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アパレル業界の裏側 【ブランドの価値を守ることはお客様の価値を守ること】

前例が通用しない、技術革新だけではやっていけないのがアパレルビジネス。アパレル業界で失敗した例はいくらでもありますが、
いかに失敗を見透かされないかという、いわば我慢の仕方もカッコよく見せるという徹底したブランディングをしないと、直ぐにあのブランド落ちたねとか言われます。
売れているときも、売れていないときも、安定しているというイメージ戦略でじたばたしないというのが一番。
アパレル会社が窮地に陥った時に、真っ先にするのがブランドの整理縮小です。
そこで、ブランド価値をどれだけ棄損するかとかより、数字だけで切り捨てる、
一番してはいけない損切りが先行する場合が多いと思います。
私なら、ブランド縮小の前にいくつか段階を踏むことを考えます。
例えば、対象のブランドを子会社化して独立採算事業に組織を組み替える、
そして、1シーズンの実績を作り、取引先や関係先にブランドを棄損せずに売却を提案するとか、目先の事業で資金繰りが危ういなら、スポンサー探しとか、
重要なのは、ブランドを作る過程では様々な困難が想定されていて、それを乗り越えなければ一流ブランドになれないと思います。

私がアパレル業界でビジネスをスタートしたのが2009年4月、
前年の9月にリーマンショックがあり、混乱した経済下で前経営陣から引継ぎ、最悪の経営状態でのオーダーチェンジでしたが、私はアパレル未経験で、上記のアパレルビジネスの裏側をまったく理解しておらず、過去の成功・失敗を分析して自分なりの再生プランを作り挑みました。
10年後の今、遠回りしすぎて、もし10年前に戻れたら無駄な遠回りをせずに、
最短でブランドを成長させることが出来たと思います。

アパレルビジネスの面白さは、人に幸せや価値を提供する事であり、その商品が記念の日に使われたり、沢山の人のストーリーに記憶されることです。
例えば、息子にスーツを贈りたいというときに、父の行きつけのテーラーで仕立てを依頼するという場面をよく見てきましたが、本当に幸せに包まれます。
親子二代で訪れてくれるというのも、ブランドの価値そのもです。
そう考えた時に、私達ブランド側にいるものは、その価値を棄損させてはお客様の夢を壊すことになります。常に日頃から、いかに長く続けていけるかを考えておかなくてはいけません。

今は、良い時期に準備してきた信用や経営資源を使い、我慢する時期でもあり、
社会環境が次のステップに行くのを待つのが賢明かと考えます。
ただ待つだけではなく、良い時期が来るまでの準備期間として、良いイメージを保つことが大事です。
マイナス要素を探せばいくらでもあるので、今の時期は見た目に平常を装い
裏側では、適正人員にしたり店休日を増やして固定費を減らしたり、いろいろ、
お客様に見えない部分で経費を削減することは可能です。
とはいっても、マイナスのビジネスを維持するのは、1年~2年が限界ですので、2022年には、元のビジネスに戻して黒字化をしていないといけないという事は、絶対ですし、それに向けての事業再生プランを作成して、早めに手を付けるのが大事だと考えます。
弊社でも、2020年4月の緊急事態宣言による事業の停止、販売の停止時に直ちに、
生産計画、販売計画を見直しました。上期は対前年比60%減、下期は対前年比20%減に修正したのですが、今その数字が再度修正を迫られてます。
年後半にはかなりの確率で元のビジネスに戻っていくだろうという判断でした。
今の状況は、富裕層をターゲットにした販売店さんにはお客様が戻られています。
2極化している状況は、心配な点が多く、これからの推移を見ながらさらに、計画に合わせた人員体制にしながら、受注が戻り生産が戻せる体制も温存しないと、両方(減産・増産9を見据えるという一見は難しい体制ですが、内製化と外注のルートや商流を見直せば可能であり、従来の仕事の仕方にこだわらなければ、
何も問題ではないことも付け加えておきます。
弊社は、製造小売りで、ファクトリーブランドというビジネスモデルであり、小売り専業に比べると、商業施設などでの影響は少ないかもしれません。ただ、小売り専業の場合であっても、見通しのはっきりとした計画があれば、損失を最小にして乗り切ることが出来ると思います。

FIVEONEは、ワンシーズン着る流行の服を売るのではなく、愛着がわくほどに長く愛用して頂けるクラシックな服をオーダースーツというスタイルで販売しております。今では、スーツだけでなく、コート・シャツ・シューズなどのオーダーにも力を入れており、オーダーメイドのファクトリーブランドとしては日本では第一人者という自負もあり、銀座・大阪・福岡に直営店、富山・神戸・静岡に取扱店が御座いますので、詳しくは、下記のホームページをご覧ください。

グラフ1

上の図は、2021年の初めに利益水準が2019年よりも改善するという計画ですが、アパレルの裏側がこのグラフで分かる方は、同じく気づかれていると思いますが、2019年の消費税が10%に上がった時点ではすでに売り上げが落ちて来ていました。そこに緊急事態宣言という事で、経済が止まりました。

このグラフから言えることは、工場は受注に見合う体制にするか、外注していた加工賃を社内に取り込み、数字を合わせるかです。後者でも結局は外注先で人員調整がされ、社会全体では仕事が減るわけですので、社会全体では解決にはなりませんが、自社の経営課題としては最重要な部分になります。どこまで見通せるかとうのも重要ですが、私のアパレル経営について裏側を少しお話しできるとしたら、アパレルには即断即決のような経営判断は禁物です。よく聞く話ですが、危機を乗り越えるために本社ビルを売却したなど・・・、しかしビルの売却益は特別な利益であり、本業の利益ではなく、もし本業を改善できるなら、本社を担保に資金を調達するのが正解です。本業で収益を出せないビジネスモデルの補填をするという方法では、本当に本業が改善できないとう過去の実例を見れば明らかです。興味ある方がいたら、別の機会に掲載したいと思います。

文章:FIVEONE 代表 森俊彦



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