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視点7:リスクの存在を認識しているか?

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「成功する事業戦略計画の7+1の視点コース第8回」

■リスクはリターン(見返り)と対であると考えよ

ビジネスにおけるリスクという考えは、単にマイナス方面だけの意味ではない。むしろ、リターン(見返り)に対するリスクという発想が常識である。できるだけ高いリターンを得て、リスクを低く抑えるという発想がビジネスにとっては重要なのだ。

ともすると事業戦略計画を企画する主体は、自分の計画に惚れ込むあまり、リスクを軽視しがちである。事業戦略計画には目標、ビジョンという性格があるため、「やらなければ」という意気込みが強くなり、リスク感覚を麻痺させる可能性がある。しかし、事業を失敗させないためにも、そしてステークホルダーにきちんと責任ある約束をするためにも、事業戦略計画のリスクは客観的に把握しておく必要がある。

また、そのリスクがリターンに見合わないもの、ましてや許容できないものであれば、そのリスクを軽減させる方策を考えて、計画を修正しなければならない。

20200724_事業戦略大学_第6回

■資金提供者の立場でリスクを考える


リスクを下げる方策を発想するにあたって、資金を投資したり貸し出したりする資金提供者側からの視点を強く持つことは大切である。つまり資金回収リスクをいかに下げるかという戦略的視点である。
それには大きく四つの視点がある(図表上)。


視点1 投資額そのものを下げる戦略がないか
視点2 投資回収期間を短縮化する戦略がないか
視点3 市場での占有的地位を早期に確立する戦略がないか
視点4 予期せぬ市場環境変化を吸収する戦略がないか


これらの投資回収リスクを下げる戦略的視点を、事業戦略計画の具体的方策に落とし込むとすると、たとえば以下の例が挙げられる(図表下)。


①自前の投資をせずにアライアンスやアウトソーシングを活用する


②他社とのジョイントベンチャー(合弁)にする

③ 一気に自社ブランドを立ち上げるのではなく、OEM (相手先ブランドによる生産)などを活用し、
安定した収入を確保しながら事業の学習をする


④新商品・サービス依存の事業ではなく、すでに実績のある既存商品・サービスを販売し顧客の実績を
積む

⑤はじめから大きな組織体制をつくるのではなく、管理可能な少数のメンバーでスタートさせる

⑥初期の段階では、事業ドメインを少し小さめに限定することで、リスクを抑える

⑦はじめから変動の激しい市場を狙わずに、比較的入りやすい安定市場から参入する

⑧優先順位を考えた段階的な投資ができないかを考える

⑨スタート時点で複数の商品・サービスを展開させるのではなく、象徴的な商品・サービスに絞り込む


これらの例を分析してみると、リスクを抑えるポイントが見えてくる。
つまり、範囲の絞り込みと早い段階での成功。そして実績づくりによる、ステークホルダーに対する段階的な信用の積み重ねである。これらのポイントを意識しながら念入りに計画を見直すことが大切であると言えよう。

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