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「足りないもの」J1第30節 北海道コンサドーレ札幌対サンフレッチェ広島 【レビュー】

スタメン

北海道コンサドーレ札幌

ベンチメンバー 
GK 中野 DF 岡村 柳 中村 MF 小野 FW ドド トゥチッチ

・前節のメンバーからジェイが外れ、怪我から復帰した
 小柏がメンバー入り
・スタメンは小柏以外前節から変わりなし

サンフレッチェ広島

ベンチメンバー
GK 大迫 DF 今津 MF 森島 エゼキエウ 松本 茶島 浅野

・前節からスタメンを四人変更
・前節スタメンの柏はベンチ外
・ジュニオールサントスは8月の浦和戦以来のスタメン

スタッツ

試合レポート

 結論から言えば、今日の札幌の惨敗であった。広島にいいようにやられ、褒めるところのない試合だった。

 キックオフ早々試合が動く。1分に荒野のミスからボールが青山に渡り、ドウグラスヴィエイラへのスルーパスが通る。そのドウグラスが高嶺と宮澤の間を突き抜けシュートを放った。しかしこのシュートは菅野に弾かれCKに。そのCK、柴崎の入れたボールはDFに弾かれるもそれに反応したドウグラスヴィエイラがミドルシュートを放つ。これも高嶺に弾かれるが、そのこぼれ球に反応した佐々木がボールをゴールに押し込み、広島が先制点を奪った。

 札幌としては手痛い失点。先制された試合では悉く点が取れず勝てない札幌には、この展開は非常に厳しい。

 こうなれば攻めに行くしかないとばかりに、攻撃を仕掛けようとする札幌だが、広島の見事な5バックの前にいつもの攻撃力を発揮することができない。4バックに対しては数的優位である5トップだが、5バックには同数で対応されてしまう。ビルドアップで相手を動かし、スペースを作ることも出来ず、相手を崩すことが出来ないため、いつも通り外からクロスを上げるものの、1トップは身長のない小柏である上にPAに人が入ってこないためクロスからも点が取れない。攻撃に関してはボールは持たせてもらえるものの、完全に抑え込まれてしまった。守備に関してもマンツーマンの強度がなく、いつもより出足が遅い。撤退守備は今に始まったことではないのだが、突っ立ってるだけの人海戦術で相手を防ぐことは出来ず、簡単にチャンスを作らせてしまう。

 22分に金子、40分に駒井が惜しいシュートを放つも、それ以外はほとんど何もさせてもらえず前半終了。イニエスタにJリーグで一番面白いと言わしめた札幌の攻撃的サッカーを完全に封じ込まれた。

 後半に入ると同時に、札幌は荒野を下げてドドを投入。ドドのパワーによる打開を試みる。ドドが1トップに入り、小柏をシャドーに移した。

 46分に早速ドドが競り合いからボールを収め、PAに猪突猛進ドリブルを仕掛ける。ボールは野上にクリアされ、その野上と衝突しファールを取られてしまうがそれまでの札幌に欠けていた強引なプレーを見せてくれた。

 50分にはドドが針の穴を通すようなスルーパスをDFの裏に送り、それに反応した金子がGK林を剥がしゴールネットを揺らす。ついに札幌にもゴールが!!と思ったものの、金子がオフサイドを取られてしまいゴールとはならなかった。

 広島は54分にジュニオールサントスに代えて森島、札幌は70分に青木に代えてミラントゥチッチを投入。お互いに多少攻撃のクオリティは上がったが、大きな変化はなし。しかしペースは少しずつ広島側に偏る。76分にはドウグラスヴィエイラがクロスバー直撃のボレーシュートを放つ。するとその直後の78分、札幌PA内でドウグラスヴィエイラが菅と接触し倒れる。このプレーがVARによりファールとされ札幌は広島にPKを与えてしまう。このPKをドウグラスヴィエイラがしっかりと決め、広島は83分という時間にダメ押しの追加点を叩き込んだ。

 これにより後がなくなった札幌だが、もうこれ以上攻撃のカードは残されておらず、広島が93分に東を茶島、ドウグラスヴィエイラを浅野に代える以外に大きな動きは起きずゲームセット。2-0という結果ではあったが、札幌は全てに置いて後手に回ってしまい、広島になす術もなく完封負けした。

作れないスペースとチャンス

 この試合に限らずだが、札幌は選手のために効果的なスペースを作り出すことが出来ていないように見える。

 ビルドアップで相手陣地にまでボールを運ぶことはできるものの、その過程において味方が使うスペースを作り出すことは出来ていない。それが出来ずスペースのない状態でワンタッチプレーやドリブルを仕掛けても、スペースがないのだから相手にすぐに対応されてしまう。

 マンチェスターシティの試合を見てほしい。彼らはただボールを回してドリブルを仕掛けているのではない。ビルドアップは相手が食いついてくるのを確認してからボールを回し、徐々に徐々に相手にズレを作っていくことを徹底している。さらにスペースが出来た時はDFがボールを運んで相手を誘き出し、さらなるズレを作る。ポジショニングもライン間や選手間に立ち、相手の嫌がるポジションを取り続けている。札幌もこういったことを大切にしてビルドアップしていく必要があるはずだ。

 マンチェスターシティなどのポゼッションサッカーを志向するチームがそうであるように、ビルドアップから相手を動かし、自分たちが使いたいスペースを生み出していかなければならない。そのためには選手1人1人のポジショニングとオフザボールの動きがより重要になる。これはとても難しいことだが、これが出来る様になれば札幌にとって効果的なスペースが作れる様になるはずだ。

 そしてこのスペースを作れるようになれば、チャンスもより作りやすくなる。スペースがあるということは相手DFの対応がその分遅れるということ。そうすればワンタッチプレーにドリブル、クロスもより効果的に行えるようになるはずだ。このチャンスメイクはC大阪戦や神戸戦がそうだったようにある程度は高いレベルで行うことが出来ている。オフザボールやポジショニングの質、そして決定力を高めることが出来れば、札幌の攻撃的サッカーを完成に近づけることが出来るかもしれない。

覚醒の時が近づくドウグラスオリヴェイラ

 この試合唯一と言ってもいい収穫であったのが、このドウグラスオリヴェイラ(以下ドド)のプレーだ。

 札幌の前線の欠けていたフィジカル、そして積極性を兼ね備えた彼はこの試合で数多くの素晴らしいプレーを見せた。ゴールを積極的に向かうドリブル、金子選手に出した素晴らしいスルーパス、守備をサボらない献身性。それに加え、以前よりもしなやかな体の使い方ができるようになり、苦手としていたヘディング能力も向上。チーム内の序列を上げる大きな成長を遂げている。

 今の札幌にとって決定力は大きな課題。強引にでもゴールを奪い取るパワーがこのチームには必要になる。もしドドが決定力を身につければ、チームにとって間違いなく大きな武器となるはずだ。既にゴールに向かう積極的と強引さは持ち合わせている。彼の成長がチームを救う可能性は十二分にある。

 ミシャの考え方までも変えてしまった努力家だ。一つここは彼の力がこのチームをさらに上に導いてくれると信じてみようと思う。残り8試合、彼が覚醒し、チームに勝利をもたらす姿が見れるのを楽しみにしていたい。

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