ピンチをピンチに! ~ハブタエンヌは眠らない~ その13
* * *
大きな池と草むらが広がる庭。猛スピードで走るシロネに追いつくコブタエ。
「待って、シロネ!」
シロネが驚き振り向く。
「何やってんだ! 試験の時間だろ。行け!」
「今はクロネくんが大事です!」
スパに少しずつ追いつくシロネとコブタエ。
「いいから行け!」シロネが怒鳴る。
「いやです!」
スパの斜め後ろまで来たシロネ、右手の爪が4本の剣に変わる。
「ほお?」
スパの爪も4本の剣に変わり、シロネに切りかかる。
何とか避けるがふらつくシロネ。
さらにシロネの頭上から襲い掛かるスパ。
「危ないっ!」
シロネを守ろうとしたコブタエのローブにスパの剣がかすり、裾が裂けた。
スパをキッと睨んだコブタエ、右手を天に掲げる。
「ピンチをピンチに!」
その様子に身構えるスパ。しばし動きが止まるコブタエ。
だが、何も起こらない。
「あら?」首をかしげるコブタエ。
「見掛け倒しか。まとめて始末してやる!」コブタエに襲い掛かるスパ。
「コブタエ!」
シロネがコブタエの前に出て、コブタエを守ろうとする。
その瞬間、コブタエの右手に強烈な光が集まる。その光に目がくらむスパ。
「な、何だ…」
コブタエの右手の光が、巨大なマタタビの実に変わる。
「マタタビが!」シロネが叫ぶ。
コブタエが、スパにマタタビの実を思い切り投げつける。
「超絶マタタビーム!!」
「ぎゃーっ!」
マタタビの実が当たって倒れるスパ。
だが、何とか起き上がり、ふらついたまま、缶切りでツナ缶を開ける。
「これさえ食えば……」
「そうはさせません!」ツナ缶を蹴り上げるコブタエ。
缶が後ろの池にチャポンと落ちる。
「あ!」同時に叫ぶコブタエとシロネ。
「この野郎…」コブタエに殴りかかろうとするスパ。
その胸倉をつかむコブタエ。
「ツナ缶に何てことを!」
「いや。蹴ったの、おまえ……」シロネが思わず突っ込む。
「とどめです!」
スパを地面に倒し、真上から右拳で顔を思い切り殴るコブタエ。地面に開いたスパの体の形の穴。
穴をのぞきながらコブタエが尋ねる。
「クロネくんはどこですか?」
* * *
本殿の入り口の外には立て看板が。「上級ハブタエンヌ試験会場」の文字が見える。
本殿奥にある試験会場には受験者たちが着席している。
だが、一つだけ空席だ。
部屋にシンケイとブタエが入ってくる。一斉に立ち上がり、二人に礼をする受験者たち。
試験官席に座るシンケイとブタエ。受験者たちも座る。
席を見回すシンケイ。「コブタエは来ないようだな」
シンケイの問いかけに無言のブタエ。
試験開始を知らせる時計の音が鳴った。
「始めましょう、シンケイさま」
ブタエが静かに言った。
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