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事業再生の主な課題として連帯保証人問題があります。
ここに配慮ができない人間は事業再生のプロではないと断言できます。
経営者の意思決定ができない原因の一つになっている場合が多いのです。

その中でも、更に辛い第三者保証人問題に関連したお話しです。

私は連帯保証が大嫌いです。
事業再生の世界で悲惨な例をたくさん見ました。

誰のためにもならない(金融機関の為にもならない)と信じています。第三者保証人は多くの場合において、人質でしかなく、万一の時は奴隷と変わりません。そんなお話し。長文ですので必要な方へ。

1.第三者連帯保証問題は、主債務者の連帯保証問題とは全く別の大問題

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成人した際に親に連帯保証人にだけはなるなよと、
説明も無く言われたことのある人も多いと思います。

親としてとても大事な事を伝えてくれています。
理解できなかったとしても、なってはいけないのが連帯保証人です。

経営者が自分の会社のためになるのであれば、
本人に連帯保証人となる利益があります。

今日お伝えしたいのは、
絶対なってはいけない害悪しかない第三者連帯保証人の問題です。

そもそも連帯保証の意味をわからずに
連帯保証をする人間が多いです。

細かな法律の説明は弁護士の先生に任せるとして、
鳥倉のご説明では実務的、体感的なメッセージにしたいと思います。

『分別の利益』
『検索の抗弁権』
『催告の抗弁権』がいずれもなく、
主債務者と同じ責任を負う。

といわれ、この法律用語を正確に理解して
連帯保証人になっている人はどれだけいるでしょうか。

主債務者や金融機関に言われて、
「なんとなく」「雰囲気で」「断り難い」
「お世話になっている人に頼まれて」
「今の自分があるのもこの人のおかげだ」
「連帯保証をすればその会社で役員になれる」
「相互に保証人になりあう約束をした」
「断れば人生が終わると言われた」
「断れば会社が潰れると言われた」
「親族にお願いされた」
「親友にお願いされた」
「夫にお願いされた」等々、
様々に理由はあるかもしれません。

それでもなってはいけないのが、
第三者連帯保証人です。(あなたが主債務者じゃないケース)

あなたが第三者保証人となった結果、
主債務者は融資を受けられます。

一方で第三者保証人には1円ももらえません。
第三者保証人が得られる利益とは、
「御礼を言われた」
「手土産をもらった」
「飲みに連れてってもらった」
などよく聞く話ですが、せいぜいそんなものです。

「主債務者が得た利益(受けられた融資)」に比べて
「第三者保証人が被ったリスク」は、
あまりにも片務的
で全くもって利益に適ったものでもなく、
WIN-WINの欠片もなく、経済合理性も見合ったものではないのです。

その為、違法状態にあり、連帯保証契約自体が無効ではないかという議論もありました。


2.連帯保証人を巡る近年の変化2020年4月民法改正

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そのような議論もあり、2020年4月に民法改正がありました。
久しぶりの大改正と言われ、連帯保証人に関する点にも変更が行われました。

連帯保証により人生が様変わりする被害を受けた人が多すぎるためです。

[A.連帯保証無効となるルール]
1.極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効
2.個人が保証人となる根保証契約は、
 1.保証人の破産
 2.債務者又は保証人の死亡などの特別の事情により保証が終了

[B.公証人による確認と公正証書]
1.公証人による保証意思確認手続きの新設
 1.公証役場に行く
 →2.保証意思の確認(公証人による確認・説明)
 →3.保証意思宣明公正証書の作成

[C.情報提供義務の新設]
1.保証人になることを主債務者が依頼する際の情報提供義務
 ①主債務者の財産や収支の状況
 ②主債務者以外の債務の金額や履行状況等に関する情報
2.主債務者の履行状況に関する情報提供義務(法人も個人も)
3.主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(2ヶ月以内)

以上のA・B・Cの3点が2020年に行われた法改正です。

簡単に意訳してまとめると、
「連帯保証の被害を防ぐ」
「連帯保証による被害の可能性を理解させる」
「無知による連帯保証の被害を防ぎ、保証人が何も知らない状態を避ける」

とも言える内容であり、
いかに連帯保証契約が危険かこの法改正でも分かります。

改正後も、連帯保証という制度自体を
無くせという批判は続いています。

経営者本人が連帯保証するケースは仕方ないとの考えもまだ可能ですが、
第三者連帯保証人は害悪しかないともいえ、
近年は金融機関も原則として新規には取らない運用をしています。

連帯保証が法律で無効や禁止となったり、
既に連帯保証人を取っている多くの契約への批判を避けるためとも言えます。

3.同族会社でなんとなく連帯保証人になった、妻と子ども二人。

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日本の中小零細企業では家族経営が行われることが多くあります。

法人税法上の定義は、
上位3株主の持株比率を合わせて50%を越える場合
同族会社と定義されます。

同族経営と家族経営は言葉が定義と関係無く使われるケースも多いです。

税法上の定義とは別に、
従業員が家族だけ、
取締役が家族だけ、
といったケースも広義の意味合いでは
家族経営、同族経営と表現されます。

中には、
「よく分からないが家族の会社の取締役になっている。」
名ばかりの取締役に就任している。」
株式の相続を受けている」
という人も多いです。

そのままの流れで知らないままに同族経営者になっている人、
無自覚なままに、同族の会社の経営に関与している人もいます。

結果として、
経営者である父親や、取引金融機関から、
「将来のためにも」
「事業承継の為にも」
「銀行が後継者と認めるためにも」
など、分かったような分からないような
説明で連帯保証人になる人もいるのです。
(2020年4月以降はいなくなる)

前置きが長くなりましたが、諸悪の根源とも言える連帯保証に関連し、
地方の小さな倉庫業の会社で起こったお話しをお伝えします。

父親は倉庫業の経営者で連帯保証人でした、
妻と息子2名の3人は父親と金融機関に言われ、
なんとなく連帯保証人になった第三者です。
(会社に勤務しておらず、役員でも株主でもないケース)

4.手遅れの破産案件、突然災難が降りかかった第三者連帯保証人は何も知らない。

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鳥倉へのご相談は商工会議所経由でした。

専門家への無料相談会に来られたご家族だそうですが、
当日は事業再生の専門家はおらず、
事業再生でも込み入った話過ぎるので、
鳥倉さんに急ぎで対応して欲しい」との打診でした。

連絡を受けた翌日に商工会議所でお会いすることとなりました。

ご相談のタイミングが遅く、もう少し早く来てくれていたらと思うことは良くありますが、経営者である父親は既に事業継続を諦め、破産を弁護士に依頼した後でした。そして、その家族の第三者保証人である妻と長男から相談を受けるケースでした。

妻と長男は会社の苦境は知っており、廃業も知っていたが、連帯保証人である自分たちはどうなるか知りませんでした。ある日突然、そんな二人に金融機関からサービサーへの債権譲渡通知が来ました。妻と長男はそれぞれに内容証明で1億5600万円を支払えとの内容を受け取ったのです。

本当に名前も知らないサービサーに支払わなくてはならないのかとのご相談でした。債権譲渡通知の意味もわかりませんし、サービサーという存在もまったくわかりません。騙されているのではないかと思ったそうです。

知識や経験の無い中で、妻と息子は恐怖を感じていました。私達は、一生奴隷のような人生を送って、生涯を掛けて1億5600万円を支払わなくてはならないのか。遅延損害金だけでも年間2277万円ほどあり、元金は全く減らずどうにもならないと悲嘆に暮れていました。

会社や父親と共に家族全員破産しなくてはならないのか・・・。
若く未来のある長男と次男にも破産者の烙印が押されてしまう。

自分には到底払いようもない債務の請求を内容証明で受けるという、
この経験は生きた心地のしないものです。

5.サービサーとのスピード和解。家出した次男の不幸。

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今回は連帯保証の恐ろしさ、第三者保証人の被害実態がメインテーマですので、サービサーに関する詳細はまた別にお届けします。サービサーとの和解金の目線や話し合いの手法を鳥倉がお教えし、電話とFAXにて僅か1週間で和解合意が図れました。

契約当日も不安との事でしたので弁護士を紹介、同席をお願いし、事前の協議内容と同じ和解契約書を確認し、捺印、支払をその場で完了させました。

お膳立ては終わっていた案件でしたので(契約当事者双方が合意方針で契約書も固まっていた)弁護士の先生には経済的利益ではなく、法律相談として契約書のチェックとして、案件をご理解頂き日当で仕事を受けて頂きました。

和解金額は1億5600万円とは、かけ離れた妻のへそくり!で解決しました。へそくりとしては少し高額ですが300万円で解決できました。(本当に妻がへそくりしていました。)

今回は1億5600万円が第三者連帯保証人である、妻・長男・次男の3名に同時に請求されました。(分別の利益がない)

しかし、本件の和解は300万円で3名ともに一括同時和解としたい旨を、サービサーへ説明して、幸いサービサーの理解が得られました。(長男・次男は実質無資力のため)

最後の最後で1点鳥倉でもどうしようもない問題が生じてしまいました。

次男が父親との確執から家出をしてしまい、行方不明、電話も住所も分からない状態でした。確かに、ご相談当初から妻と長男の2名とお話ししていました。結局は契約当事者が不在では次男との和解契約が難しいとなり、
妻と長男の2名に限定せざる終えなくなりました。

スピード解決を優先する必要があるため2名に限定し契約となりました。
(サービサーの判断はサービサーの都合で時々に変わる為。本来同じ300万で3名が救えた。)

サービサーの方には、
第三者保証人である事、
債権譲渡通知を受けてから即時に誠実に話し合いを行ったこと、
今すぐ現金で支払える上限の金額を明示したこと

等を評価して頂きました。

もちろん、サービサー側も第三者保証人の財産状況、破産された場合には、回収が困難になること、債権譲渡を受けた金融機関への配慮、等もあり合理的に決断したものと思います。(第三者保証人へは過酷な取立を行わないよう配慮を要請している場合も)

天国と地獄をわずか一週間で経験したと、ご相談者には感謝をお伝え頂きました。鳥倉は事業再生において家族の結束をいつもお願いしますが、このような経験もあってのことです。

行方不明の次男の問題も解決可能と思いますが、家族の現状を知らぬまま、
自分の負っている債務もそのまま、と考えるとお気の毒です。人的担保としての第三者連帯保証の問題の辛さを改めて感じます。一家離散の原因になると言うことです。

第三者連帯保証人を人的担保として、経済能力の有無にかかわらず、心理的束縛のため人質のようにとるのは、商道徳に悖る行為と言えると思います。(鳥倉は最大連帯保証人が6人の案件を担当したことがあります)

本件は、事業経営に関与せず直接の利益は得ていなかった、妻・長男・次男の3名が第三者保証人として路頭に迷うところを、再生した案件だと思っています。


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