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『大爆発』J1第31節 北海道コンサドーレ札幌対ガンバ大阪【レビュー】

スタメン

北海道コンサドーレ札幌

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ベンチメンバー
GK 中野 DF 岡村 柳 MF 小野 FW ジェイ ドド 中島

ガンバ大阪

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ベンチメンバー
GK 石川 DF 佐藤 高尾 MF 倉田 矢島 山本 FW 塚本

スタッツ

試合レポート

 札幌は前節の広島戦、開始早々に点を取られ引いた相手にチャンスを作れず敗北。この試合では相手を崩す自分たちのサッカーでゴールを決めることが求められる。そしてこの試合は9月26日に亡くなった石水勲最高顧問に追悼の意を込めて喪章を着けて戦う。天国の石水最高顧問もためにもこの試合は負けられない。

 対するG大阪は天皇杯湘南戦、前節柏戦と2試合連続で複数得点を取って勝利している。点の取れない札幌とは対照的に決定力があり、流れと勢いもある。クラブ30周年を迎え、新エンブレムも発表されたこの日を勝利で飾りたい。

 試合はすぐに動く。4分、自陣の浅い位置でキムヨングォンがボールを持つとトゥチッチがパスコースを限定するようにプレスをかける。プレスに追い詰められたまらず近くの味方にパスを出すと、そのパスを駒井がカット。そのまま一気に敵陣深くまで侵入すると、勢いよく右足を振り抜きシュート。そのシュートは東口に触れられるもボールはゴール左隅に吸い込まれ、札幌が駒井の見事なシュートで待望の先制点を奪った。

 この先制点の勢いのまま、札幌が攻勢に出る。 

 12分には小柏、17分にはトゥチッチと小柏、21分には金子とそれぞれが決定機といえるところまで迫り、G大阪ゴールを脅かす。すると31分、こぼれ球を拾った駒井からルーカスにパスが渡る。ドリブルで切り込むと、DFの藤春とキムヨングォンの2人を魔法のようなドリブルでするりとかわし追加点を奪った。

 さらにその勢いは止まることを知らない。39分、ルーカスからのパスを駒井がスルーしたことでチュセジョンの動きが一瞬遅れた状態で高嶺にボールが渡る。駒井のスルーによって生まれたその一瞬を高嶺は見逃さない。
ボールをトラップしたその直後、すぐさま左足を振り抜き無回転気味の強烈なシュートは放つ。そのシュートはまるでスナイパーの弾丸のような勢いでゴールに突き刺さり、札幌が3点目をもたらした。そしてこのゴールがコンサポ(主にあん○んさん)待望の高嶺プロ初ゴールとなった。

 前半はこのまま札幌が主導権を握り、0-3で札幌リードで試合を折り返すことに。

 ハーフタイムにゴダイゴの銀河鉄道999でガンバサポーターに勢いが戻ったところで、後半開始と同時にG大阪は高尾、山本、塚本を3人を投入。試合の勢いも取り戻すために大きく動いてきた。

 しかしそれでも後半の主導権を握るのは札幌。後半開始直後の46分にはキムヨングォンのクリアミスをPA右で拾った金子が右足で東口の股を抜くシュートを放ち4点目をゲット。前半の勢いそのままに後半もG大阪ゴールに脅かしていく。

 だがG大阪も3枚替えが効いたのか、徐々にボールを持つ時間が増えていく。山本を中心にボールを回してリズムを作ることで、前半よりも良い形でパトリックにボールを入れられるようになった。

 57分にはパトリックの落としから山本のミドル、60分にはウェリントンシウバ、パトリックと連続してシュートを放つなどG大阪も少しずつ札幌ゴールに近づいてくる。

 63分、ここで札幌はトゥチッチを下げてドドを投入。前半の勢いを取り戻そうと試みる。

 しかし64分、宇佐美のFKからパトリックがヘディングでボールをゴールに流し込みついに得点に成功。流れを変えたい札幌に対し得点という右ストレートを打ち込んだ。だがいくら「3-0は危険なスコア」と言われる札幌にもこの時間で1点返したぐらいでは与えられるダメージは少なかった。

 両チームともさすがにこの時間になるとインテンシティが落ちてくる。お互いに攻めはするものの、得点までには至らなかった。

 試合は終盤。札幌は77分に金子と小柏を柳とジェイに、G大阪は78分に井手口と宇佐美を倉田と矢島に交代。札幌は守備に、G大阪はより攻撃に力を入れる。

 82分にはゴール中央から髙尾、84分には塚本がPA右前からシュートを放つなど札幌ゴールを脅かしていく。
しかし最後にゴールを決めたのは、ガンバ大阪ではなく、北海道コンサドーレ札幌だった。

 87分、駒井の縦に送るボールにドドが抜け出す。これに対処しようと東口が飛び出るも判断を誤り、先にドドにボールを触られてしまう。そのドドに無人のゴールにシュートを打たれ、札幌がまさかの5点目を奪った。

 札幌はキックオフのタイミングで駒井と青木を下げ守備力に長けた岡村とボールを落ち着かせることができる小野を投入。試合を完全に締めに入る。

 小野がJ1最年長得点記録を更新するかと思わせるシュートを放つも、これ以上点が決まることはなくゲームセット。札幌は久々の大量得点で勝ち点3を獲得し、石水最高顧問に捧げる1勝をものにすることができた。

覚醒 駒井善成

 この試合のMOMは誰に聞いても駒井善成と答えるだろう。1点目から5点目の全得点に絡み、チームのエンジンとしてこれ以上ない活躍を見せた。

 まずなにより攻撃が素晴らしかった。ここ数試合では高い位置にポジショニングすることが増え、その攻撃力を遺憾なく発揮している。ドリブルにスルーパス、逆サイドへのサイドチェンジのようなオンザボールのプレーだけでなく、オフザボールでもセレッソ戦(A)のアシストシーンの抜け出しやこの試合の3点目のスルーのようなチームを活性化させるプレーが増加。攻撃のエンジンとして、これ以上ない働きも見せている。

 守備においてはピッチを広範囲に走り回り、ボール奪取やセカンドボールの回収に一役買い、札幌の攻撃を継続させる。オールコートマンツーマンもサボることなくプレスをかけ続け、チームに守備の勢いを与え続けた。

 今の駒井は攻守に走り回り効果的なプレーを続ける札幌にとって理想的なボランチとして覚醒していると言っていいだろう。チームを勢いづけるそのプレーに今後も目を離せない。

決めきれなかった決定機を忘れない

    「決定機さえ決め切れれば勝てる」

ノノさんやミシャ、選手にサポーターとコンサドーレに関わる全ての人が胸に抱いていた思いを爆発させる試合になった。数多くのチャンスを決め切り5得点を奪う大1勝。チームとしてこれ以上ない形の勝利だった。

 だが、大差で勝利したこの試合でも、決定機をものにできなかったシーンがあったことを忘れてはならない。特に12分のシーンは小柏が東口をかわしたあとにシュートを打てていれば確実にゴールだったはずだ。17分のシーンもトゥチッチ、こぼれ球を拾った小柏のどちらかが決め切らなければならなかった。そういったシーンをより取りこぼさないようにしなければならない。

 このG大阪戦や29節の神戸戦は内容としては良いサッカーが出来ていた。しかしこう言っては相手に失礼だが、それと反比例して相手のクオリティはあまり高くなかった。それを分かっていなければならない。例えばJ1トップクラスの強固な守備を誇る名古屋グランパスや前節全てにおいて抑え込まれた広島相手にこの2試合と同じことができるだろうか。私の答えはNoである。これらのような高い質を誇る相手にも、自分たちのサッカーで多くのチャンスを作り続け、そしてゴールを奪わなければ試合には勝てない。特にこのような相手にはよりワンチャンスをしっかりと決め切る力が必要になる。

 この試合のようにどんな試合も自分たちの理想とするサッカーが出来るとは限らない。そのためには良かったところばかりではなく、悪かったところ、課題になりそうなところにも目を向け、よりクオリティアップに励む必要がある。それが出来れば、札幌も上位争い、そしてタイトルを獲得できるチームに一歩近づけるはずだ。この札幌というチームの新たなる成長に期待し続けていきたい。

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