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[読書記録]あなたはここにいなくとも(町田そのこ) / 残像

どれもとてもあたたかく胸にじーんとするお話五篇でした。

「おつやのよるに」
お祖母さんのあたたかさと頭のキレの良さ、大切なことを教えてくれる目に見えない温もり。すべて自分できっちり解決したことを、きっと見届けたかな、そうだといいな、と思いました。よく見て自分がどうすべきか、そんな勘を大切にしたい。

「ばばあのマーチ」
苦手な男の人がはじめて出てきました。おお…。南さんがいなかったら、と思うとちょっとゾッとしますが、南さんがいてくれたのでとても良かったです。「ばばあ」もまた傷ついた人で、傷ついた人たちの弔いはずっと続くのだな。

「入道雲が生まれるころ」
切なかった。結局分からないことは多かったけど、藤江さんと萌子ちゃんと、それから、芽衣子ちゃんに、幸あれ…、と願う。

「もしかしたら形としては、いつか捨てる日が来るかもしれん。でも、ほんとうに捨てるってことはできん。ずっと大事にしたい、抱えて生きたいものってどうやっても捨てれんのよ。心の中で形を変えて、自分と折り合いをつけて存在していくだけ。…」

「あなたはここにいなくとも」
〜入道雲が生まれるころ〜 
町田そのこより

「くろい穴」
女の人の勘って、やっぱりほぼ当たるんだろうな。私が気のせいかな、考えすぎかな、と思ったりするいろいろなことも、どこかになにかがきっとあるのだろうな。そして「祈り」も「呪い」も届く人には届くのかもしれないな、そういうことが書いてあるのだな…、とちょっと背中がピンとなりました。

「先を生くひと」
とても、とても良かった。これこそが人が生きることだろうと思いました。悲しみも苦しみも喜びも受け入れて、毎日を過ごして、広げて、そしてしまう。時代の流れの中の、私達が生きるほんの短い時間、誰かに何かを残してもらったり、自分が渡したり。そうやって続いて行くのだな、と思いました。

「 (略) あなたたちは、可能性に溢れているのよ。恋も、友情も、夢も、何もかもがこれからなの。そして、どんなことだってできる。最初から諦めなければいけないことなんてない。絶望しないといけない障害なんてない。だから、何ひとつ、憂うことはない。後悔しないように、それだけを忘れなければいい。(略) きっといつか、何もかもを穏やかに眺められる日が来る。…」

「あなたはここにいなくとも」
〜先を生くひと〜 
町田そのこより

お話とお話の気持ちの切り替えがとても下手なので、短編集がどちらかというと苦手なのですが、町田そのこさんの短編、とても良かったです。
私が私の中のいろいろを穏やかに眺められる日はいつだろう。それは分からないけど、きっとそんな日が来るのかもしれないな、と思いました。

すてきに歳を重ねたい。


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