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罰ゲームは静かに

二人だけの放課後
生成りのカーテンを大きく揺らして
夏の風が教室の空気をまぜる。

床に伸びた友達のまっすぐな脚。
彼女は同性のわたしににっこり微笑んで
乱れたスカートの裾を直す。

見下ろすわたしはとまどいながら
一体、どんな顔をしているのだろう。

一日中、
熱と湿気で蒸された
プラスティックタイルの床は
仰向けで横たわる彼女の背中の
重みを受け止めて
その白い制服を汚し続けている。

欲望を伴わないキスを彼女に与えるのは
大人の男に心を奪われた
わたしに科せられた罰ゲームなのだ。

並んだ机と窓の間の細い通路。

廊下からの完全な死角に
しかたなくよつんばいになって
彼女の上に覆いかぶさる。

長い髪がさっと落ちて
彼女とわたしの視界を狭くした。

まだ遠い。

彼女のひざを割り
さらに顔を近づけていく。

そっと触れる唇の奥の舌先の触れる
初めてという彼女の体に
ぎゅっと力が入れば
残酷なあのひとの気持ちになって

指先で触れる汗をなぞる
あのひとのやりかたの

採点する静かなまなざしで
わたしにも彼女にも及第点をとらせることに
次第に夢中になっていく。





P.S. 10代の君へ 恋せよ、乙女


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