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メイドインアビス第2期 第10話の度し難感想 復讐、それはファプタの旅が終わる時……


 ナナチが目を覚ましたときには、もうベラフの居所は崩壊していた。

ベラフ「私の体験を吸ってもらった。匂いは記憶そのもの。夢のように移ろいやすくもあるが、伝わったと願う」

 前回、ナナチが150年前の記憶を夢に見た理由はこれだった。ベラフが過去に何が起きたのか、ナナチに伝えていたのだ。

ベラフ「私は行かねばならない。だから私の価値を、記憶を、君に託した」

 ベラフはきっと、150年前に果たせなかった願いを叶えに行くのだろう……。ベラフはイルミューイに罰せられたかった。それがファプタを通じてやっと叶うときがやってきた。ベラフの価値はナナチに託されたから、もうベラフ自身には何もない。全てを捨て去って、死を受けるときがやってきたのだ。

 え? 目から何か出てますよ……。
 目じゃなくて、「口」だって。ベラフにはもう目はないのよね。知っててもこれは見るとびっくりするよね。

ベラフ「そこが境界線だ。そこを越えるとミーティは消える」

 イルブルの中は、大穴が開いたせいで、もう安全な場所ではない。危険な原生生物が入り込むし、力場(呪い)も入り込んでいる。イルブルの中で生成されたものは、その外に出ると消失してしまう……。

「今度は……オイラの手で送ってやれるんだ」

 あの時はレグの手を借りて、ミーティを葬った。でも本当は自分で葬りたかった。葬るべきだった。あの時できなかったことを、今ならできる……。
 ナナチは1歩踏み出すのだった。

 きゃ! ナナチ、裸だよ! 放送コードに引っ掛かっちゃうよ! レグがやってくるまでに服着なくちゃ……。
 外は霧がやたらと濃い。これはずっと夢の中にいたから……という表現。今その夢を出て、覚醒しようとしている……。そんな端境を歩いているという表現。
 ナナチの進行方向はこの辺りからずっと←。迷わず一方向に進んでいる姿を見せている。

 これでナナチはやっとミーティの死を背負うことができた。自分でミーティの死の責任を背負えた。悲しくも幸せな瞬間だった……。

「憧れも、穢れも、喜びも、痛みも、私は捨ててしまった。君はひろい、宿していけ。ひろうもの全てが、君の価値だ」

 お届け物でーす

 あ、帽子だけか……。服も持ってきて欲しかったなぁ……。
(ちゃんと服も持ってきてくれています)
 帽子を被る瞬間、霧が一層濃くなっていく。夢と現実の境界。その霧がさっと晴れて、ナナチの姿が現れる。ナナチの覚醒が表現されている。


 目覚めるレグ。

 惨劇はもう始まっていた……。
 この辺りの描写、すごいな……。あんなファンシーなキャラクター達を生々しい死んだ姿に描けるって凄い。ちゃんと生き物っぽく絵が作れるのはすごい絵力だ。

 怒りの表現。こちらも凄い。眼球が砕けているように見える。こんな怒りの表現、初めて見た。
 ファプタはもともと可愛いキャラクターだけど、それをどうやっておぞましく見せるのか。普通の表現だと眉間や鼻に皺を作ったりするんだけど、このアニメの表現は初めて見た。新しい表現を作り出している。これは凄いぞ。

 まだ生きているパッコヤン。
 相変わらず材質不明だけど、大砲のようなものをぶっ放す。左手に添えている突起が引き金になっているらしい。いったいどういう道具なのだろう。中に詰まっているのは火薬だと思うのだが……。

 ここの表現もいい。足音が獣の音だ。
 それに6本足での走りなんて、アニメーターが一番嫌がるやつだけど、避けずにしっかり描いている。

 パッコヤンを守るベホマスライム。ベホマ使ってよベホマ……。

 一方のファプタにはイルブルそれ自体が味方なので、ちょっとした傷でも一瞬にしてベホマで回復。……なんかシドーみたいになってる。
(※ シドー 『ドラゴンクエスト2』のラストボス)


 「涙」で回想シーンへと繋がる。この繋げ方もうまいのだけど、ここの絵もうまい。この直前まで、ファプタの凄まじい形相を見せていて、ここですっとディテールを減らしてスッキリした顔を見せている。人はゴリゴリに描かれたものよりも象徴的に描かれているものに愛着を持つ。線の密度で可愛らしさを表現している。絵も演出もうまい。

 なにかにやられているガブールン……。
「あいつだ、あのノッポにガブールンの匂い、憶えられた」
 ノッポって……リュウサザイのことかな……。あいつの「ぺっ」ってこんなに威力があったんだ。

 そこにやってきた謎の美少年……。だ、誰だろう。
 いつも輪っかについているマントが、フードになっている。あのマントって、輪っかに付いてたんじゃなかったのか?

ガブールン「言語が、時折通るものに似ている」
ファプタ「あ、あの石のものを持つ奴らか」

 この時のレグの言語ってなんだろう? 旧アビス文明の言葉だろうか……。ということは、アビスの淵に住んでいた部族社会の人たちと同じ言葉? 言葉が同じってことは、部族社会のあの人たちはやはり旧アビス文明が後退してああなった人たちってことだけども……。
 「石のものを持つ奴ら」って誰のことだろう? そのうち明らかになるのかな。

「僕の名前は……レグ」

 やっぱり「レグ」なのか……。じゃあリコはすでにレグの名前を知っていた、ということになる。犬に「レグ」って名付ける前から。

 レグの頭の上で大はしゃぎのファプタ。腕が4本もあるようなキャラクターをよく動かせるなぁ……。

「うん。まあ、取り繕うのは存外大事だと……師匠も言っていたし……」
 師匠って、ライザのことだと思われるが……。いまだにどういう関係なのか……。
 この回想シーン、むしろ「謎」を大量に作ってるぞ。


 これまた凄い表現。笛を吹いたら謎の力でレグがパワーアップ……じゃなくて、その瞬間なにが起きたかを映像で見せている。この光の輪のようなものは実際に目に見えるものかわからないが、たぶん高周波のようなものが波動として広がって、レグにぶつかった……という表現だろう。
 とにかくも「映像で表現しよう」というこだわりを感じる。

 装甲が真っ白になったレグが、一歩踏み込む。踏み込んだ地面がずるっとめくれて、その下の土が熱を持っている。真っ白レグがものすごい高温を放っているのがわかる。ひょっとするとものすごい熱量の運動エネルギーを放出している……という表現かも知れない。

 バッシューン!

 シューッ!

 蒸気がバッと広がったと思うと、次の瞬間には散っていく。
 熱の変化で周囲の空気が水蒸気になって、その水蒸気が一瞬にして散っていった。アームとワイヤーも相当高温になっているはずなので、ファプタはいま凄く熱いはず。火傷してないのかな……。

 2人一緒に外へ。そこは鉄の雨が降り注いでいた。
 そしてこの音楽! 愁嘆場ほど優しいメロディが鳴り響く。最高の音楽だ。


「参ったな、もうなにも残っちゃいないのに……」
 頭がバッと開く。ああ、こうなっていたのか。中にある顔の方が、元のワズキャンに似ている。これは何だろう……。ずっと「本心を隠していた」ということかな。意味があるものかどうかは、そのうちわかるでしょう。

 無数の指を伸ばして、鉄の雨がイルブルに降り注ぐのを防ぐ。

 これは「ハク」……一番大事なもの、という意味だそうな。
 ああ、そうだったのか。ファプタにとって一番大事なもの……という意味だったんだ。私は逆に考えていたな。
 ファプタは3つの卵から生まれた存在だから、大事なものは3つまで持っていていい……というのはファプタの自分ルール。

レグ「一番大切なのに、君は、母上を殺さねばならないのか」

 一番大切なものを殺す……ナナチも一番大切なものを自ら殺した。ファプタも一番大切な母親を殺さねばならない。それがお互いにとっての“解放”だから。
 これがこの物語における大きなテーマだとすると、次はリコの番だ。リコが“殺すもの”といえば……。
 それを考えると不穏。


 感激したファプタがレグに覆い被さり……次のシーンへオーバーラップ。
 あ、わざと何かあった、みたいな描写にしたな。
 まあ、あったんでしょう。ここは深掘りしないよ。

「ファプタはその……ファプタは姫なので……レグ、戻ってきたらずっと一緒にいて、それで、それで、子供も……」

 これはファプタも「人間」になりたい……ということなのだろう。
 ファプタは母イルミューイの「恨み」だけを引き継いで生まれた。恨みを晴らすことだけが人生の目的。恨みを晴らす……という目的から解放されたら、自分自身の人生を歩みたい。だから子供を作って親になりたい。
 恨みを果たすことだけを目的に作られたイルミューイに、子供を宿すことが可能なのかわからないけど……。生物種ではないので、生殖機能があるかどうかもわからない。わからないけど、自分の人生を持ちたい……というのがファプタの密かな願いだった。

「僕からも頼む。戻ってきて、君の宿命に決着を付けたら、ともに歩き出すんだ」
「そして――冒険をしよう」

 と、自分で言ったのも忘れたレグ。
 困った少年だな……。そうやって女の子を泣かせてきたのね。

 第4話。部屋のオブジェを直しているファプタ。
 ああ、そうか、レグの頭が崩れてたから治していたのか。レグの記憶喪失の象徴だったのね。

「レグは優しいそす。でも……愚かそす」

 あまりにも捻れすぎて、もはや解決できない……。次回どうなる?

次回

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