見出し画像

“見渡す限り一面が作品世界に” 美術展はますます会場に足を運びたくなる形に? 【美術館やアートの楽しみ方】 #11

もう何百年ものあいだ、美術鑑賞は、美術館の中に並べて飾られた過去の名画を観客が歩きながら鑑賞する方法をとってきた。
しかし、21世期のテクノロジー進化によってこの鑑賞方法に変化が訪れそうだ。「ますます会場に足を運ばなくてすむ方向」と「ますます会場に足を運びたくなる方向」とに進みつつある。その最新事例をまとめる。

1、“自宅に居ながら”世界中の美術鑑賞

Googleが社是に掲げる使命は「世界中の情報に、世界中の人々がアクセスできるように」である。(To organize the world's information and make it universally accessible and useful.)
その使命に則り、Googleは世界中の美術作品や美術館を日に日にデータアーカイブ化し、VR方式でも無料公開している。

実際の美術館では近づけない距離感でズームして絵を鑑賞したり、(クイズ、これは何でしょう↓)

画像2

(ゴッホのこの絵でした↓)

画像2

他にも例えば、VRの世界でヴェルサイユ宮殿の見学を無料公開していたりする。

これらの進化は、「自宅に居ても世界中の美術館のアートを鑑賞できる」ようになるテクノロジーの活用といえる。

2、“並んででも見たい”チームラボの美術館

このままテクノロジーが進化し続けていくと、美術館には出向く理由はなくなってしまうのだろうか?
そんなことはない。逆に、「展示会場へ行きたくさせる」ような先ほどとは逆行する動きもある。

たとえば、ここ数年、かなりの観客動員数を誇った「チームラボの展覧会」。お台場の専門の展覧会の他、水族館とのコラボレーションしたアートイベントも大人気だった。

これが美術館なの?と言われるかもしれないが、仕掛け人であるチームラボ の猪子社長は、“アートをやっている”と明確に公言している。

─チームラボの創業当初から、アートをやりたいと猪子さんは考えていたのでしょうか

猪子:サイエンスかアートがやりたかったんだね。
(中略)対してアートは世界の見え方を変える営み。アートの方も良く分からないものではあるんだけども、僕はこっちの方が知りたくなったんだ。人間は美によって動くと思うんだよね。美は合意が取りにくいから、合意を取らなければならない組織は美ではなく論理で動く。しかし個人については、あんまり論理で動いてることってなくて、個人の美意識に基づいて行動を決定する場合の方が、圧倒的に多いわけ。


3、“会場に行きたくなる”美術展とは

2020年には、「過去の美術品の展示方法」も、飾るだけではない最新テクノロジーを駆使した企画も登場する。

東京・天王洲の寺田倉庫で開催される美術展では、見渡す限り一面が作品世界に。
モネやルノワールなど19世期フランスの印象派の有名作品を、プロジェクションマッピングを使い壁や床や天井など空間内全体に投影。鑑賞者が絵画のなかに足を踏み入れ、自らが画家自身になったような視覚体験を、音楽とともに提供するという。 

画像3

日本の芸術作品のほうでは、
『巨大映像で迫る 北斎・広重・宗達・光琳 〜浮世絵と金屏風の世界〜』という美術展が大手町ワンで催される。
こちらも超巨大な45メートルのビジョンを使った展示方法で、大迫力と没入感を狙っている。

画像4


これらの例は、「会場に行きたくなる」ためにテクノロジーを利用している。“今まで見たこのない美しさを実際に目にしたい”と思う感情は、人間の根源的な欲求だ。そこに加えて、エンタメ要素も高まっていて、ワクワクドキドキさせられそうだ。

最新テクノロジーの使い方によって、「ますます会場に足を運ばなくてすむ方向」と「ますます会場に足を運びたくなる方向」の両面が進行している状況を、当記事では対比してとりあげた。
いろいろ試しながら、自分にあったアート体験を見極められると良いだろう。

(おわり)




コツコツ書き続けるので、サポートいただけたらがんばれます。