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地域のたから人財を守る。若手鍛冶屋の手作り包丁ブランディング

本題に入る前に。

社員に仕事を丁寧にしてもらいたいので、よく「心を残そう」と言っていましたが、昨日、肝入りの新サービスで私自身が全く心が残っていないことに気づきました。詳細を伝えるのをためらうほど恥ずかしいことで、猛暑している今日この頃です。


さて、本題に入ります。

昨年12月23日に、ブランド・マネージャー認定協会主催で、記念すべき第1回ブランディング事例共有会を開催しました。

第1回1人目の発表者は、長野県茅野市で建築事業に加え、自社経営の飲食店5店舗、物販店舗、フィットネスジム、ホットヨガスタジオを経営する
株式会社イマージの北原友社長です。
※ジャクソンと呼んでいます。先日、ジャクソンとの出会いからを思い出したので記事にしました。
https://note.com/toshi_iwamoto/n/ncc8b07ea5a97

ジャクソンの事例発表の内容を簡単ではありますが、こちらでご紹介します。


地域のたから人財を守る。若手鍛冶屋の手作り包丁ブランディング

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株式会社イマージの支援先の“定正”は、長野県茅野市にある大正9年創業の昨年に100周年を迎えた会社で、刃物や農具を製造する鍛冶屋だったが、昭和44年に金物屋として、家庭用品や建築金物の取り扱いをするようになった。現在は、この金物屋がメインだが、鍛冶屋としても手作りの包丁や農具などの販売をしている。

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“定正”の社長は3代目で、その社長の次男の小尾祐介氏が鍛冶職人を継いでいる。
祐介氏は、10年前に東京から帰省した際、初めて鍛冶に興味を持った。当時は、地域で最後の鍛治職人が既に引退していたが、祐介氏は、その引退した鍛冶職人に指導を仰ぎ修行し鍛治職人となった。

以前は、茅野市は鍛治職人が大勢いたが、現在では、残念ながら全て廃業しており、祐介氏が地域で唯一の鍛冶職人となっている。

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最近(コロナ前まで)は、包丁作り体験を開催していて、貴重な人材・技術ということもあり、茅野市DMO(※1)でも応援され、地域住民や観光客の人気プログラムとなっている。

包丁の【祐和】ブランドは、5000円~9000円のリーズナブル手作り包丁である。

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課題だったのは、この金額は、量販店の包丁とそれほど変わらない価格であったのと、一本ずつ手作りの包丁である価値が伝わりづらいということだった。

課題解決には、商品単価をアップし、“定正”と地域のためにも、“地域唯一の鍛冶屋”がいつまでも続けていけるサスティナブルなブランドにしたかった。

そこで、ジャクソンは、鍛治職人をはじめ、みなさんとともにチームブランディング(※2)を試みる。

まず、現状分析として、3C分析を始め、「自社の強みは何か?」「顧客のニーズは何か?」「直接競合と間接競合はどこか?」をチームメンバーと深堀りしていく。

その結果、「“いい包丁の概念を変えていく”地域の若い職人がこの地域で責任を持って作る一生モノの包丁」という市場機会を発見した。何よりもメンバーが決意を固めるワードが抽出されたことが、意義深いことだった。

次に、誰に届けるのかを探ったところ、3名のペルソナ(※3)浮かび上がってきた。

3名のペルソナを以下に記載する。※一部省略。

名前:田村 裕司(55)
信用金庫 茅野支店 勤務 サラリーマン
こだわり派 自由気まま 渋い
品がある 奥行きがあって引き出しを持っている
奥様:田村美由紀(53)

名前:小池 瑠璃子(38)東京出身
旦那:小池 伸晃(39)茅野市出身
職業:広告代理店勤務のweb デザイナー
子供:男の子(10)男の子(7)
趣味&職業:ヨガのフリーのインストラクター
結婚を機に茅野市に移住。
公民館などでヨガ教室を定期的に主催している

名前:小平 敏子(63)
旦那:小平 茂雄(64 歳)現役大工さん
茅野市北山生まれの専業主婦。
子供は2人(30 才と27 才)孫は2人。
趣味は、自宅裏の畑で野菜を育てること。
滅多に外食はせず、どちらかというと質素な食生活。


この3名のペルソナを比較した際、それぞれのニーズが異なることに気づき、検討を重ねた結果、ペルソナの1人[小池 瑠璃子]さんが、“定正”の包丁に対して理解・共感し、ニーズもありそうだと仮説する。

小池 瑠璃子さんが買いたいと思うような「おしゃれなパン切り包丁でもある三徳包丁で、人にもプレゼントしたいと思えるような包丁」を作ることが重要であると考えた。

小池 瑠璃子さんの1日をイメージしてみると、包丁を使うのは、朝食か夕食の準備の時間。朝は夕方に比べて、1日の始まりで、すがすがしい気持ちでこの包丁に向き合ってもらかるのではないかと考え、朝に包丁を使う瞬間の瑠璃子さんの気持ちをイメージしてみた。

朝ごはんは家族4人で唯一揃うご飯だからとっても特別。
他にはない特別な、お気に入りの包丁で家族のために料理したい。
その日がいい一日になるように丁寧に、丁寧に。
だからこそ気合いを入れて。心を込めて。

その後、コンセプトでもある「ブランド・アイデンティティ」を検討していくわけだが、小池 瑠璃子さんは「“定正”にとってどのように思われたいのか?」をペルソナに憑依し言語化した。

私のとっておきのお気に入りの包丁、
家事を豊かにしてくれる道具があることで、
毎日のたのしみが増えていく気がする。

このペルソナに思われたいことをクリエイティブジャンプの上、言語化した。

『食卓にあるひかり』
The shine of my life, everything

これが“定正”の包丁【祐和】のブランド・アイデンティティである。

家族がいる食卓がイメージでき、朝の光も感じられる言葉だ。

以降は、これを届けるコミュニケーション戦略が重要となるが、まだ発売前ということで、お見せできない。ただ、ここまでブランドのコンセプトが明確になっていれば、進めやすいことは確かだ。

※1 DMO
「Destination Management Organization」の略で、官民の連携により観光地域づくりを推進する法人を指す。
※2 チームブランディング
ブランド構築に係る活動を、プロジェクトメンバー各々が担うことで、信頼関係の醸成と経営目標の達成を目指す、小集団のアイデンティティ構築手法である。[チームブランディングは、(一財)ブランド・マネージャー認定協会の商標登録]
※3 ペルソナ
顧客をイメージした仮想の人物像。名前、年齢、性別、職業から性格、価値観まで、プロフィールを細かく定めたペルソナは、次のステップ以降の取組の支柱となる。

このブランド作りを支援したジャクソンは、最後に次のように言ってました。

ブランド・マネージャー認定協会の8ステップを丁寧に行なっています。
時にはアレンジしてみたりということもありますが、基本的には協会の“型”です。
時間はかかりますが、チームメンバーが足並みを揃えて企画を考える時間になりそのプロセスでメンバー全員が納得・腹落ちする大切な作業だと考えています。
今回は3C分析を行い“いい包丁の概念を変えていく”市場機会の発見というよりも、決意を固めるワードが抽出されました。
そこから先はこの包丁に価値を感じてもらえる人探しになり、この包丁の価値を一番に感じ取ってくれるだろうペルソナに出会えました。


ジャクソン、素晴らしい事例を共有いただき、ありがとう!

ブランドが価値を感じてもらえる人にしっかり届き、ブランドが成長していくことを願っています。
また、実践報告をお待ちしています。


さて、各地で緊急事態宣言が続いています。先行き不安な状況ですが、コロナはコントロールできない外部環境です。このこと自体に心を奪われず、この状況でやれることに知恵を絞り、試行錯誤しながらみなさんとともにチャレンジしていければと思います。

このように、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の共有の場でもあるブランディング事例共有会。

次回は、2月25日(木) 16時~ に開催ですので、
お知り合いの方をお誘い合わせの上、ご参加ください。※参加費無料

■第2回 ブランディング事例共有会
https://form.k3r.jp/brand_manager/seminar02

本編終了後には、オンライン懇親会ではなく、当日の発表事例を振り返り、発表者を囲み学びを深めるディスカッションとして、オンライン勉強会を1時間ほど予定しています。こちらも、ぜひ、ご参加ください。

※参加費は、全て無料です。

お目にかかれれば、うれしいです!

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