自殺に失敗した話

死ぬならアルコール中毒だと思った。パッチテストをしたら腕が真っ赤になるくらい、私は酒に弱い。酒をがぶ飲みしたら、簡単に中毒になるのは明らかだった。コンビニでアルコール度数が一番高い酒を買い、誰もいない場所でいざ飲むことにした。ところが酒をがぶ飲みするのは想像以上に難しかった。というのも、私はビールさえがぶ飲みできなくていつもチビチビ飲んでいる。体が本能的にアルコールを恐れているのだと思う。しかしこの恐れを克服しないと死ぬことはできない。耐えきれない苦痛から逃れるためには1秒でも早く死にたい。決死の思いで酒を喉に流し込んだ。結果から言えば、この文章を書いていることからも明らかなように、私は生き残ってしまった。激しく嘔吐して、酒を体外に出してしまったせいである。嘔吐した酒と涙が池を作る床に倒れ込んで絶望した。死ぬのは簡単じゃない。ならば生きるしかないんだろう。首吊りも怖くて直前にやめたし、飛びおりれそうな断崖絶壁も近くになかった。死ぬことを切望していたのに反して、体はいうことを聞かなかった。あのとき死ななくてよかった、とはまだ思えない。それから数年後、結婚して最愛の子どもを授かった今も、希死念慮は私をとらえて離さない。いつか薬で病状が安定したら、希死念慮が消える日が来るんだろうか?想像もできない。

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