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夜の惑星【R18】#5

#4

*20字で改行しています

○千秋のお腹に耳を当てる杜崎
千秋のN「思いがけず、妊娠が分かった。で
 も杜崎の子なのか平山くんの子なのか、自
 分でもよく分からなかった……」
  場所は千秋の部屋である。
杜崎「……(何か聞き取ろうとするよう
 に)」
千秋「まだ二か月だから」
杜崎「そうだな」
  そう言いつつも顔が緩んでいる杜崎。
杜崎「義父さん義母さんには?」
千秋「安定期に入ったらでいい。期待された
 くないし」
杜崎「うまくいくって」
千秋「うん……」

○テーブルの上の携帯が鳴る
  千秋、表示を見ると未登録の番号であ
  る。
  通話ボタンを押し、耳に持っていく。
千秋「はい」
声「先生、おれ」
千秋「……掛井くん?」
  千秋、一瞬言葉を失う。
掛井の声「今、平気?」
千秋「前の番号、繋がらなくなってたから」
掛井の声「ゴメン。色々あって」
千秋「どうしたの?」
掛井の声「今日、暇ある?」
千秋「え?」
掛井の声「会えないかと思って」
千秋「いきなりそんなこと言われても」
掛井の声「やっぱイヤだよね」
千秋「イヤとかじゃなくて……」
掛井の声「急に先生と会いたくなったんだ」
千秋「……(迷う)」

○駅前ロータリー
  千秋、待っている。
  と、目の前に軽自動車が停まる。
  運転席の掛井、軽く手をあげる。

○掛井の車・車内
  掛井と千秋。
千秋「掛井くんの車?」
掛井「中古で買った。ダサいけど」
千秋「久しぶりすぎて何話していいか分から
 ないね」
  掛井、千秋の手を取る。
  千秋、掛井を見る。
掛井「会いたかった」

○ラブホテル・一室
  ベッドの上。
  うつ伏せの千秋に、掛井が折り重なって
  つながっている。
  どこか盛り上がっていない。
千秋「向い合わせがいい」
  掛井、いったん抜いて千秋を仰向けに
  し、再び挿れる。
千秋「ん」
  掛井、千秋の手を握る。
掛井「指輪、前と違う」
千秋「ダンナ、変わったから」
  掛井、キスをする。
  濃厚に舌を絡めながら腰を動かす。
  千秋を仰向けにし、腰を持ち上げるよう
  にして突き上げる。
千秋「もっとして。もっと」
  掛井、激しく突く。
千秋「もっと!」
  掛井、最後に千秋を突き飛ばすように腰
  を突き出す。
  千秋、ベッドで弾み、そのままぐったり
  となる。
  掛井、千秋の隣りに身を横たえる。
  千秋、気づかれないようにお腹にそっと
  手をやる。
千秋「ねぇ、どうして?」
掛井「?」
千秋「今になって会いたいって」
掛井「……見たんだ、先生のこと」
千秋「どこで?」
掛井「あの小屋のとこで」
千秋「……行ったの?」
掛井「(うなずく)それで、どうしてもまた
 会いたくなって」
千秋「私も見た、掛井くん。あそこで」
  掛井、「?」と千秋を見る。
掛井「いいよ、合わせてくれなくても」
千秋「ううん、本当に……」
  千秋、ふと口をつぐむ。
掛井「何?」
  千秋、なぜか怖くなり何も言えなくな
  る。

○駅前ロータリー(夜)
  掛井の車が停まっている。
  その車内、掛井と千秋が別れがたい思い
  で座っている。
千秋「そろそろ帰らないと」
掛井「最後にした方がいいかな」
  千秋、掛井を見る。
  掛井もまた千秋を見る。
  二人、じっと見つめ合う。

○千秋の部屋・ベランダ(夜)
  千秋、ぼんやり外を眺めている。
杜崎の声「ただいま」
  千秋、室内をちらりと振り返る。
  杜崎、ベランダに出てくる。
杜崎「ここにいたのか」
  千秋、うなずく。
杜崎「とうした?」
千秋「ダメにしちゃった」
千秋のN「その後、私に子供がてきることは
 なかった」

#6

いただいたサポートは子供の療育費に充てさせていただきます。あとチェス盤も欲しいので、余裕ができたらそれも買いたいです。