ピンチをピンチに! ~ハブタエンヌは眠らない~ その12

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  *  *  *

 マイヌの部屋で、コブタエが無心に羽二重餅を作っている。

 その横で間髪入れずに羽二重餅を食べていくマイヌ。

「そろそろシロネ王子がツナ缶を受け取りにいらっしゃる時間ね」マイヌが口のあんこをぬぐう。

「落ち込んでる場合じゃ…」上の空のコブタエ。

「何か言った?」

「部下を信じたい気持ちはわかるけど、やっぱり怪しいです」重ねて上の空のコブタエ。

「もしもし?」

「そうです。私一人でも何とかしなくちゃ!」叫ぶコブタエ。

「コブタエちゃん?」

 マイヌがコブタエに近づこうとした瞬間、フントが飛び込んで来た。

「姫さま! ツナ缶が盗まれました!」

「何ですって!」

「ツナ缶がないとクロネくんが!」

「今、兵士たちに追わせております」

「そうだ、缶切り! 犯人はそれも狙いにくるはずです!」

 コブタエは瞬時に部屋を飛び出していった。

  *  *  *

 約束の骨ガムを手に、マイヌの部屋へと廊下を歩いていくシロネ。

“コブタエに悪いことしたかな。でも、スパがまさかそんな…”

 奥の方からガサゴソと音が聞こえ、そちらへ歩き出すシロネ。

 蔵の扉が開いたままになっている。

 中をのぞくと、缶切りを必死に探すスパの姿があった。

「これだ!」缶切りを掲げて叫ぶスパ。

「スパ…?」

「シロネさま!」振り返り、慌てるスパ。

「それは何だ」

「あ、いえ…」缶切りを後ろに隠すスパ。

「何だと聞いている!」

 しばし沈黙していたスパが大声で笑いだした。

「缶切りは俺が頂く。ツナ缶もな!」

「おまえなのか…?」

「どけ!」

 呆然とするシロネを飛び越えていくスパ。

 そこへ駆けつけたコブタエが、スパをローブで叩き落とす。

「ちっ…」すぐに体勢を建て直し走り出すスパ。

「お待ちなさい!」

 コブタエの声にハッとするシロネ。

「待て、スパ!」

 スパを追うコブタエとシロネ。

「コブタエ、すまない。お前が正しかった」

「いいのです。シロネは部下を大事に思っていただけです。それよりあいつを捕えてクロネくんの居所を!」

 ベレー帽から金平糖を取り、右手に握るコブタエ。

「ダメだ、コブタエ! それは受験用の最後の一粒。使ったら試験が受けられなくなる!」

「あ…」コブタエが一瞬とまどう。

「俺が追う!」

 シロネは猛スピードで駆け出した。

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