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ブログ:アニメの話

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私の個人ブログの中から、アニメに関する話題のみをピックアップしました。
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#アニメ感想文

映画感想 ゆるキャン△

 もう一度自分を見つめ直すために。  『ゆるキャン△』は2015年から『まんがタイムきららフォワード』で連載がスタートし、2019年からは『COMIC FUZ』に移籍して現在も連載が継続。現時点で600万部を超える大人気漫画である。『ゆるキャン△』がアニメになったのは2018年。アニメーション制作C-Station、京極義昭監督によるアニメシリーズは高い評価を獲得し、制作会社を変更しながら現在第3シーズンが放送されている。実在のキャンプ場をロケハンして丁寧に再現しただけでは

映画感想 長靴をはいた猫と9つの命

アメリカのアニメーションがアップデートされた瞬間。  『長靴をはいた猫と9つの命』はドリームワークス・アニメーション製作の『シュレック』シリーズのスピンオフ作品。実は2011年に『長靴をはいた猫』を主役にしたスピンオフ映画は制作されていた……知らなかった(いや、知っていたけど忘れてたのか?)。今作は11年ぶりに描かれた続編。「長靴を履いた猫」であるプスを主人公にした映画の2作目である。  監督はジョエル・クロフォード。絵コンテアーティストとしてキャリアをスタートし、2017

映画感想 鹿の王 ユナと約束の旅

 日本最高アニメーター・安藤雅司第1回監督作品!  『鹿の王 ユナと約束の旅』は2022年公開のアニメーション映画だ。原作は上橋菜穂子による小説『鹿の王』。監督はジブリきっての実力アニメーター安藤雅司。『もののけ姫』をはじめとして『千と千尋の神隠し』『思い出のマーニー』などのジブリ作品で作画監督を務め、他にも今敏監督『東京ゴッドファーザー』『パプリカ』で作画監督、新海誠監督『君の名は。』で作画監督……我が国を代表する大ヒットアニメーション映画にはだいたい関わっているだけでは

映画感想 犬王

 室町時代にいたかもしれないロックスター。その名は犬王!  『犬王』は室町時代を舞台とした湯浅政明監督による5本目の劇場アニメーション作品だ。タイトルにもなっている「犬王」は15世紀頃、世阿弥と同時代に実在した猿楽の名手であるが、奇妙なことにほとんど記録に残されていない。Wikipediaで「犬王」を見ても、書かれているのはほんの数行。この謎めいた人物を題材にした作品が、古川日出男による小説『平家物語 犬王の巻』だ。湯浅政明監督のもとにオファーが来たとき、企画にロックアーテ

2023年春アニメ感想 水星の魔女 後編

 今シーズンアニメの中でも突出した存在感を発揮した『水星の魔女』。『ガンダム』シリーズがこんなふうに話題の中心になるのはいつぶりの話だろうか……。カジュアルなアニメファンの人気を獲得しつつ、『ガンダム』らしい奥行き感をしっかり備える。よくもこんな複雑な仕事をこなしたな……と素直に感心する。  私としてもテレビシリーズの『ガンダム』を見たのは実は十年ぶりくらい。ガンダムはなんだかよくわからない。むやみに複雑で、情緒でわかるようなシーンが少ない。要するにドラマが弱い。40年前に生

2023年春アニメ感想 鬼滅の刃 刀鍛冶の里編

 本編の感想文に入る前に、ちょっとその周辺の話。  『無限列車編』から気になっていたことだけど、予告編の編集……あまりにも下手すぎないか?  予告編動画を見ても、テロップと回想シーンばかり。テロップはワンフレーズ出てくるたびに「バーン! バーン!」と派手な音の繰り返し。そういう回想シーンとテロップだけの映像が数分続いて、やっと数秒の新規映像が出てくる……。  なに、この素人編集……。でもufotableの優秀な編集スタッフがあんな素人編集するわけがない(ufotableの他の

映画感想 リズと青い鳥

 「青い鳥」は誰?  業界屈指の存在感を誇る京都アニメーション制作の『響け!ユーフォニアム』が最初にテレビ放送されたのは2015年4月。最初の放送時の評判はさほど高くなく、Newtypeアニメアワードでも中間発表14位。ただ吹奏楽を描いた作品としての評価はすこぶる高く、高校吹奏楽部の内実を当事者なら「わかる」というほどに描き込んでいた。なにより凄かったのは楽器描写。ただでさえ描写の難しい金管楽器を1コマの手抜きなしで描き、演奏シーンの指使いは専門家も太鼓判を押すほどに正確。

映画感想 太陽の王子ホルス

 アニメ史上における“最初の”名作。 太陽の王子ホルス 制作が始まるまで 『太陽の王子ホルス』は日本アニメ史における黎明期時代の作品。当時の事情、制作が始まった経緯まで、大雑把に話しておこう。  もともとアニメーション制作を担当する「東映動画」は、東映内の「教育映画活動」と呼ばれる小さな部門であった。そこで短編アニメを制作し、当時は映画館のない地方も多かったことから、農村や漁村を巡る巡回上映などを実施していた。戦後はまだ映画は俗悪で「教育によろしくない」と考えられていた時期

映画感想 ユーリー・ノルシュテイン傑作選

 ロシアの名作アニメーション!  まずは偉大なるアニメーターであるユーリ・ノルシュテインという人物を見てみよう。  ユーリ・ノルシュテインは1941年、第2時世界大戦の最中に疎開先のペンザ州ゴロヴィンシチェンスキー地区アンドレエフカ村で生まれる。ユダヤ人家族の子である。1943年母親と兄とともにモスクワに戻り、マリナロシュチェ地区で子供時代を過ごす。  父親は教育を受けていない木材加工工場整備工であったが、高等数学を理解し、絶対音感と音楽的記憶力の持ち主だったと言われている

映画感想 エセルとアーネスト ふたりの物語

 “何でもないこと”が尊い。  高名な絵本作家であるレイモンド・ブリッグスがこの世を去ったのは2022年9月。彼が制作した『スノーマン』や『風が吹くとき』といった作品を知らない者の方が少ないだろう。その彼が自身の両親を主人公にした絵本『エセルとアーネスト』を出版したのが1998年のこと。第1次世界大戦後のなんでもない夫婦の幸せを描いたこの作品はイギリス国内でベストセラーとなり、英国ブックアワード最優秀イラストブックオブザイヤーを受賞することとなった。  そのベストセラー絵本

映画感想 シドニアの騎士 あいつむぐほし

 ウチクダケー!  シドニアの騎士――それは播種船《シドニア》を守る戦士のことである。  原作は弐瓶勉。月刊アフタヌーンにおいて2009年から2015年まで連載されていた作品である。2015年第39回講談社漫画賞・一般部門、2016年には第47回星雲賞コミック部門を受賞。  その作品がテレビアニメーションとして制作・発表されたのは2014年春。第2期が2015年春。アニメーション制作はポリゴン・ピクチャアズ。アメリカでは『スターウォーズ・クローン・ウォーズ』(2008年)『

映画感想 神々の山嶺

 フランスの名作アニメ映画誕生!  『神々の山嶺(いただき)』は夢枕獏による小説だ。1994年から1997年まで『小説すばる』にて連載し、1997年8月集英社より単行本が発売される。2000年谷口ジローによる漫画版の連載が始まり、この漫画版は2001年に第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞を受賞する。  2016年には『エヴェレスト 神々の山嶺』というタイトルで実写映画化。監督は平山秀幸、主演は岡田准一、阿部寛が演じた。  今回視聴したのはそのアニメ版。アニメ版のタ

2023年冬アニメ感想 その他

 ここからは前クールからの継続作品と、独立した記事に上げるまでもない作品の話。 うる星やつら 2クール目 上坂すみれ=ラムが可愛い『うる星やつら』のつづき。  前回、『うる星やつら』はあくまでギャグ漫画だからキャラクターたちに厚みがない……という話をした。メインキャラクターたちをいくら掘り下げてもそこから新しい物語は生まれない。同じことの繰り返しになるから、どんどん新しいキャラクターが追加するしかなくなってくる。  そういうわけでどんどん新しいキャラクターたちが登場してく

2023年冬アニメ感想 NieR:Automata ニーアオートマタ

 あまりにも有名すぎる作品なので概要は不要かと思われるが、一応念のため。  『ニーアオートマタ』は2017年にスクウェア・エニックスより発売されたゲーム作品である。プラットフォームはPlayStation4。制作はプラチナゲームズ。監督・脚本は(みんなのトラウマ製造機でお馴染みの)ヨコオタロウ。  2010年に発売された『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』の続編として制作されたが、『ニーアオートマタ』は数千年後の世界観を舞台にしているため、部分的な設定の連なりはあるが、物語