「スピノザの診察室」を読んで
「スピノザの診察室」
著者:夏川草介
オーディブル版を読んで(聴いて)の感想です。
毎年この時期になると本屋大賞ノミネート作品が気になります。2024年ノミネート作品のなかで気になったのが「スピノザの診察室」です。
「スピノザって、何?」というところから興味を持ちはじめて、この作品を読むことに。
「老い」「病気」「幸せ」について
「スピノザの診察室」を読み進めていくと、人の「老い」「病気」「幸せ」やについて考えさせられるものでした。
その人の「生き方」は、その人の考え方ひとつで変えられるものだと信じています。しかし、「老い」や「寿命」は変えることができないものです。
この作品の「人の死」の捉え方が、「暗く怖いもの」と感じさせない主人公「マチ先生」の倫理観や人としての優しさが見えてきます。
主人公「マチ先生」が「がんを患い体力が落ちてきた患者」に寄り添うように語っています。
ストーリー
「スピノザの診察室」というタイトルからも想像できるように、医療現場が舞台の物語。主人公「マチ先生」は、京都の地域医療を支える消化器内科の医師です。元は最先端の医療技術をほこる大学病院の医局長で、内視鏡手術のスペシャリスト。
日本の医療技術の最先端の力量を持ちながら、医師としての哲学をも兼ね備えた人物として描かれています。高い技術と哲学の両方を遂行できる、言わば医療界の二刀流です。
本作品の著者である夏川草介さんは、医療現場の医師をされています。ゆえに、要所で医療専門用語がでてきます。しかし、素人でも理解できる解説で読みやすく感じました。
「スピノザ」のこと
疑問に思った「スピノザ」とは、十七世オランダの哲学者のことでした。主人公「マチ先生」が「スピノザ」のことを中学生の甥に対して分かりやすく語っています。
主人公は、スピノザ著作「エチカ」を難解な本だよと甥に諭します。そして、熟読しているからこそ哲学に関しての持論があるようです。
作品中にも様々な問いが、なげかけられてきます。「『老いること』『病気で余命宣告をされること』それがすなわち『不幸なこと』なのか?『幸せに生きること』とは…
京都の四季折々の表情
本作品には「京都の風景や風物詩」が随所にちりばめられて、京都の四季折々の表情を楽しませてくれるのも魅力です。
また、主人公「マチ先生」は甘党で「京都の銘菓」も数々登場します。
甥の龍之介に対してこのように語ります。
そのほか「練り切り」「金平糖」なども登場してくる。京都といえば「八つ橋」しか知りませんでした。こんなにたくさんの種類があるのかと驚くと同時に、「今度京都に行ったときは食べてみよう」と思う。
「京都の風景や銘菓」が、本作品のテーマである人の「命」や「幸せ」を際立たせるアクセントになり印象的でした。
まとめ
私の父も母もまだ健在ですが、既に齢80を過ぎています。いい年になった妹もいます。最近、家族の「病」や「寿命」というものに対面せざろう得ない時期が、近づいてきているんだなと思っているところでした。
家族の「病」や「寿命」というものが表面化したとき。そのとき「幸せ」というものを感じてもらえるようにするには、何をしてあげればいいのだろうか…と。
その問いの答えをあたえてくれる一文がどこかにあるのではないかと、
本作品をもう一度読み返しています。それだけ魅力のある作品です。
最後に大学病院から来ている研修医に対して、「マチ先生」が語った言葉が印象に残っています。
「スピノザの診察室」の続編が出ることを楽しみにしています。
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