三方の小品【41:梅雨】
梅雨
梅雨 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
外に出る前からわかる、しっとりとした空気。纏わりつく土の香りを、人は本能的に「雨の匂いだ」と感じ取って少し憂鬱になる。
玄関の扉をガラリと開けて、一歩外に出ればご自慢の髪も湿気を帯びてちょっぴり重たくなったような。ひたひたと真正面から忍び寄るそのグレイで陰鬱な雰囲気を跳ね除けるように… …今日は赤色の傘をさすのだ。
梅雨には傘を新調しようと考えたのは今年の初めのこと。元々は傘をしょっちゅう買う方ではないけれど、なぜか赤色の傘を持ってみたいと思ったのはこの少しアンダーな美しい季節を楽しんでみたいと思ったからだ。いつも見かける傘屋さんに、意を決して入ってみて一番に惹かれた赤い赤いこの一本。和と洋が組み合わさったような、そんな可愛らしくも凛とした傘の手元に少し力をかけたなら……
ぽんっとその場が一瞬にして明るくなり、目の前に太陽が降りてきたみたい。周りの緑、青、紫……梅雨の色とも交わって、予想通りの色合いに思わずにっこりとしてしまう。
そう、確かに梅雨はじめじめとして塞ぎ込んでしまいたくなるけれど、ほんの一工夫でこんなにもワクワクした気持ちになれるのだ。今日は、眼鏡に水滴がついてもすこ〜しくらいは許してあげましょうね。
初出:2022年6月2日
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いいなと思ったら応援しよう!
サポートは、鎌倉屋維持費として使用させていただきます。
ありがとるてなのですよ〜!