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ショートショート・おはなし

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ショートショート・短編・小説等まとめです。
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#短編小説の集い

『学生』 超ショートショート

Aの部屋にて A「もうダメだ、大学ではいつも一人、就活もなかなかうまくいかない。自分の将来も考えるだけで吐き気がするよ、はぁ」 テレビつけると夏休み明けの憂鬱の特集を、やっている。 テレビ「学校へは行かなくても良いんです。君の居場所はたくさんあるんだから。嫌だったら無理に行かなくていいんだよ。それでも全然生きていけるし君はまだ若いんだから大丈夫よ、大丈夫」 おばさんコメンテーターの優しい言葉にAは涙ぐんだ。 A「そうか…行かなくてもいいよね。もう単位なんてどうでもい

『一人で死ねよ』 ショートショート

ここは小学校3年4組の教室、5時間目の今日の最後の授業は『道徳』だ。もうすでにチャイムが鳴って生徒30人は全員が席について、机の上には国が指定した教科書が置かれている。少し遅れてガラガラとドアを開けて入ってきたのはこのクラスの担任の先生 町田京子先生だ。先生は美人で爽やかで、子どもたちから人気の先生だった。 先生「はい、それでは授業を始めます。早速皆さんまず教科書のちょうど真ん中あたりのページを開いてからそのまま上の部分を両手で持ちましょう」 子どもたちは訳が分からないまま

『ウルトラ告知』 ショートショート

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:ウルトラマン,女,スズメ 幹也は彼女の由美を行きつけの居酒屋に呼び出した。大切な話があったのだ。これは二人の未来のために絶対に話しておかなくてはならないことだった。 奥の席には先に幹也が座って由美を待っていた。こじんまりしたアットホームな店内はサラリーマンで賑わっている。由美は大切な話と聞いてドキドキしていたがまさかこんな場所で結婚の告白はないだろうと予想していた。だったら何なんだろう……。 由美「お

『呪いのnoteです』 ショートショート

▶ 男は「note」というアプリケーションを手に入れた。自分の文章を手軽にアップ出来るところが難しいことが苦手な男にはぴったりだった。 男がまだ中学生の頃の話だ。友達が一人もいなかった孤独な少年の趣味、それは小説を書くことだった。昼休みになると誰もいなくなった教室の隅で、カーテンの付いてない窓から射し込む強い日差しにもめげずいつでも一人で小説を書き続けていた。この時だけが少年にとって学校の中での唯一の幸せなひとときだった。女子が人の悪口を言ってる声も男子が校庭の影で誰か蹴

『同じような男』 ショートショート

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:財布,ガム,本 『同じような男』 男は家についてから図書館で借りた本を開いた、すると驚いた。最も重要なページにガムが付いているのである。ずっと読みたかった本なのにそれにガムが付いていて読めないなんてあまりにも酷すぎる運命だと男は一人嘆いた。 どうにか剥がしてやろうと手を伸ばすが気持ちが悪くて触れたもんじゃない。薄ピンク色のべったりと貼り付いたガム、ほのかに香るイチゴの香りがますます男の気分を悪くさせた。

ショートショート「焼け」

『焼け』 父と息子。二人は丘の上にある小さな公園から景色を見ている。 「ねぇお父さん、向こうの山の方を見てよ、夕焼けがすごい綺麗だね」  「ああそうだな、とても綺麗な朝焼けだ」 「夕焼けでしょ?」 「いや、あれは朝焼けだ」 「そんなの嘘だよ、僕は騙されない」 「騙すも何もそう決まったんだ」 「誰が決めたの?」 「国の絶対最高機関だよ、テレビのニュース見てないのか?」 「何それ、どういうこと?」 「さぁ詳しくはよく分からん、でも俺たちは何も考える必要はない

ショートショート「夜と男」

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:美人,山間,電灯  『夜と男』 コンクリートで舗装された山間の車道。深い森に囲まれた曲がりくねったその道は日中であればサイクリングをする奴らで賑わう。でも夜になれば、人の姿は無くなって辺りは一切の闇が包みこむ。 夜、俺はあてもなくこの山間の道を1人歩いていた。手に持った懐中電灯、豆電球の灯は淡く俺の足元をオレンジ色に照らしてその行く先をぼんやりと小さく浮かび上がらせる。試しに遠くを照らしてみてもその微

ショートショート「コメディアンK」

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:良い子,悪い子,普通の子 『コメディアンK』 今は21××年、コメディアンKはその昔ゴールデンタイムのTVショーで名を馳せ、数々の名番組を生み出してきたという…。しかしそれも過去のこと。現在では彼は子どもたちを苦しめた悪名高きコメディアンとして知られている。彼の出ている作品は現在どれも闇でしか購入できない国の文科省が定めた禁止映像作品に指定されている。 Kの一番の悪事は子供への単純化したレッテル張りで

ショートショート「あの夏に乾杯」

『あの夏に乾杯』 「あの夏に乾杯!」 学生時代の思い出話で盛り上がった私達はそう言って、家のテラスでビールを一気に飲み干した。 「ぷはぁ、男二人で飲む酒も悪くないなぁ。」と言って相棒の顔を見ると、なぜだか彼は青ざめていた。 「どうしたんだ?」 すると彼は私の目を見てはっきりとこういった「俺に与えられた任務を思い出した……」 そして彼は何かに操られるかのように部屋に戻りクローゼットの壁をハンマーで壊し始めた。 「おいおい、何やってるんだ。やっと手に入れたマイホームだろ

ショートショート「人影の町」

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:タクシー,うちわ,スマホ 『人影の町』​ 8月の中旬、連日この町は地獄のように熱くクーラーのついた車内を出ればモワッとした空気が包み込む、日差しは皮膚を焼くほどに強く熱い。 自動販売機でスポーツドリンク買って、私はすぐに車内へと駆け込んだ。 「あぁ暑い暑い、ちょっと出ただけでもうこの汗だ。クーラーが無きゃ死んじまうな。」 そんなことを言ってると車道の向こう側を近くの中学校の野球部が掛け声をかけながらジ

ショートショート「鳥の巣」

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:パソコン,スーツ,鳥 ​『鳥の巣』 時刻は深夜の1時。小さな一人部屋は薄暗くパソコンの眩しいブルーライトがひたすらデータをカチカチと打ち込む私をぼんやりと闇に浮かび上がらせている。 「110001001011101110100100110011101100101010110101」 なんだかよく分からない数字を無心に打ち続ける。しかし1つもミスは許されない。そんなことがあれば不具合が起こるのだ。集中

ショートショート『夢』

ルール:思いついた3ワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:仕事,遅刻,猫 「夢」 朝、目が覚めると自分は生まれながらの奴隷であるという気がした。 朝になると飯を食べなくてはならない。食パンを袋から出しトースターに入れて焼く、なんて単純で苦痛な作業なんだ。 飯を食ったら奴隷として仕事に行かなくてはならない、高速で動く四角い箱のような乗り物で他の奴隷と移動し何時間も何時間も労働する。そうすると報酬が貰える、そしてその報酬を使って食料品で働く奴隷から飯を買うのだ。

ショートショート「夏の青空」

ルール:思いついた3ワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:空,犬,カバン 『夏の青空』 夏の青空の下、柴犬1匹、俺一人。 テクテクとこの街を散歩していた。 この犬は不思議な犬で、背中はファスナーが付いていてまるでカバンのようになっている。信じられないと思うが、ファスナーを開けるとそこには空(そら)が広がっていてもう1つの太陽が眩しく光っている。 しばらく歩いていると女子高生が4人、こちらへ歩いて来た。 「すいませんいいですか?」と聞かれたので 「ああもちろん」

ショートショート「粗大ゴミ」

ルール:思いついた3ワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:扇風機,カーテン,玄関 『必要性』 ある朝の出勤時、玄関のドアを開けると、ドアが途中で何かにガタッとあたった、覗いてみるとそこには見知らぬ扇風機がおいてあった。それは自分のものではなかったので特に気にも止めずそのまま会社へ行った。 会社につくと自分のデスクの上にまた扇風機が置いてあったその扇風機も自分のもではないので下にどけてそのまま仕事を続けた。 家に帰るとリビングには扇風機が置いてある。これは自分の