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自作短篇

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自作小説の短編をまとめています。400字詰原稿用紙で30枚から50枚くらいです。
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記事一覧

【短編小説】理工学部 福来教授 2

 F1レーサーが夢だった。  しかし今の今まで夢を諦めた瞬間などない。菊池晴臣はホンダフ…

平松誠治
3週間前
9

【短編小説】怒りを込めて振り返れ

 半年ぶりに再開した 新谷が岡駅の階段を登りながら、ぼくはあの事件のことを思い出していた…

平松誠治
4か月前
13

プロレス・スーパーヒーロー列伝 呪われた鷲の爪 フリッツ・フォン・ヴィルケ編【短…

 世界的ベストセラーとなった歴史書を何冊も上著しているエルサレム大学の歴史学教授のハラル…

平松誠治
8か月前
8

【短編小説】コはコウノトリのコ

  脳がチップ化されて以来、鳥が増えた。  死にかけた年寄りたちがこぞって自分の脳をチッ…

平松誠治
11か月前
3

【短編小説】理工学部 福来教授

 買い被られてきた人生だった。  丹下賢太郎は夕暮れが近づく高速道路を一路埼玉に向かって…

平松誠治
1年前
9

【短編小説】ナオンとナオンの鉄の拳

 学園都市の内務政府が統制を強めてデュエルを禁止し、我々は少し暇になった。しかし 四季母…

平松誠治
1年前
9

【短編小説】メディアコンバーター

 局長のブリーフィングを嗅ぎながら俺は眠気を催していた。つまり退屈していた。俺のキャリアでは三年ぶり五回目の異文明との交渉だが、面白そうな、心躍るときめきなど感じようもない。今度の異文明人、アース星人は我々人類と限りなく似ていて、個体のサイズや雌雄両性なども我々とそっくりだが、とてつもなくかけ離れた面があるという。個体同士の意思疎通に空気を震わせる音を使ってコミュニケーションを取っているらしいのだ。 「まったく奇妙な奴らだが」と局長は匂わせた。「最近、銀河連盟にやっと加盟した

【短編小説】死神と取引するために必要ないくつかの準備について

 野球やサッカーを楽しいと思ったことは一度もない。  いや、私はむしろ子供の頃からこのよ…

平松誠治
1年前
12

【中編小説】女の操

    レズビアンの両親に育てられた僕は——当たり前と言ったら当たり前なんだけど——父親…

平松誠治
2年前
8

プロレス・スーパーヒーロー列伝 傲慢と偏見、ブルーザー・バンディット編【短編小説…

 三年ぶりに訪れたアマリロは相変わらず埃っぽかった。町を出ればすぐそこにあるのは砂漠であ…

平松誠治
2年前
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【短編小説】真実は拳に宿る

 ソビエトという国がなかったことはもはや定説となった。今から数百年前、ユーラシア大陸の大…

平松誠治
2年前
9

【短編小説】火星の大統領クリントン

 伯父の遺品の中に火星の土地の権利書があった。もちろんジョークグッズの類だろう。しかし各…

平松誠治
3年前
6

【短編小説】暗闇を抜けて漆黒の中へ

 泉慎太郎は学校の成績がよく、顔立ちも整っていたが、性格に難があったので女の子にはもてな…

平松誠治
3年前
13

【短編小説】竹輪を裏返せると思う?

 スーパーで買ってきたおでんに入っていた竹輪に見とれていた私に娘が「どうしたの?」と聞いてきた。 「ねえ、竹輪を裏返せると思う?」と私は言った。 「なにそれ? どういう意味?」 「どうもこうもなくて、そのままの意味? ねえ、出来ると思う?」 「やってみればいいじゃん」と高校生の娘は言った。「多分、破れるんじゃないかな」 「そうよね」と私は言った。「できるわけないよね」 「へんなの」 「私が聞かれたんじゃないのよ」 「どういうこと?」 「私の叔母さんで智子さんてのがいたの、あな