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大映映画の世界

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大映京都撮影所、大映東京撮影所で作られた作品や、スターについての記事をまとめました。
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#田中徳三

『兵隊やくざ 強奪』(1968年10月5日・大映京都・田中徳三)

『兵隊やくざ 強奪』(1968年10月5日・大映京都・田中徳三)

 昭和40(1965)年3月13日に公開された『兵隊やくざ』(大映東京・増村保造)を第1作に、低迷する邦画界で人気シリーズとなった勝新太郎と田村高廣のシリーズも、『兵隊やくざ 強奪』(1968年10月5日・大映京都・田中徳三)で第8作目、大映では最後の作品となった。昭和18年から始まった物語も前作『兵隊やくざ 殴り込み』(1967年9月15日)で敗戦を迎え、シリーズ終焉を思わせた。それから一年、敗

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『兵隊やくざ 殴り込み』(1967年9月15日・大映京都・田中徳三)

『兵隊やくざ 殴り込み』(1967年9月15日・大映京都・田中徳三)

 シリーズ第7作『兵隊やくざ 殴り込み』(大映京都・田中徳三)が公開されたのは昭和42(1967)年9月15日。併映は宇津井健と本郷功次郎のアクション・シリーズ『海のGメン 太平洋の用心棒』(大映東京・田中重雄)だった。この週の各社の封切り作品は次の通り。日活は14日公開で、藤田まこと『喜劇 大風呂敷』(中平康)と渡哲也『錆びたペンダント』(江崎実生)。東映は、高倉健と藤純子『日本侠客伝 斬り込み

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『兵隊やくざ 俺にまかせろ』(1967年2月25日・大映京都・田中徳三)

『兵隊やくざ 俺にまかせろ』(1967年2月25日・大映京都・田中徳三)

 昭和40(1965)年にスタートした、勝新太郎&田村高廣のコンビによる痛快戦争喜活劇「兵隊やくざ」シリーズも2年間で6作目。斜陽の映画界で、大映ではコンスタントに収益が見込める「カツライス=勝新太郎・市川雷蔵」のシリーズ映画が連作されていた。

第5作『兵隊やくざ 大脱走』(1966年11月9日・田中徳三)までは、連続した時間軸の物語だった。前作は、昭和20年8月、配線間際のソ満国境を舞台に、ソ

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『兵隊やくざ 大脱走』(1966年11月9日・大映京都・田中徳三)

『兵隊やくざ 大脱走』(1966年11月9日・大映京都・田中徳三)

 勝新太郎の粗野だけど純情な大宮二等兵と、田村高廣演じる大学でのインテリ古参兵・有田上等兵の“およそ軍隊でないと知り合わなかった”コンビの「兵隊やくざ」シリーズも5作目。斜陽の映画界で「カツライス=勝新太郎・市川雷蔵」主演のプログラムピクチャー・シリーズは大映の稼ぎ頭だった。日中戦線を舞台にしたアクション・コメディであるが、第二次大戦末期、敗戦直前の極限状況のなかで「自由であろう」とする大宮と有田

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『新・兵隊やくざ』(1966年1月3日・大映東京・田中徳三)

『新・兵隊やくざ』(1966年1月3日・大映東京・田中徳三)

 note「佐藤利明の娯楽映画研究所」いつもご贔屓にしてくださり、ありがとうございます。この原稿がちょうど「800本目」となります。これからも日々アップしていきますので、よろしくお頼ん申します。

 昭和41(1966)年、大映の正月映画は「カツライス」二本立て。市川雷蔵のシリーズ第3作『若親分喧嘩状』(大映京都・池広一夫)と勝新太郎の『新・兵隊やくざ』(1966年1月3日・大映東京・田中徳三)の

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『続・兵隊やくざ』(1965年8月14日・大映京都・田中徳三)

『続・兵隊やくざ』(1965年8月14日・大映京都・田中徳三)

 斜陽の映画界で、大映プログラムピクチャーを「座頭市」「悪名」シリーズで牽引してきた勝新太郎の「兵隊やくざ」は、昭和40年代の新たなシリーズとして連作された。前作は大映東京の製作だったが、本作から大映京都となり、脚本も重厚な作風の菊島隆三から、喜劇映画や風俗メロドラマを得意とした舟橋和郎をキャスティング。「悪名」シリーズの産みの親でもあり、勝新の魅力を知り尽くした田中徳三監督が演出に当たった。

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『悪名桜』(1966年3月12日・大映京都・田中徳三)

『悪名桜』(1966年3月12日・大映京都・田中徳三)

 なんと朝吉と清次が堅気になり、焼き鳥屋の親父に! というアッと驚く状況から始まるシリーズ第12作『悪名桜』(1966年3月12日・大映京都・田中徳三)を久しぶりに堪能。昭和36(1961)年にスタートしたこのシリーズ。邦画の現代劇では、東宝の「社長シリーズ」が『続・社長行状記』(1966年2月25日)で25作、「駅前シリーズ」が『喜劇 駅前弁天』(1月15日)で14作、に続いての多作だった。こう

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『悪名無敵』(1965年10月25日・大映京都・田中徳三)

『悪名無敵』(1965年10月25日・大映京都・田中徳三)

 「梅に鶯、松に鶴、牡丹に唐獅子」とは清次(田宮二郎)の口癖、「朝吉親分に清次」と続く。昭和36(1961)年にスタートした勝新太郎と田宮二郎の当たり役「悪名」コンビも年を重ねて4年。脚本・依田義賢、撮影・宮川一夫、音楽・鏑木創、監督・田中徳三のベストメンバーが揃っての第11作は、東宝のトップスターだった八千草薫がゲスト出演。メインのヒロインは藤村志保だが、この2人はのちに「男はつらいよ」シリーズ

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『悪名幟』(1965年5月1日・大映京都・田中徳三)

『悪名幟』(1965年5月1日・大映京都・田中徳三)

 シリーズ第十作目となる『悪名幟』(1965年5月1日・大映京都・田中徳三)は、藤本義一脚本のドライなタッチの現代アクションの前作『悪名太鼓』(1964年8月8日・森一生)から一転、原点回帰を目指した。脚本は第一作『悪名』から第九作『悪名一番』まで手がけてきたベテラン依田義賢が再登板。キャメラも、田中徳三とは名コンビの宮川一夫が担当。タイトルバックも、初期シリーズと同じ雰囲気で、時代遅れの男・朝吉

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『忍びの者 霧隠才蔵』(1964年7月11日・大映京都・田中徳三)

『忍びの者 霧隠才蔵』(1964年7月11日・大映京都・田中徳三)

 今回のカツライスの「ライス」は、市川雷蔵主演のシリーズ第4作『忍びの者 霧隠才蔵』(1964年・大映京都)。前作で石川五右衛門の復讐劇が決着したので、雷蔵は霧隠才蔵を演じることに。お話は前作『新・忍びの者』から10数年後、大坂冬の陣から始まる、なのである意味、お話は続いている。

 霧隠才蔵は、安土桃山時代、真田幸村に仕えた「真田十勇士」の一人として、大正3(1914)年刊行の「立川文庫」第40

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『悪名一番』(1963年12月28日・大映京都・田中徳三)

『悪名一番』(1963年12月28日・大映京都・田中徳三)

 今回のカツライスは、勝新太郎&田宮二郎のシリーズ第8作にして、初の東京篇。『悪名一番』(1963年12月28日・大映京都・田中徳三)を娯楽映画研究所シアターでプロジェクター投影。前作『悪名波止場』(1963年・9月7日・森一生)で広島・宇品港の鬼瓦組を一網打尽にした悪名コンビ。今回は悪徳金融会社から出資金が回収できずに、年の瀬を迎えられなくなった善良な大阪の人たちのために、朝吉がひと肌脱いで、清

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『陸軍中野学校 竜三号指令』 (1967年1月3日・大映京都・田中徳三)

『陸軍中野学校 竜三号指令』 (1967年1月3日・大映京都・田中徳三)

 今回の「カツライス」一枚目は、市川雷蔵が和製ジェームズ・ボンドともいうべき特務機関のスパイを演じた、和製スパイ映画シリーズの第三作『陸軍中野学校 竜三号指令』 (1967年1月3日・大映京都・田中徳三)。空前の007ブーム、忍法帖ブームのなかに作られたシリアスなテイストの活劇。日中戦争が激化するなか、また欧州大戦の火蓋が切って落とされようとするときに、ギリギリまで「平和」の可能性(あくまでも戦前

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『第三の悪名』(1963年1月3日・大映京都・田中徳三)

『第三の悪名』(1963年1月3日・大映京都・田中徳三)

 今回の「カツライス」は、カツ単品で、勝新太郎&田宮二郎主演、シリーズ第五作『第三の悪名』(1963年1月3日・大映京都・田中徳三)をスクリーン投影。今東光原作から設定だけというか、映画版独自のクロニクルとして、依田義賢がシナリオを執筆。タイトルの「第三の悪名」は、日活からフリーになったばかりの長門裕之のこと。

 キャメラは、第二作『続・悪名』(1961年)以来となる名手・宮川一夫。『続〜』のラ

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『続・新悪名』(1962年11月3日・大映京都・田中徳三)

『続・新悪名』(1962年11月3日・大映京都・田中徳三)

 今東光原作、勝新太郎&田宮二郎主演のシリーズ第四作『続・新悪名』(1962年11月3日・大映京都・田中徳三)を久しぶりに娯楽映画研究所のスクリーンで投影。タイトルがややこしいが、前作『新・悪名』の続篇という意味である。脚本は、ベテランの依田義賢。第二作で原作のエピソードを描いてしまったので、完全オリジナル。このシリーズを立ち上げた田中徳三が監督に復帰している。

 今回は、再婚してしまった元女房

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