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恋と学問

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もののあはれとは何か?本居宣長「紫文要領」から読み解く、源氏物語の魅力と本質。
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2022年6月の記事一覧

恋と学問 第15夜、光源氏の後半生。

恋と学問 第15夜、光源氏の後半生。

前回の続きになります。

朧月夜密通事件をきっかけにして、右大臣家による排除の動きが活発になります。しまいには天皇に謀反する意図があると言いがかりを付けられ、光源氏は身の潔白を表すために須磨に身を退くのでした。

8.約束なき土地(明石の上)

須磨と明石という、田舎の片隅に身を置いて寂寥の日々を送ったのは、25才から27才にかけての3年間です。この間の恋愛は、明石の上という女性が中心になります。

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恋と学問 第14夜、光源氏の前半生。

恋と学問 第14夜、光源氏の前半生。

物の哀れを知る人を善き人とする。本居宣長は熟読の果てに、紫式部が源氏物語の中に忍ばせた「本意」(本当に伝えたかったこと)を発見します。そして、紫式部が理想とした人間像は、光源氏という奇妙な人物の内に、凝縮されて表現されたと考えました。宣長の思考を受けて私たちは、これから彼の生涯を概観してみるのですが、そうすることで、物の哀れを知ることを人間的価値の最上位に置くということが、どれほど大胆で斬新な思想

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