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起業して10年。流されて生きてきたかもだけど意外と幸せに生きている(地味だけど)

背景…IT業界で、地味に起業して10年が過ぎました

僕は、今、一人でIT屋さん(プログラマーやディレクション、コンサルぽいこと・・・ITよろづ屋さん的なこと)をやって、なんだかんだと10年続いています。
先日までは一人スタッフがいて、一昨年前はもう一人スタッフがいたのだけど、今は一人きり。多少さびしくもあるけど、ただ、今は一人でやるのが丁度よい感じがしています。
売上は・・・まぁ、人月で計算すると、月額80万円といったところなのである程度は憶測できるかと思う(単純に12倍すれば年の売上になるが…毎日仕事が途切れずにあるわけでもないからね)。

世の中、やれスタートアップだ、何億円の調達だ!と起業にはとても明るい話が多い。その明るい起業には、起業のビジョンとか崇高な理念がついてまわる。ところが僕は、そんな崇高なビジョンもなく起業してしまった。そして、僕の起業には明るい話なんてどこを探したって出てこない。

そんな明るくない起業をしてしまった僕だが、明るくないくせに意外と幸せにやっている。それは単純な道ではなかったが、起業10年で一人に戻ってしまったことを機に、ちょっとまとめてみる。今、起業してる人や、これから起業を考えている人の参考になれば幸いである。

起業直後~いきなり法人格を取得したけど…

そもそも起業したのも前向きな感じでは無かったと思う。もっといえば、流されて起業した感じさえする。

それは、結婚して1年目の春だった。
その前まで働いてた業務委託の契約が切られ、急ぎ営業をし、某スポーツリーグの関係者とコネクションができた。ただ、取引先は法人であることが求められ、急ぎ法人格をとった。
普通、売上が1000万円を超えたあたりで税金対策で法人化を考える人が多いと思う。独立して間もない状態で売上がわからない状態で法人化なんて必要ない状態だったのに、法人を作った。そのお客様は元の大手IT会社(N●●さん)と再契約をし、僕はその契約が取れなかった。

残ったのは、持て余した法人格。

稼がなきゃいけないから、必死で仕事をした。それこそデリヘルの紹介システムだったり、キャバクラのスタッフ募集のシステム。足元をみられた。1本10万~30万ぐらいか。たしか初年度の売上は300万ぐらいだった。バリキャリの妻の給与の半分以下。悔しかったけど、泣き言はなるべく言わずに笑って、家事をこなして自分の居場所を作ろうとした。

ホント、お金がない事って簡単に人をダメにできる。意地になって耐えたけど、よくもまぁ妻は見守っていてくれたなぁ、と感謝しかない(妻が稼ぐ人で良かった)

でも、調べてみたけど自営業の収入の中央値って300万~400万ぐらいぽいね(年収380万円、手取り260万円…って、結構きびしい感じね)

起業後3年~5年ぐらいが過ぎ…人が少しずつ増えた

そのうち仕事が仕事を呼んできた。売り上げも、法人格を活用して税制面でメリットを享受できるぐらいの額になっていた。一人で応対するのが難しくなり周囲の友人に仕事をお願いするようになった。調子のよい時は、初年度の10倍ぐらいは稼げるようになったんじゃないかな?
ところがところが上手くいってると思ったら穴があるもので、数百万円の支払いをお客様が拒否したこともあった。裁判になるか?ってギリギリの状態で、こちらの体力がもたず雀の涙で和解した(800万円ぐらい回収できず)。本当に胃に穴があくかと思ったし、悔しかった。それでも家族の・・・妻の支えがあったから死なずに済んだ。妻に「たかがお金じゃん」て言われ、確かにそうだけど本当に悔しいんだ、って泣いた気がする。

そんなトラブルもあったけど少しずつ仕事は増えていた。でも、精力的に人を採用するつもりは無かった。たまたま、同じ技術畑の知人が仕事を探していたので手伝ってもらうようになった。1つの仕事を複数の人間が考える事で、より多角的でいい仕事ができるようになっていたと思う。また、自分にトラブルがあって対応が出来ない時に、他にスタッフがいるのは心強いと思ったし、お客様へのサポート体制という意味で大事な事だと思ったのだ。

そのうち、手伝ってもらってる人の後輩が仕事を探してるとかで、その人を雇う事にした。若いというには難しい年齢の彼は未経験だったが素直で前向きな性分だったので仕事はしやすかった。彼に説明する・・・という手間は増えたが、自分の認識を確認しなおすのは大切で、本当に重要なプロセスだったと思う。また、僕の見落としに何度も気づいてくれた彼は得難い存在だったと思う。

起業後8年を過ぎた辺りから雲行きが…

そのうち、仕事の波が激しくなってきた。仕事がある時は睡眠時間もろくにとれないが、無い時は本当にやることが無かった。それでも従業員には給与を払わなければいけない。公庫にお金を借りて彼らに給与を払い、自分は数か月収入が無い時期もあった。スタッフが稼ぐ金額よりも、支払う金額の方が圧倒的に多かったが、家族で貯蓄を切り崩して耐えていた。ただ、それは破綻するのを先送りにしてるに過ぎなかった。どちらに向かっていけばいいか分からず苦しんだ。吐きそうになったし、朝がくるのが怖かった。でも、そんな時でも家族がそばにいてくれたから壊れずに済んだ。家族と従業員の為に何とかしなければいけなかった。

その一年は、スタッフには資金繰りが厳しい事は伝えていた。翌年、これ以上はどうにもならない事を素直にスタッフに伝えた。その結果、一人辞めてもらうことにした。5年近く手伝ってもらったのに退職金は給与2か月分しか払えなかったが、これが自分の精一杯だった。にしても、法律は弱者を守る為にあるのだけど、必ずしも従業員が弱者とも限らないというのを痛感した。法で守られた彼らに辞めてもらうのは、本当に難しいことだった。

そして今にいたる…

一人スタッフがいなくなって資金繰りが少し楽になると、不思議なもので、急に仕事が忙しくなってきた。徐々に下がっていた売り上げも最盛時ぐらいまで盛り返してきた。仕事は順調だし、仕事量はある程度ある。なのに、この状態で残っていたスタッフを取引先に転職させることにした。出向では無く、転職というスタイルをとるにいたった理由は詳しくは書けないが、当人にとっても、取引先にとってもプラスな話なので良い事だと思っている。

一方、僕の方はポジティブな気持ちとネガティブな気持ちがある。結局、自分が自転車操業的な仕事をしていたせいで、スタッフの面倒を見切れなかったという気持ちも強い。元々、一人だと何かあった時に対応ができないことからもスタッフを増やした経緯がある。それらを手放す事への一抹の寂しさが無いわけではない。

それでも、今まで苦労してきた背景もあり、身軽になることにちょっとしたワクワク感があったりもする。他人の人生を背負うのは難しい。昨今の企業はそんなことを考えないところも少なくないようだけど、人を雇うと、経営者には責任がついてまわる。その責務を果たすために頑張ろうと励んできたが、結構な重圧だったと、今になって思う。
そして、これからは一人だけのものになる。急に荷物を手放して身軽になったけど、同時に所在が無くなった感じもする。

良くも悪くも何にでもなれる。そんな感じ。

振り返ってみて思った事~これからの事

そんなわけで、派手でないカタチの起業について書いてみた。10年ひと昔。とはいえ、トラウマになりそうな痛みも、消せないような屈辱も、まだ自分の中にいるけど、何だかんだとやってこれたのは、ひとえに家族のおかげだというのを痛感する。

僕は弱い人間だから、人が見てないと途端にダメになる。逆にいえば、家族の前だからこそ、ちゃんと振舞おうと思える。もし、独身のまま起業していたら、僕は路頭に迷っていたと思う。もし、やりなおせるなら・・・人が滅多に通らない道じゃなくて多くの人が通ってる道を選びたい。この道はガイドブックが無くて常に迷い続けなければいけない。好きでそんな道を選ぶのは余程のツワモノだ。少なくとも僕はその器じゃない。

さて、今後だけど、余程の事がないかぎりスタッフを増やす事はないと思う。自社のサービスを作って、それが軌道にのってくれたりすれば話は別かもしれないが、そもそもこんな弱小の法人を手伝おうなんて奇特な人が来るとは思っていないし、細々食っていければいいというところで落ち着くのかな、と思う(本当は、働かなくても食えるようになりたいのだけど⇒ということでお金に働いてもらう方法を試行錯誤中)

最初に書いたように、華やかな起業が騒がれる一方で、地味な起業をあるのだと思う。そして、それぞれにドラマがある。六本木でパーティとかとは無縁かもしれないけど、それぞれに幸せを見つけることはできる。僕の場合は、自分が大変な時に支えてくれる存在を感じられたのが何よりの幸せだと思ってる。それを大事にするために、必死で仕事と家の事の両立させてきた結果が今なんだなぁ、と思っている(そんなもんで、子育てのノウハウだけはかなり積んできた自負はある)

これから数年、子供が学童を利用できなくなったり、反抗期になったり、といろいろあるだろうけど、今まで同様、大切なものが何であるかを忘れずにいたら、そう簡単に崩れずに済むんじゃないか、と思っている。

ま、起業は十人十色。僕のようにフリーランスの延長にある人もいるし、大きなビジネスをやりたくて起業する人もいる。主語を大きくしちゃうと、話がおかしくなっちゃうけど、まぁ、こんな感じで細々がんばってきた人がいるよーってお話でした。

おまけ~似たような規模の人と協力できたらなぁ

同じような境遇の法人格同士で連合して、仕事の多い時は手伝ってもらったり、少ない時は仕事をアサインしてもらったり・・・新規の案件にはいろいろ知恵を出し合って・・・なんてことができればいいなぁ、と思っているのだけど、この規模の同業者に会う機会がみつからず、何年もそのビジョンを実践できてない(どこにいるんだろ?)。

どうせなら、保険とか税理士とかそういうのもまとめてできると最高なんだけども・・・

おまけ②~

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