ご苦労さまでした。お幸せに!『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995年・松竹・山田洋次)
文・佐藤利明(娯楽映画研究家) イラスト・近藤こうじ
映画の原稿を書くようになってからも、「男はつらいよ」は映画館で観てきました。上野松竹や銀座松竹で、満員のお客さんの熱気のなかで、寅さんの姿を見るのが、子供の頃からの楽しみでした。ただ一度だけ、当時、松竹本社の地下にあった試写室で観たのが、第四十八作『寅次郎紅の花』でした。平成七(一九九五)年十二月二十日、公開三日前のことでした。「男はつらいよ」は、いつも完成が公開ギリギリとなり、マスコミ向けの試写も数日前というのが常で