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「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館」展

(アートの事は良く分からないので、全て個人的主観です)
(一つも絵を貼り付けてないですが、実物を是非、ということで勘弁してください)

美術館は、カミさんも好きなので、たまに行くのですが、最近までは、んー、という感じだったんですよね。
何の展示会か忘れたけど、ずっと前に「真珠の耳飾りの少女」を見た時も、そんなに感動せず、これが有名なあれかー、ぐらいの印象だったんです。
国立西洋美術館で開催された「自然と人のダイアローグ」という展示会も、こちらは、自分でも行きたいと思っていたんですが、実際に見ても、正直そこまで感じ入るものは無かったんです。すごいなー、という感じで(本当に偉そうですみません)。

でも、最近は、何か違う。年を取ったからか、ブルーピリオド読んでるせいなのか、本を読んで歴史に興味が出てきたからなのか、感じ方が変わってきている。人間として深みが出てきたのなら嬉しいのですが。
最近だと、キュビスム展は、すごくかっこよくて、行ってよかったとなった展示会のひとつ。(2024年7月7日までは京都でやっているんで、宜しければ是非)岡本太郎展も、よかった。ノンが見られて幸せでした。

今回の印象派の展示も、すごくよかったです。上野では4月7日までなんですね。
これまで、印象派って、名前は知ってても、単純にきれいだなという感じでした。
それが、間近で本物を間近で見て、さらに離れてみて、圧倒されるような作品がたくさんありました。本物に触れる、という事の大事さを改めて感じた、今日この頃です。

展示の流れとしては5章構成で、第1章は「伝統への挑戦」。
19世紀から、従来の宗教画や歴史がから、風景画に流れが動いていく。この頃の風景画は、どれも写真のように繊細で綺麗。

第2章は「パリと印象派の画家たち」。
ここで、印象派で有名な画家の作品が登場。ルノワールとか、モネとか。
モネの「睡蓮」はさすがの美しさ。水面に映った木々の様子の静かで繊細な様子と、蓮の葉の大胆な描き方のギャップ、そして色使いの美しさ。「睡蓮」は連作として知られていますが、美術館として初めて買われたものが、今回展示されているものらしい。そして、この睡蓮購入の遣り取りに使われた手紙や電報が展示されているのが面白い。
何でも、という事ではないのでしょうが、記録を残すという事は大事なのかと思いました。
今の時代、メールなんかの遣り取りだと、どこに行ったか分からなくなりそうだし、将来、展示なんかできなさそう。展示しても、今回のような風情は出ないだろうし。

第3章は「国際的な広がり」。
印象派のイメージは「綺麗」だったんですが、今回、光と色の表現に優れているために綺麗なんだという事に気づきました。
フランスの印象派もそうですが、それを受けて海外に展開していった作品だと、それが受け継がれつつ、変化しつつで興味深い。
特に、アンデシュ・レオナード・ソーンの「オパール」とか、近くで見ると、絵具がざざっと(失礼!)塗られているように見えるものが、遠くから見ると、その色が、光が鮮やかで、なんでこの描き方で、こんなリアルな、かっこいい絵になるんだって、不思議になりました。この背中の白、大胆すぎるだろ、かっこよすぎだろ、と思いました。
自分の目に見えているものについて、何をもって、どう判断しているのか、己の知覚を疑いたくなりました。

同じ人の絵が並んでいたりすると、進歩というか、変化が見えて、また面白い。
久米桂一郎も、フランスで印象派を学んだ一人だそうだ。フランスで描いた「林檎拾い」は、印象派を学んで、模して描いているという感じがした。その一報で、隣に展示されている、帰国してから描いた「秋景」は、その技術を自分のものにしたうえで、独自の技術で描かれたように感じた。印象派的日本画、とでもいうような。

第4章は「アメリカの印象派」
3章で世界に広がっていった印象派の波が、アメリカでも花開く。
ジョゼフ・H・グリーンウッドの「リンゴ園」は、2本のリンゴの木が描かれている。この絵の周囲はぼやっとしていて、中央の木に視線を注目させているのを感じる。
チャイルド・ハッサムの「コロンバスの大通り、雨の日」は、メインの馬車だけくっきり描かれており、表面状態も他よりグロスに見える。全体としてはセピアのトーンだが、そこだけリアルな分、際立って見える。
色の明暗や、繊細さで、見せたいものを見せる、そして、その風景が美しい。

第5章「まだ見ぬ景色を求めて」
印象派後の絵画技術を模索、探求した作品が集められているのだろう。印象派に近い絵もあるが、ブラックとか、大胆に変えようという意思もみてとれる。
興味深かったのはトーナリズム。初めて聞いたが、全体を同じような、落ち着いた色味で描いている。なんか違うかもですが、プラモデルでいうウォッシングみたいな印象。

個人的に衝撃だったのは、トライオンの「秋の入口」。第1章に出てきた風景画に近いものを感じ、原点回帰のような事なのかと思ったのですが、よく見ると描き方が全然違う。
これ、遠くから見ると、葉の落ちた木が何本か立っているように見えるのですが、近くで見ると、全然、枝とか描いてない。なんでこれが木に見えるんだ俺の目、俺の脳。自分が見ているものが信じられなくなりそうです。
あと、フランク・ウエストン・ベントンの「ナタリー」という、女性の肖像画も素敵でした。この時代からの女性のあるべき意志の強さみたいなものを感じました。時代の象徴的、というと言い過ぎか。
19世紀、日本が明治維新やら日露戦争、日清戦争なんかをやっていた時に、フランスでは印象派という表現が生まれ、世界に広がっていた。そしてこのような絵が生まれる土壌。近いようで遠い、文化の差があるのかもしれない。

展示の最後に、ウスター美術館の紹介が放映。古代エジプトから、現代美術までを集めて、リアル百科事典みたいな場所らしい。将来、一度行ってみたいなと思いました。

思考があちこち飛んでしまいましたし、書ききれてない名画もいっぱいありますが、後はぜひ実物を見ていただければと。
上野では4月7日に終わってしまうけど、郡山とか、各地を回るみたいなので、一人でも多くの人が感動してくれればと思います。

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