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カヌー推進事業/カヌーサポートコーチの仕事

高知県土佐町では地域おこし協力隊19名(2023年4月時点)が林業、観光、高校魅力化、デザイン、教育、スポーツの分野で活動しています。このnoteでは、協力隊の活動や人となりを伝える冊子「土佐町地域おこし協力隊新聞」に掲載している内容を電子版として紹介しています。土佐町/協力隊に興味がある方に読んでもらえればと思っています。

カヌースポーツを通じて、子どもの成長を助けたい。

呉羽修一:地域おこし協力隊(2020年12月着任)
ラヨシュ・ジョコシュ:カヌー指導者
聞き手:高橋雄平(土佐町協力隊新聞 編集長)

高橋:呉羽さんは協力隊に着任したばかりですが、仕事についてどのような印象ですか? 

呉羽:求められていることにレベルの高さを感じています。協力隊の募集要項の文章から伝わる以上にラヨシュの取り組みの真剣さ、土佐町のカヌー事業への姿勢っていうんですか、それはものすごく力が入っているなと、こちらに来てからさらに感じました。子供たちのやる気を起こそうとするラヨシュの姿には日々感動で、スポーツを通じて単にカヌーが上手くなるだけではなく、人間性を育てるように指導しているように思います。ただ自分の英語力の壁もあってラヨシュとのコミュニケーションはまだまだです(笑)

高橋:ラヨシュは2017年に土佐町に来ましたが、カヌーの活動は今はどのような状況にありますか?

ラヨシュ:ここでカヌーを教えて4年になりますが、今ようやく自分の仕事がスタートラインについたような気持ちです。トレーニング環境が整備されたことも理由のひとつで、最低限必要なカヌーボート、トレーニングジム、練習用の屋内プール、そして呉羽さんのようなサポートコーチがいることで、本来の仕事に集中できるようになりました。みんなと試行錯誤を続けてきたことで、余すことなく自分の技量を教えられるようになったと感じます。この仕事は自分にとって夢のような仕事なんです。

ラヨシュ:以前はナショナルチームのコーチだったので、子供に教えることは大きな挑戦でした。大人に教えるより子供に教えるほうが難しいこともありますし、ハンガリーと日本ではカヌーの文化の違いもあります。成長すればスポーツメンタリティは自然と培われますが、小さい子供のモチベーションは自発的に上がりません。どうすれば子供たちの心に火を灯すことができるかいつも模索しています。

高橋:カヌーのプロジェクトが軌道に乗るまでに苦労も多かったと思います。

ラヨシュ:もちろん関係者の尽力と嶺北地域の皆さんのサポートがあったからですが、まだ自分は何かを成し遂げたようには感じていません。やることがまだまだありますから。これまで以上にたくさんの子供が早明浦湖で練習に打ち込み、プロフェッショナルな選手をめざすモチベーションを持ってほしいです。将来的にプロの選手が生まれたら嬉しいですが、みんながプロの選手になるわけではないので、自分が教えることは身体を鍛えることだけではなく、学んだことが彼らの人生において仕事や全てのことに活かせるようにする、そのバランスを大事にしています。

高橋:呉羽さん、ラヨシュ、お二人は活動を通じてどんなことを感じますか?

呉羽:私はコーチ経験もなくて、教育者でもないんです。この環境に置かれると、小学生低学年から高校生までのいろんな年齢層の生徒と触れ合うことができます。彼らに教えることもある分、彼らから学ぶこともあります。カヌースポーツを通じて、彼らの成長を助けていきたいと思っています。それがいちばんのやり甲斐です。

ラヨシュ:自分がもし仮に大きな目標を掲げるなら、いつかまたナショナルチームで教えたいです。国は問わず、トルクメニスタンだっていいです(笑)でもそれは今の目標ではないです。自分は土佐町が好きで、カヌーがこの町の日常風景のようになることを信じて活動しています。そうなるまでは決して簡単ではなく時間がかかることです。新しくできたカヌーテラス、SUPやカナディアンカヌーなどのレジャカヌーも文化的側面でとても良いことだと思います。たとえば20年後、自分はこの町にいないかもしれませんが、自分の痕跡はこの地にきっと残るでしょう。

呉羽:かっこいいですね。ラヨシュがここにいたという証は残りますね。

ラヨシュ:自分の伝えるコーチングスタイルを身につけてもらい、次のコーチが育ち自然なかたちで続いていく、そうなるようにこれからも頑張っていきたいです。

高橋:次なるステップやビジョンを少し聞かせてもらえますか?

ラヨシュ:年々生徒が参加してくれるごとにチームは成長していて、嶺北高校カヌー部は今や高知で最も強いチームです。次の目標は四国でいちばん強いチームになることです。そしてその先には日本でいちばん強いチームになるというゴールがあります。もうひとつは、カヌーアカデミーに10人以上の子供たちが参加してくれることです。いろんなスポーツに触れられる環境が大事だと思うので、学校で野球、バレーボール、バドミントンなどができるように、土佐町ではカヌーもそのひとつの選択肢であってほしいです。

高橋:呉羽さんはいかがですか?

呉羽:ラヨシュが今言ったことを僕がどれだけサポートできるかですよね。サポートしながら彼のコーチとか選手としての知識とかテクニックとかいろんなことを吸収したいっていうのが僕の想いです。彼は元世界王者なので、できるだけメダリストとしてのトレーニングやコーチングに集中してもらいたいです。

高橋:ラヨシュは呉羽さんにどんなことを期待していますか?

ラヨシュ:もちろん子供たちにカヌーを教えてもらいたいのですが、本当にたくさんのことを覚えてもらわなければなりません。できる限り時間を共に過ごして順を追って学んでほしいと思います。そしてカヌーの活動をサポートしてもらうだけではなく、何か新しいことにも取り組んでもらいたいです。土佐町での生活を楽しむことも忘れずにね!

呉羽:ありがとう。しかし土佐町の冬は寒かったです(笑)

ラヨシュ:大丈夫!ハンガリーよりは暖かいですから(笑)

高橋:最後に、呉羽さんがラヨシュに聞いてみたいことをひとつお願いします!

呉羽:聞きたいことはいっぱいあるんですが、そうですね。カヌーと家族を愛してるラヨシュですが、それ以外に熱中しているものはありますか?

ラヨシュ:難しい質問ですね(笑)天気のいい日は外で過ごすのが好きで、ガーデニングや日曜大工など自分でいろいろつくったりして田舎生活を楽しんでいます。家にこもっているのはストレスで(笑)

ラヨシュ:ではお返しに自分も呉羽さんにプライベートな質問をひとつ(笑)彼は土佐町に来てから結婚しましたが、この仕事の面接をしたとき彼が「もしこの仕事に就けたら結婚します!」と言っていたのが印象に残っていて、もしこの仕事をしていなかったら、土佐町に来ていなかったらどうなっていましたか?(笑)

呉羽:よく覚えていましたね(笑)どこに行こうが、どんな仕事をしようが奥さんは付いてきてくれました。たぶん!

ラヨシュ:ということは面接で、、(笑)

呉羽:愛は永遠とか言います(笑)

ラヨシュ:そうですね!子供たちがやって来たので、そろそろ練習を始めましょう!

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