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勘所5:新たな事業の構造・仕組みに投資する

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「事業戦略の勘所コース第5回」 


極端な言い方になるが、企業が将来にわたって業績を生み出せるのは、今ある商品やサービスのためではない。商品、サービスは時代により変わっていくものである。投入できる資金や経営資源があるからでもない。

企業が生き残っていけるのは、時代を先取りした顧客提供価値を見いだすことと、その顧客提供価値を生み出す事業の構造・仕組みを持つからである。

たとえば、アマゾンは、製品や音楽などのコンテンツを提供することだけで生き残っているのではない。

人々に必要な商品やサービスを提供し続ける事業の構造・仕組み、つまリビジネスモデルを持つからこそ生き残り、成長しているのだ。

事業を経営する際には、商品やサービス、あるいは経営資源にこだわりすぎてはいけない。


事業が業績を生み出せるのは、強みが構造化され、他社がマネできない形になっているためである。他社に比べ、その仕組みや構造が、高い商品・サービスの付加価値を低コストで生み出せる状態、つまり高い経済性を形づくる状態になっているためである。


しかし、事業の構造や仕組みを企画するには、大げさな戦略手法をたくさん学びそれを駆使することは必要ない。現場で具体的な成果を上げ、儲かる仕組みを現実的につくることである。抽象的で創造性豊かな発想やイメージではなく、極めて限定された範囲、いわゆる「現場」での構造や仕組みが必要なのである。戦略理論や分析手法を全く知らなくても、日本で最高の業績を上げるラーメンチェーンの構築は可能である。他の事業も同様である。

また、構造や仕組みを考えるには、ゼロから発明する必要はない。他業種、他社、他地域でうまくいっている方法を自分の事業にあてはめ、その事業の中で、独自の成果を出せる独自の構造・仕組みをつくり出せばそれでよい

経営トップやビジネスリーダーの重要な仕事の一つは、この事業の構造。仕組みを変革することである。

つまり、自社の強みが活かされる事業機会を見つけ、これまでの仕事のやり方とは違う、新たな事業構造や仕組みを考え出すことである。事業構造や仕組みを更新し変革するには、強い意思決定力を要する。


その意思決定力とは、組織メンバーの目標を変え、仕事のやり方を変え、経営資源の配分を変える決断となる。またその際、経営トップやビジネスリーダーには、強いリーダーシツプが必要になる。これまで慣れ親しんだ事業の構造・仕組み、仕事のやり方を変えるのは、組織メンバーにとつて先が見えにくい不安な状況である。そのようなときにこそ、勇気のあるリーダーシツプが必要なのである。そのリーダーシップにおいて重要なのが、自社の強みを明確に認識しメンバーに伝え、変革の目標とビジョンを共有させることである。


たとえ新たな事業構造や仕組みを構築できたとしても、本当の成果が継続して出せるようになるまでは、「現場での細かな絶え間ない工夫」を続け、強みを他社がマネできない卓越したものに進化させ続けなければならない。情報が瞬時に行き渡る今日では、新たな事業構造や仕組みの差別化も、他社は模倣できる環境にある。他社や市場をリードするためには、新たな構造の中で、自社の強みを他社がマネできないレベルまで進化させることができなければならない。



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