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[読書記録]光のとこにいてね(一穂ミチ)

本屋大賞の話題で何度も何度もこの本のタイトルを見てきていたので、

「そこの、光のとこにいてね」
その時、ちょうど私の立っているあたりだけぽっかりと雲が晴れ、小さな陽だまりができていた。私は「うん」と答えた。

「光のとこにいてね」一穂ミチより

と、この部分を序盤で見た時にドキッとしました。闇と闇の間の、ぽっかりと雲が晴れた「光のとこ」。

「光のとこにいてほしい」、というお互いの切実な願いと、まっすぐな2人の気持ちこそ光なのだということに胸がつぶれそうになりました。

幼少期から真っ直ぐに愛を欲して、成長して寄り添う存在を手に入れてもなお、光と等しい愛を求め続けるお互いの気持ち。ずっと読み終わるまで全く行く先が読めず、どうなるんだろう、と手に汗握りました。

後半、私の住む場所のわりと近くに舞台が移ったので、想像はより形をもって私の中にありました。出てくる地名も何度も足を運んできている場所で、私にとっても心に残る特別なお話になりました(土砂降りも台風も通行止めも毎年ある笑)。
これからあの場所に足を運ぶたび、2人の光にきっと胸を打たれるのだと思います。


果遠ちゃんは、馬鹿だ。こんなちゃちな道具が何を守ってくれるっていうの。役に立たないことを知ってるくせに持ち続けて、娘にもあげないなんて。果遠ちゃんの愚かな一途さはいつだって私の胸を深々と射抜き、ほかの何でも埋められなくしてしまう。

「光のとこにいてね」一穂ミチより


合成だった図書館の写真も、滑らかではないカノンも、夕立も虹も、とても、とても美しい。このお話独特の、プラトニックな美しさで2人をはじめ全てが満たされている、と思いました。
過酷だと思われる状況も、2人はお互いの光をもって、ずっと美しくいられたのだな、と。


「光のとこにいてね」


結珠ちゃんに出会うまで、わたしはものを考えずにぼんやり生きていた。(中略)命ある鮮やかな存在はきみどりだけだった。でもあの日、地上から両手を伸ばしてくれた結珠ちゃんに出会って、わたしの人生が本当に始まった。色や音や手触りを感じ、鉄棒の金くささや光の暖かさをいとおしく思えた。一緒に過ごす一秒は、それまでの一年より価値があった。

「光のとこにいてね」一穂ミチより



漢字は違うけど私の名前も出てくるので「うわお…!」と思いました。

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