘い香りだったので、ミキはぼんやりし…

平松誠治
3年前
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【短編小説】海辺の町で

 九歳の夏、私は一度だけ父の郷里を訪れたことがある。後にも先にもそれだけなのは、父と生前の祖父の仲があまりよくなかったからである。しかし当時の私はそんなことを知る由もなく、出発の一週間も前から心を弾ませ姉と一緒になってはしゃいでいた。  父の郷里は日本海に面した小さな田舎町で海水浴に適した海岸があるという以外はこれといって何もなかった。都内からだと車で五時間も走れば着いてしまう距離だった。父は「渋滞につかまらなければ、朝に家を出れば昼には着くだろうと」と言っていたが、当時の私