見出し画像

「お金を払ってでも課題を解決したいユーザー」をどのように探し、どのようにプロダクト開発に協力してもらったか

Flyleの荒井です!

前回は「プロダクト開発着手」から「初めての有償利用の実現」までにかかった1年間を振り返る、という内容を書きました。僕自身ゼロからの事業・プロダクトの立ち上げの経験は豊富ではなかったため試行錯誤しながら進めましたが、その試行錯誤によって得られた学びもたくさんあります。

今回は新たなサービスの立ち上げにおいて非常に重要となる「お金を払ってでも課題を解決したいユーザー」とどのように出会い、その後どのようにプロダクト開発に協力してもらったかを振り返っていきたいと思います。

# 想定読者
・サービスの立ち上げに携わる方
・サービスのターゲットとなるユーザーが見つからない方

「お金を払ってでも課題を解決したいユーザー」が見つからなければサービスは絶対に成功しない

事業としてプロダクトを作る以上、プロダクトを通じて売上を生み出す必要があります。立ち上げたサービスがクローズされる理由として「ユーザーはプロダクトを使ってくれているが、お金を払ってくれなかった」ということをよく耳にしますが、それは「プロダクトによって解決される課題が、ユーザーにとってはお金を払ってでも解決したい課題ではなかった」と言えます。

「お金を払ってでもその課題を解決したい人はいるか」という点が重要なのは自明ですが、その理由として「課題の深さ」や「困っている人の数」が、後々のプロダクトのプライシングや利用者数に大きく関わり、プロダクトが成功するかどうかを決める大きな要因となるためです。

100名を目標にしたユーザーインタビューで見えてきたユーザーの課題

前回の記事にも書いた通り、「自分の経験や仮説を元に、欲しい物を具体化したα版」を開発しましたが、うまく課題を捉えられておらず、初期のターゲットとしていたPMからはあまり良い評価を得ることができませんでした。

その結果を受けて、改めてPMの業務理解と課題の特定のために100名を目標にユーザーインタビューを実施しようという取り組みを行いました。「100」という数字にはあまり根拠がありませんでしたが、振り返ってみると「プロダクトマネージャー」というドメインやプロダクトのフェーズによって全く異なる業務を行っている職種に対しては妥当な数字だったかなとも思えます。

僕たちは元々「ユーザーの声を有効活用して、プロダクトマネージャーの業務をより良くできないか」という方向性でプロダクトの立ち上げを行いました。プロダクトマネージャーは日々、自社のプロダクトの成功させるにはどうすればよいか?を考えており、プロダクトの成功にはユーザーがプロダクトに価値を感じて利用してくれることが必要です。それらを踏まえ「プロダクトマネージャーの業務をより良くすること=顧客に刺さるプロダクトや機能を提供できること」と仮説を立て、そのゴールを実現するために壁となっている課題を知るためのインタビュー設計を行いました。

画像3

インタビュイーのリクルーティングは下記の方法で行いました。

・知り合いのPMにお願い
・知り合いからの紹介
・Twitterで相互フォローになっている方にDM
・インタビュー支援ツール
・インタビュイーからの紹介(後述)

インタビューの中で聞いた質問は下記のような内容です。

・使われないプロダクト、機能を作ってしまった経験はありますか?
・どのように「使われなかった」と判断しましたか?
・使われなかったのは何が原因と考えますか?
・使われる機能を提供するために工夫していることはありますか?
・その業務にどんなツールを使い、どれくらい時間をかけていますか?、など

この内容を中心にヒアリング行っていった結果、下図のような事実を明らかにできました。

画像1

この「使われるための工夫」中でも、顧客フィードバックやユーザーインタビューなどの定性データをプロダクト開発に活用しているセグメント(toCのプロダクトよりも、toBのプロダクト)により焦点を絞って業務のヒアリングをしたところ、以下のような事実が分かりました。

画像2

# 解決すべき課題
1. プロダクト開発において顧客の声を重要視しているが、チャネルが多く管理コストが高い
2. 顧客の声がどのように施策に活かされ、どのような機能がいつリリースされるのかが可視化されていない

「お金を払ってでも解決したい課題か?」がインタビューによって確認できた後は「その課題を解決するためのソリューションにいくら払えるか?」この点を明らかにする必要があります。

そのため、ある程度課題がクリアになってきたタイミングからは、実際にその課題を解決するためのソリューションとしてFigmaを利用した「デザインプロトタイプ」によってデモンストレーションと、ソリューションに対するフィードバック収集を「ユーザーインタビュー 30min + デザインプロトタイプを利用したソリューション検証 30min」スケジュールで実施しました。ソリューション検証では、以下のような内容の質問をしました。

・このプロダクトによって、あなたの業務は改善されますか?
・どのような業務が改善されそうですか? or 改善されないと感じた理由はなんですか?
・〇〇円で利用したいと思いますか?
・高い・安いと思った理由は何ですか?
・知り合いで、このプロダクトがあると喜んでくれる方は思い浮かびますか?

フィードバックからプロトタイプを改善→再度ソリューション検証、というプロセスを繰り返すことで、ようやく作るべきプロダクトの形が見えてきました。

インタビューを通じて課題を抱えるユーザーにより多くの出会うための工夫

100名のユーザーインタビューの中で「困っている人」により出会いやすくなるための工夫として、それなりに上手くいったことがあります。それは、ソリューション検証の最後に「〇〇さんのお知り合いで、このプロダクトがあると喜んでくれる方は思い浮かびますか?」という質問をしたことです。

この質問の良かった点としては下記の通りです。

1. 実在する人をイメージするため、普段行っている業務や困っていそうなことを具体的に話してくれる
2. インタビュイーが想定したプロダクトのターゲットと、自分たちの想定するターゲットが仮説通りか検証でき、場合によっては「〇〇というセグメントにもニーズがあるかも」といった発見ができる
3. 「困っていることが解決されるのであれば!」と、積極的にその人を紹介してくれる

この質問によって、元々想定していたペルソナからインタビューの対象を広げてみたり、〇〇というセグメントには刺さらないかもね、といった判断をすることができ、結果として「本当はインタビューをすべきセグメント」に対するインタビュー漏れを防げたように思います。

また、サービスが世に出ていないフェーズではインタビューのアポイントを獲得するにも一苦労なのですが、インタビュイーの方から何度もご紹介いただけたため100名へのインタビュー目標に対して大きな後押しとなりました。

ソリューションに共感してくれたユーザーに作ったプロダクトを評価してもらう

さて、「お金を払ってでもその課題を解決したい人」が一定数(僕の感覚としては最低5人)見つかれば、その課題を解決するためのプロダクトを実際に開発していくフェーズになります。開発の手戻りを減らすために、要所要所で情報共有をしながら進めていくことが求められます。

実際に僕たちもデザインプロトタイプを活用したり、ある程度動くようになったプロダクトを触ってもらいながら、初期ユーザーにとってのMVP(Minimum Viable Product)を完成させました。ここまでくるとようやく「お試し利用」ではなく「実務の中で利用」していただけるようになります。

実務の中で利用していただくと「〇〇という機能がほしい」「XXはできないのか」といった、プロトタイプによる検証では見えてこなかったプロダクトに対するフィードバックが大量に出てきます。また、場合によっては「思ったよりも業務が改善されなかった・便利じゃなかった」という意見が出てくることもあります。

課題に共感していただき、プロダクトに期待してくれたユーザーからのフィードバックは非常に貴重な声ですので、ありがたく耳を傾けてプロダクト改善に活用させていただきましょう!

10人に会って何も響かなければ課題設定が間違っているかも

ユーザーインタビューをしていく中でなかなか自分たちの仮説通りの課題を持っているユーザーに出会えないこともあるかと思います。幸い僕たちはインタビューの初期段階で課題に共感してくれるユーザーに数名出会えたため、そのままインタビューを継続する決断をしました。

課題設定が不十分なまま本格的にプロダクトの開発に着手してしまうと、冒頭に書いた「一定ユーザーはいるが、お金は払ってくれない」という状態に陥ります。そうなってしまうと、いくら付け焼き刃の新規機能開発をしたり、魅力的なプロモーションをしても状況は改善されません。

プロダクトの運営には膨大なコストがかかるため、もしもサービス立ち上げ時のユーザーインタビューで「お金を払ってでもその課題を解決したい!」と本気で思っているユーザーに出会うことができなければ、思い切ってピボットする勇気も必要かもしれません。

おわりに

今回はプロダクトのターゲットとなる「課題を解決したいユーザー」をどのように探し、どのように課題の深堀りを行ったのかをFlyleの事例を振り返ってみました。

本当に困っているユーザーを見つけることができれば、その後も積極的に意見や感想をフィードバックしてくれるため、プロダクトづくりは大きく前に進みます。このプロセスは立ち上げるプロダクトにおける課題設定をするという観点でも非常に重要なので、多少時間がかかったとしても粘り強く実践したいですね。

また新たなプロダクト立ち上げをする際はしっかりとこの経験を活かせるようにしたいなと、よい振り返りの機会になりました!

顧客フィードバックをプロダクト開発に有効活用するための「Flyle」を開発しております。もし興味があればお問い合わせやトライアル利用をお待ちしております!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?