【短編小説】真実は拳に宿る
ソビエトという国がなかったことはもはや定説となった。今から数百年前、ユーラシア大陸の大部分を統治していたソビエトという民主制の共和国があったという幻想は現在、ほとんど消え失せている。しかし、一部の学者がまだしぶとくソビエト実在説を唱えているのもまた事実だ。
私の指導教官である 四季母里教授は、今から半世紀前にソビエトなどという国はなかったという学説を学会に提起し、拳一つで反対派を打ち伏せてきた、この学説の重鎮である。しかし流石に寄る年波には抗えず、実在論者たちが勢いづいて