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2022年秋アニメ感想 ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン 25話~39話

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 てっきり残りエピソードは半年後だと思っていたが、まさか今期中に配信ッ! テレビではまだ24話まで辿り着いていない段階なのに最終話まで一気に公開だッ! Netflixに課金していてよかった。

 ジョリーンはミューミューに数日足止めを喰らったものの、24話のラストでどうにか脱獄ッ! 神父を追跡するッ! 同時にウェザーリポートとアナスイも脱獄ッ!
 めでたく4人そろって指名手配されるわけだが……まあ目立つ! 荒木飛呂彦キャラのああいう世界観なのだから仕方ないが、風貌が目立って仕方ない。あっという間に「お前、脱獄囚!」と警察に発見される(コスプレイヤーが道を歩いているようなもんだからなぁ)。風貌があまりにも独特すぎて、変装する余地がないものなぁ……。

 25話~39話までのエピソード自体は短い。ケープ・カナベラへ向かった神父を追跡するだけで終わっている。移動歩幅は短いのだけど、そこまでのエピソードがみっちり。しかも次から次へと刺客が現れ、最後まで展開に飽きることはない。物語自体は短いしごくシンプルなものだけど、厚みを持って見せている。こういうところのお話し作りはさすがの荒木飛呂彦。相変わらずうまい。

 プッチ神父が緑の赤ん坊を吸収して新たな力に覚醒しかけようというその時、3人の男と合流する。その3人とはいずれもDIOの息子達ッ! プッチがDIOの属性を獲得し、力に目覚めようとしたから、そに呼応して引っ張られてきたのだ。
 というか、DIOって息子がいたんだ。てっきりDIOって同性愛者だと……。いや、同性愛者だったけれども、身の危険を感じて自分の遺伝子を“保険”として残していた……とかそういう感じかも知れない。
(そういえばジョルノ・ジョバァーナもDIOの息子だったか……)
 どうしてDIOがゲイだと思ったのかというと、プッチ神父との関係。DIOとプッチ神父の関係はやたらと親密だし、2人でベッドでゴロゴロしている場面なんかはどう見ても“事後”ッ!
 でもたぶん、2人のあいだに性的な交渉はなかった……と考えている。なぜならプッチは“神父”だから。そういうところはきっちりしていそうだから、童貞のままだったんじゃあないかな。
 もう一つ、プッチ神父童貞説の根拠があるけど……それは後ほど。

 間もなくDIOの息子達はジョリーンたちとぶつかり合い、バトルになるのだが……これがかなりの珍試合。
 まず第1の刺客ウンガロ。スタンド名:ボヘミアン・ラプソディ。絵画、コミックの登場人物を実在化して、さらに現実世界の人間をコミックのキャラクターにしてしまう……。
 第2の刺客リキエル。スタンド名:スカイ・ハイ。自然界に存在する「スカイ・ハイ」と呼ばれる生き物を操作し、相手から体温を奪うことができる。
 第3の刺客ドナテロ・ヴェルサス。スタンド名:アンダーワールド。土に眠った記憶を再生し、相手をその中に取り込むことができる。

 この3人のスタンドの何が変って、定義がちょっとあやふや。これまではどの程度のパワー、スピードを持っていて、精密な動きができるか、得意な能力を持っているか……。しかしこの3人はほぼ無制限に力を発動できてしまっている。コミックを現実化できるボヘミアン・ラプソディは一部地域ではなく日本まで影響を及ぼしている。起きている状況を面白くしようとした結果……というのはわかるけれども、やり過ぎている感がある。最終戦の最初だから、軽めのフック……という感じだったのだと思うけども、それにしてもあそこでやるにはあまりにも珍スタンド。

 もう一つ引っ掛かったのは、これからクライマックスだというのに、妙に気が抜けるようなスタンド使い達。刑務所の中にいたときの方が、緊張感あったような……。
 3人の中で従来のジョジョらしいスタンド能力で戦いを挑んできたのはリキエルだけ。
 さらにDIOの息子達だというのに、その本人達に精神的強さが見えてこない。どこか小物。
 まずウンガロは飛行機に乗ったまま地上に降りてこない。しかもそのまま戦意喪失。リキエルは堂々とジョリーン達の前に姿を現すが、すぐに精神的に折れて逃げ出そうとする。ドナテロは少しずつ覚醒していったが、最後には傲慢な性格が現れて、油断して死亡(ある意味DIOの息子っぽいが)。
 ウンガロ、リキエル、ドナテロ……と戦いのスケールはたしかに階段状に上がって行ったけれども、スタート地点から珍スタンドだったから、どこか盛り上がりに欠ける。最終決戦を前にした戦いだというのに、なんとなく緊張感に欠ける3人の戦いだった。
 3人目の刺客であるドナテロの能力アンダー・ワールドはいまいちどういう原理かわからない。病室の地面に穿った穴が無限の空間になっていって……ということらしいが、それはいったいどういう現象なのか、限界がどこまでなのかが示されていない。旅客機から飛び出そうとしたジョリーンが、なぜか戦闘機に乗っている場面とか、この旅客機と戦闘機の距離感、さらにドナテロがいる距離感がどうなっているのか、いまいち掴みづらい。
 その後、ウェザー・リポートの正体が明かされ、DIOの息子達よりはるかに緊張感のある激戦が描かれ、いよいよケープ・カナベラへ。最終決戦場へと向かう。やっとクライマックスへと盛り上がっていくが……。

 しかし……うーん、どうも絵に締まりがない。クローズアップのキャラ絵はきちんと描かれているのだけど、ロングサイズになると急に怪しくなるし、動きを付けるとどんどん崩れていく。空間描写もおかしい。刑務所から出て以降、ずっと空間描写が怪しくて、映像を見ていて不安定になる。せっかくいい展開があっても、絵が台無しにしちゃっている。ジョジョのアニメシリーズをずっと見てきて、ここまで絵が崩れた……というのは初めてかも知れない。
 ドナテロが病院から出て走るシーン、あまりにもデッサンが崩れているので、掌が逆に描かれているように見えてしまった(「掌が逆に描かれている?」と思ってコマを止めてみたが、逆さまにはなってなかったが、あまりにも絵が下手なので逆さまになっているように見えただけだった)  たまに滅茶苦茶に格好いい絵が出てくるのだけど、そういう格好いい絵は2~3カットくらいで、その後はグズグズに崩れる。アニメーターにスキルの差が出すぎている。作画スタッフはずっと同じ人が集まっているはずなのに、どうして今回はこんなに絵がグズグズなのだろう? シリーズの最終決戦なのに、お話しは盛り上がっているのに、絵という面で緊張感が抜け落ちていく感じが惜しい。
 ようやくケープ・カナベラに到達するのだが、しかし重力方向に異変が起きて……。前方の自動車が“水平方向に落下する”という現象が起きるのだが、ここも空間表現がおかしい。パースが歪んでいたり、奥行きが急にパツッと途切れていたり……。こういう場面こそ空間をしっかり描かないと、重力方向がぐにゃぐにゃ変わっている奇妙さが出ないじゃあないか。
 25話からラストまで、ずっと珍試合のうえに絵が崩れっぱなしなので、いまいち盛り上がりに欠けてしまう。せっかくシリーズの最終局面だというのに、最後の最後で緊張感が抜けちゃった……という感じが出て惜しい。

 ウェザー・リポートとの戦いを終えて、いよいよ34話からプッチ神父との戦いになっていく。ここからは一気に盛り返してくる。プッチ神父の圧倒的な強さもあるけれども、やはり芝居の良さ。プッチ神父を演じる関智一の圧倒的存在感。低音ボイスになんともいえない悪魔的雰囲気が宿ってくる。演技も「ラスボスの声」になっていっている。
 そんな圧倒的な強さを持つプッチ神父の新しいスタンド:C-MOONをどうやって撃破するか。ジョジョらしい化かしあいで、追い詰められたらやり返しの繰り返し。ジョジョはやっぱりこうじゃないと……という展開で楽しい。なにより35話のクライマックス、空条承太郎の登場ッ! こういう「ピンチにヒーロー登場!」はジャンプ漫画の定番だけど、その中でもグンバツにうまい。やっぱりジョジョだなぁ。

 承太郎参戦によってついにプッチ神父を追い詰めたッ! しかし新たなる局面ッ! プッチ神父のスタンドに変化が……ッ!!
 スペースシャトルに乗ったところでプッチ神父は「天にまします神よ!」と言うわけだけど、プッチ神父が崇めているのはヤハウェではなく、悪の化身DIO。もはやこの世を去り、神のごとき存在になってしまったDIOが語った「天国」に向かうお話しだから、今回の悪役は神父。天国へ向かうモチーフとしてスペースシャトルが出てくるのだが、舞台となっている刑務所がフロリダで、その刑務所からそう遠くない場所に宇宙ステーションがあって……なにもかも計算されて作られている。見事な構成力だ。読者に気付かれないようにここまでの構想を作り上げて、じわじわ展開させていく……相変わらず荒木飛呂彦の天才ぶりに驚く。
 プッチは悪神となったDIOに帰依し、「天にますます神よ」と崇めて、その力を獲得してしまう。キリスト教世界では童貞が清い……神の力を宿すためには童貞でなければならない……という教えがあって、プッチは悪神を信仰しているとはいえその教えの影響下にあったはず。だからプッチ神父は童貞。DIOとの性交渉はなかっただろう。

 プッチ神父のスタンド:C-MOONは「メイド・イン・ヘブン」に進化し、その力が発動すると世界中のありとあらゆるものの速度が加速していくッ! という描写の中で、「締め切りに追われる漫画家」が出てくるのだけど、あれはどうなのかな。最終局面で笑いを入れてくるのはちょっと緊張感に欠く。
 それはともかく、超高速で時間が進んで行く中で、プッチ神父だけが通常の時間の中で移動できる。超高速の世界にいるジョリーンや空条承太郎にとっては、プッチ神父があまりにも早すぎて動きを捉えることができない。承太郎の時を止める能力も一瞬過ぎてほぼ役に立たないような状態。
 ラスボスの能力がズルい……ということでお馴染みのジョジョだが、今回も飛び抜けてズルい。ジョジョのラスボスは毎回時間を操る能力を獲得するが、今回もそれだし、しかも全世界の時間がスキップするというとんでもないスケールッ!
 さて、そんなラスボスをどうやって攻略するのか……ッ!

 というところで「特異点」を通過して、「第2の世界」へと到達してしまう。ジョリーンも空条承太郎も死んじゃっているので、この世界の中で前の世界の記憶を保持しているのはエンポリオのみ……さて、どうするッ! エンポリオはプッチ神父に殺されてしまうのか――ッ!
 ここでまさかの大逆転が起きて、再び時間は加速して、もう一度特異点を通過して「第3の世界」へと到達する。プッチ神父は自分の能力によって、「自分が存在しない世界」を作り上げてしまうのだった……。
 エンディングは「第3の世界」が描かれるのだけど……おそらくはジョースター家とDIOとの因縁がすでに決着したその後の世界。決着がついたあと、第3の世界として再構築されたから、ジョースター家とDIOとの骨肉の争いももうない、平和な世界に到達したのだろう。
 確かにそうすることによってジョースター家とDIOとの決着は完全に終結したけれども……どこか寂しい。因縁の決着はついたけれども、しかし第3の世界には空条承太郎も東方仗助もジョルノ・ジョバァーナも空条ジョリーンもいない……。あの英雄達が平和な時代を作るための礎となり、もはやエンポリオしかその存在を記憶していない世界にきてしまった……。間違いなく血の因縁は終結したけれども、なんともいえない寂しさ。唐突にお別れの時が来てしまった……という感じだ。
 でもこういう感慨を後に残す……というのは、それくらいこの作品を思い入れを持って見ていたということ。私は『ジョジョ』が好きだったんだなぁ。ジョースター家とDIOとの戦いを愛していた。平和を求めていたけれども、その一方であの戦いの日々も愛していた。あれだけ激しい闘争があったから、英雄達があんなふうに輝いていたのだから。
 でもあの戦いの日々は忘れられた世界となり、英雄達が築き上げてきた遺産が最後には平和な世界をもたらした。これで良かったんだ……とこの平和を噛みしめよう。血の因縁が終結するとき……それはジョースター家の物語が終わる時だった。

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第5部 黄金の風感想文


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