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『新たな可能性をもたらす選手たち』 J1第28節 北海道コンサドーレ札幌対セレッソ大阪 レビュー 


スタメン

北海道コンサドーレ札幌

ベンチメンバー 
GK 中野 DF 岡村 柳 MF 小野 FW ドド 中島 ジェイ

・札幌は新加入FWトゥチッチがリーグ初スタメン。
・MF荒野は体調不良によりベンチ外。
・高卒ルーキーFW中島がベンチ入り。
・右膝内側側副靭帯損傷により福森が離脱中。
 水曜は高嶺が起用されていた左CBには、本来左WBで
 プレーする菅を起用

セレッソ大阪

ベンチメンバー
GK 松井 DF チアゴ MF 藤田 西川 FW 大久保 中島 山田

・10年ぶりに復帰した乾をはじめ、丸橋、喜田、松田力
 をスタメンに抜擢。水曜からスタメン4人を変更。

スタッツ

マッチレビュー

 札幌は水曜日のリベンジ、C大阪は小菊監督就任後ホーム初勝利を賭けた一戦。お互いにスタメンを変更し、2連戦の2試合目に挑む。

 前半立ち上がりから札幌ペースで試合が進む。前半1分、駿汰の縦パスからトゥチッチ→金子→駒井→小柏とワンタッチでテンポよく繋ぎシュート。惜しくも枠の上に外れたが、札幌は幸先の良いスタートを切る。

 それからは長い時間札幌がボールを握る展開が続く。サイドチェンジで左右にボールを動かしながら相手を揺さぶり、決定的とは言えないものの多くのチャンスを作りゴールを脅かした。裏に抜け出す小柏を狙ったロングフィードも相手に脅威を与えていた。

 このように相手陣地でボールを保持し続けることができたのは、効果的な守備で相手が自由にボールを持つ時間を与えなかったからだろう。ビルドアップ時はオールコートマンツーマンで相手の動きを制限しつつプレス。ボールを奪われても、DFラインを高く維持し続けることで選手間の距離がコンパクトになっているため、即時奪還をすることができた。即時奪還ができずカウンターでボールを運ばれても、3バックやボランチの迅速な撤退により決定機を作らせなかった。

 しかし、飲水タイムを挟んでから徐々にC大阪がボールを保持する時間が増えていく。前半35分ごろには果敢に札幌ゴールに向かって攻撃を仕掛け続けた。前半ATにはPA右前でFKを獲得。水曜の得点シーンと同じようなチャンスが訪れたものの、札幌からゴールは奪えずに前半は0-0で終了した。

 後半は前半から打って変わり、お互いにボールを握り合うオープンな展開に。後半立ち上がりから札幌は金子、C大阪は加藤がシュートを放ち、お互いに攻撃的に点を狙い合う。

 C大阪は後半13分にFKを獲得。キッカーは丸橋。丸橋が蹴ったボールはゴールを破ったと思われたが、クロスバーに弾かれギリギリゴールラインを越えることは出来なかった。

 流れをものにしたいC大阪は後半23分に加藤と松田力を下げ山田と大久保を投入。2トップ2枚を替えてきた。

 飲水タイムをはさみ、後半26分に駒井が倒されFKを獲得。このタイミングで札幌はトゥチッチに代わりドウグラスを投入。札幌はこの交代が流れを変える。FKのキッカーは菅。菅の放った低い弾道のシュートは相手に当たり、ゴール前にこぼれる。そのボールに反応した小柏のシュートはキムジンヒョンのセーブにより弾かれるも、このボールにドウグラスが素早く反応し、ヘディングでゴールに押し込み見事な先制点を決めた。

 そのすぐ直後だった。右サイドの狭い位置で駒井→ドウグラス→金子と細かく繋ぎ、3人目の動きでPAポケットに抜け出した駒井が倒れながらクロス。この駒井のクロスにC大阪DFの死角から見事に抜け出した青木が反応。胸でゴールに流し込み2点目を奪い取った。

 その後札幌は後半34分に駒井に代わって柳、C大阪は後半35分に喜田に代わって西川と、それぞれが守備と攻撃のカードを投入。C大阪が攻め、札幌を受けの形が明確になった。後半43分にC大阪は坂元に代わり中島、札幌は足を痛めた宮澤と小柏を下げ、岡村とジェイを投入。C大阪はゴールを奪いに札幌を攻め立てるも、札幌がゴールを守りつつ時間を使い切りタイムアップ。2-0で札幌がリベンジマッチを制し、アウェーで勝ち点3を手に入れた。

新戦力FWミラン・トゥチッチ 

 札幌加入後初の先発起用となったミラン・トゥチッチは1トップで起用され、71分間プレーした。

 まず彼のプレーで目を見張ったのはその高い基礎技術だ。前半2分には駿汰から送られたボールスピードの早い縦パスを見事に収めるトラップ、後半9分に見せた小柏のスピードを活かす精度の高いスルーパスなど、素晴らしい技術力を見せた。ポストプレーに関してはジェイのような懐深いボールキープは出来ないものの、下がりすぎず適切な位置でボールを受けていたのが印象的だった。

 攻守におけるオフザボールの動きも期待できるものだった。攻撃時はゴール前で駆け引きし、フリーになるシーンもちらほら。合わなかったものの、クロスボールへの入り方も悪くなかった。ここはこれから味方と感覚のすり合わせをしていけば、自然と得点にも絡めるようになるはずだ。守備時は積極的に守備に参加し、相手のボールホルダーにプレスをかけ続けた。それを示すように、前半はスプリント回数12回と札幌2番目の数字を記録した。

 まだ効果的といえるプレーはあまり出来なかったが、次に期待できるプレーをいくつも見せてくれた。ミシャ監督からも『まだ本来の力を出しきれていない。伸び代がある。』と期待されている。札幌のサッカーに慣れて、本来の力を出し切ったプレーを見られる日が今から楽しみだ。

左CBに新たな可能性を見出した菅大輝

 菅が左CBでも高いパフォーマンスを発揮出来ることが分かったのは、福森の怪我の功名であったかもしれない。福森の聖域であったこの左CBのポジションだが、彼は怪我による長期離脱で直近の試合ではメンバー外。このポジションでプレーできる選手には、福森の不在時にこのポジションでプレーすることの多い高嶺、福森と同じ左利きのCBである中村がいるが、この試合で左CBに抜擢されたのは、本来左WBを主戦場とする菅大輝であった。試合前には菅を左CBで起用することに懐疑的な声も聞こえたが、彼はこのポジションでそんな声を跳ね返すような非常に素晴らしいプレーを見せた。

 まずは彼の大きな持ち味である攻撃参加。WBでプレーする時と同じく、攻撃的にプレーする姿勢は左CBでも変わらない。だがこの試合では左WBでプレーする青木を追い越すオーバーラップはあまり披露せず、彼を筆頭とした味方をサポートする位置でプレーが多かった。例えば、青木が中に入ればサイドに張り、味方がボールを持てば戻しでもらえる位置に立っていた。特にこの戻しからクロスをあげるシーンはこの試合でよく見られ、ターゲットに合えば決定的といえるようなシーンをよく作り出した。それに加え、"菅キャノン"と呼ばれる強力なミドルシュートも健在で、この試合では2本の強烈な菅キャノンを放った。

 彼は攻撃に加え、守備でもこの勝利に大きく貢献した。地上戦では、強いフィジカルを活かした粘り強い守備を披露。日本代表にも招集され、C大阪屈指のドリブラーである坂元を自由にさせなかった。後半11分にはあわや決定機という危険な場面を強烈なタックルで阻止。イエローカードを貰ってしまったものの、チームのピンチを救う力強い守備を見せた。そして彼は空中戦でも簡単には負けない。身長171cmとDFにしてはあまりサイズのない菅だが、競り合いでは体をうまく使い、相手を抑えつつロングボールをしっかりと処理した。

 これまで福森の聖域であったこの左CBのポジションに、菅という新たな侵略者が現れた。菅だけではない。
中村に高嶺を加えたこの4人で切磋琢磨しポジションを奪い合えば、左CBのクオリティアップにも期待できる。この試合が、左CBをめぐる各選手の更なる成長のきっかけになってほしい。

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