刺激的な緑
してやられた。正体は分からないが出会ってしまった。人間のにおい。カラスの声。あたたかい料理。東京が愛おしい。
昨日、代々木公園が最高と聞いて向かった。けれど私の家の周りの方が断然良かったのでショックだった。
カラスが水浴びする池を眺めて、スタバのチャイティーとクッキーを食べる。
カラスがこちらを見ながら首を傾げ、「カァ!」と鳴けば、私は恐れ慄きクッキーを落とす。
隣人が落ちたクッキーを食べようとする。おそらくこの地面は普通の地面より汚れている。3秒は経ってなかったが、こいつの消費期限はこの一瞬にして終わってしまった。隣人からクッキーを奪い袋に戻し、カバンにつっこんだ。
代々木公園は最高なはず。芸能人がピクニックしてる風景は世界一楽しいように見えた。てくてく歩くとドッグランに着いた。いろいろな犬種がいてポケモンみたい。ゴロゴロ転がってクンクン嗅いでダダダと走ってガブガブ水を飲んで。可愛い。ずっと見ていられた。ずっと見てると気持ち悪がられるかもしれない。でも、見ていたい。できれば触りたい。かわいい。もふもふしてる。こちらにきた。柵を超えて私の膝に乗ってはくれないか。仕方なしになでなでしてやる。おいで。おいで!かわいいいい!
しばらく見てたけど隣人が歩こうと言った。長い時間無言で見ていたので、気味悪がられる前に退散した方がいい気がしてとりあえず同意した。目的は、18:00に予約しているビストロまで、2時間程度の時間潰し。隣人にその時間をどのように過ごすかを託した。
見晴らしがいいと思って、と連れてこられたのは駐車場。を見渡せる草むら。開放的ではあったけど、駐車場を見渡す気分ではなかった。無言で却下し、私は歩き続けた。隣人はもう出ようと言った。代々木公園のいいところは以上ということか。そしてここは渋谷。歩けど歩けど坂ばかり。スタバは満員。優しい人がどう工夫しても刺激を求める者たちがそれを覆ってしまう。代々木公園は、刺激的な緑。
18:00ちょうどに予約していたビストロに入った。カウンターだけの狭い店内。小さな額縁にご飯ですよ。や色々なイラストや写真が飾られていた。奥の壁にはギター2本とベース。下にはアンプも。店主がどぉも。と挨拶してくれて、お目当てのマッシュルームサラダを出してくれた時、「気負わず食べてください」と言ってくれた。気負わず食べるにはスペシャルすぎるマッシュルームのサラダ。マッシュルームは生で、上にブラータとサラミ、カボスの皮が削られてかかっていた。マッシュルームって生で食べたことないよね。というかキノコを生で食べたことないよね。初めて食べる生マッシュルームはふわっとしててシャキッとしててクセが少なくて見た目が可愛い。美味しい。優しい。
次にパスタ。これは。具はにんじん、香りのある草がはいってた。にんじんからでた野菜の旨味、細い麺に絡まって美味しい。
次は鴨肉。スパイシーな香りのするレンズ豆たちの上にどんと乗っかった皮パリパリ、ミディアムレアの鴨さん。私は肉を食べているとしっかり感じる。自分の働いていたお店ではバルサミコ酢を煮詰めたソースでさっぱりとだったが、これはなんというかご飯が進みそうな味付け。綺麗にたいらげ、ごちそうさま。
デザートはいちじくの上に乗ったソルベと、チョコスフレ。
幸せいっぱい。
時間は有限。哀しいかなタイムオーバー。話は尽きないが帰らなきゃいけなかった。冷蔵庫には素敵な装飾。狭いキッチンだけれど、綺麗におさまった四角や丸。雑多に飾られているようで、ひとつひとつ物語がありそうなフィギアやイラスト。聞きたいことがありすぎた。
心が満ち満ちて、満ち満ち満ちた。
人間のいい匂いがした。
好きな人がまた増えた。
また会いたい。
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