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確率2%のとらえ方 妊娠③

 妊娠初期に、頸部リンパ管腫(システィクヒグローマ)と診断を受け絶望している私とポジィティブな夫の話です

・お腹の赤ちゃんが、、何か違う生き物に

・検査を受けてみようか?受けて障害が分かったらどうする?

・「何ごともなく元気に産まれてこれるのは確立は2%です」

 私が病院にいる間も、大泣きしながらの帰り道も、夫からは、心配して何度もメールや連絡が来ていました。

「赤ちゃん、頸部リンパ管腫やった。助からないんやって」と手短に電話で報告出来たのは、病院からの帰り道でした。

「でも100%じゃないんだよね?」
「そんな、全部が終わったみたいに、落ち込まないでよ」        
「俺は、なんとなくこの子はスゴク強い気がする」          
「そんな、泣いたらお腹で頑張ってる赤ちゃんが可哀想だよ」等と

 先生から聞いた絶望的な説明を同じようにしても、夫は動じることがありません。そう、夫はポジィティブだったのです。そして、考えもしなかった、綺麗な前向きな言葉を並べるのです。

 私はと言うと、エコーの写真を見る度に「頸部リンパ管腫」と訳注が付いて母性看護学の教科書に、載っていそう、、、、お腹の中の可愛い赤ちゃんだったのが→急になにか違う名前を付けられた何か違う生き物になってしまっていました。

 染色体の検査をしても、分からない障害の確率もあるし、障害が分かってから産む産まないを果たして決める事が出来るのだろうか?

怖い、、、障害や病気の事を知る事も、この子を受け入れられなくて、産まないって選択をするのも、、

 長男を妊娠していた時に自分が感じていた、この子を守らないと、大切にしよう、愛おしいとは、完全に違う何かでした。 

「もし、障害があったらどうする?産む?」現実味が強い分、重い質問を夫に投げかけてみました。

「育てられなくない?どうやって育てるの?」夫の答えは、障害があったら産まないと言う事か、、、経済的な状況を考えると、納得の答えでした。私達の周りには、障害者と言われる人や、そういう子供を育てている人もいなかったから、検討をつけて想像する事すら出来なかったのです。

 普通の子供の子育てでも、ヒーヒー言って喧嘩ばっかりの私達が、どうやって障害を抱えた子供を育てられるんだろうと、ぼんやりとそんな話をしていました。

 障害者の親になると言う事は、私達の中で特別な何者になるように考えていたからです。

 検査をする事に対して怖さはあったのですが、知る事が出来る情報があるなら、やっぱり知りたい。、、、怖い、でも、知りたくないけど知られずにいられない。

結局、翌日に夫婦揃って県立病院に行く事になりました。

 担当の先生は、30代くらいショートカットの女医さんで、高校では吹奏楽をやってそうな眼鏡をかけていました。先生からの説明は、前院で受けた頸部リンパ管腫(システィクヒグローマ)内容とほぼ同じでした。

ここから、夫の知られざる一面を知る事になります。夫は、どんな酷い事を言われても、めげる事なく先生に質問を何度もぶつけます。

 心疾患ってなんですか?心臓移植、手術とかしたら、元気になるんでしょ→この場合の心疾患は、先天的に(産まれながら)重度心臓の奇形や重篤なな問題がある事が多いです。心臓壁に穴が空いてるとかの簡単なものである場合は、治すことが出来るものもあります。ですが、染色体異常の場合や、治らない心臓の奇形や生きて産まれて来れない場合も多いです。

 母体は、大丈夫なんですか?何か影響は受けないんですか?→普通の妊娠と変わらないですが、障害や病気があった場合、羊水過多と言って、赤ちゃんが羊水を飲み込めず、羊水が多くなりすぎる事があって入院しないといけない場合もあります。どんな出産でも、母体にはリスクはありますから。今の時点で、母体のリスクが特別に高いわけではありません。

 流産になる可能性が高いと言う事、障害、心臓の奇形の話、かなりシビアな説明ばかりが続きました。夫は小学校2年の子供が先生に質問するみたいに、真っ直ぐに思った事を何でも質問します。

「何にもなくて、元気に産まれてくる確率だってあるんですよね?」

「いや、だから障害、病気の確立が高いって、、、、」私が、夫を諭そうとしていると、真面目な顔をした先生は

「う~~ん。2%くらいですね」と爽やかそうに答えたのです。

 かなり、厳しいと言う事は分かっていたけど、2%と言う数字を突きつけられ、心臓を刺された様にドキリとする衝撃を受けていました。衝撃のあまり、諭す事すら出来なくなっていると

 となりにいる夫は、

「そうか、元気に産まれる事もあるんですね。良かった」「普通に元気な子供が産まれるかもしれないって事ですものね」、、「まだ、障害って事は、分からないって事か、、、」夫の発言に、耳がどうにかなってしまいました。

「いや、いや、何言ってんの。2だよ。2って事は、ゼロに限りなく近い2って事。もう、無理って事やん」と私が言うと

「えっ、2あるって事だよね。元気で病気も障害もなく、産まれてくる可能性もあるんだから、無理って事じゃないよね」 関西人の私とポジティブ王の夫。

 ポジ王の眼を冷まさせようと、私の関西弁の突っ込みは、激しさを増し、「なんでやねん」「いや、ちゃうやろ」と右手で夫の肩に何度も突っ込みます。「なんでやねん」のコテコテで何度も突っ込む事は、ひさのかたぶりでした。

 その後も、ポジ王はへこたれません。「治す事は、出来ないんですか?」「IPS細胞とかも進んでますよね?」と質問は続きます。「治らんから、障害なんやて~」「IPS細胞、何年先の話なんでしょうね」「もう、そんな質問するのいい加減にしときぃ」と夫婦漫才のような会話は続きます。

 真剣な眼差しだった、先生の眼鏡の奥は、ニコニコと笑顔になっていました。シビアな内容なのに、どんな事を言われても前向きな夫と必死に突っ込む妻。なぜか、とても穏やかな雰囲気です。

 先生があまりに丁寧に答えてくれる事に、罪悪感を覚え、突っ込みは私の仕事と使命感を感じ、最後までやりきりました。夫も、激しく突っ込む妻と厳しい現状にも負けず、へこたれる事なくポジィティブな気持ちを貫いてくれました。

*追記 先行き不安な胸を刺すような話だったので、1人では打ちひしがれて海に漂っていたのではないかと思います。赤ちゃんを信じて前向きな言葉をかけてくれる夫に心底救われた一日でした。

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