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日本人と言霊について語る②「音について」

「日本人と言霊について語る」では、主に言霊とは言葉自体に何かが宿るというよりか、霊性を核に持つ人間の精神活動と、その内側から溢れる言葉が表裏一体となり、それを発動させるための発声による声の響きが「波動」のようにあらゆるモノへ影響する。
これら全てが結びついて「言霊」となっているのだと説明しました。

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今回のお話は「日本人と音」について解説していきます。
まず初めに、「言霊」という概念が万葉集の時代にて確認されていますが、なぜ現代ほど科学も学問も発展していないおよそ1000年以上前から、「言霊」を通して宇宙的概念を理解していたのか。
実は言霊思想の根源にあるのは、「なんだかわかんないけど存在してるよね」という非常に直感的なものから来ているのです。

そのヒントは「音」にあるのをご存じでしょうか。
それを少しずつ紐解いていきましょう。

【日本人に聞こえる「音」】
「古事記」や「日本書紀」などの古典に共通するパターンとして・・・

・荒ぶる神々の声
・その轟きと共に起こる災い
・草木が語りかける

というものがあるのですが、それは自然的生命力の強い存在感を示す言葉であり、「自然のあらゆるモノが声(音)を発している」と認識しているのです。
例えば「神」という概念は、アニミズム思想や多神教の文化圏では、とにかく人智を越えた尊い存在に対しての総称を「神」としています。荒ぶる神々の声を現実的に置き換えたとき、強風の音や雷などの轟音に当て嵌められるのも納得がいきますし、その轟音と共に起こる災いは地震や雷、豪雨といった自然災害と捉えることもできます。

その中でも静かなようでいて圧倒的存在感を放つ「草木が語りかける」という表現。
正式には、記紀の時代の古代日本人が「草木語問う(くさきこととう)」と言葉を残していることからきているのですが、その言葉に含まれる意味とは、実際には聞こえないはずの「音」に対して傾聴している姿勢があるということ。
それを感じている、または感じ取ろうとしているところが非常にポイントなのです。
それは一体どういうことか、詳しく解説していきます。

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【虫の音を「声」と取るか、「雑音」と取るか】
元・東京医科歯科大学教授の角田忠信氏が、1987年にキューバのハバナで開かれた第一回国際学会「中枢神経系の病態生理学とその代償」に参加していたときのこと。
鳴り響く虫の音に「なんという虫なのですか?」と周囲に聞いたところ、皆が「何も聞こえない」と答えたことから始まります。
角田先生にだけ「虫が鳴いている」と認識しているのに対し、他の科学者達には「虫の音」として認識されていなかったのです。
それが一体どうしてそうなるのか研究した結果、虫の声のような自然界の音を日本人は左脳の「言語脳」で聞いており、西欧人は右脳の「雑音」として認識していることが明らかになったそうです。

つまり日本人は風の音、川のせせらぎ、波の音といった自然界の音、虫の音はもちろん、動物の鳴き声や人の感情的な笑い声や泣き声に至るまで「言語」として認識しているのです。
対して西欧人はそれらの音を日本人とは全く逆の右脳で処理しており、雑音や機械音、もしくは音が鳴っているという感覚だということ。

そして更に興味深いことに自然の音を言語として聴く能力は、必ずしも日本人だけの特性ではないのです。全世界のあらゆる人間に備わっているのにも関わらず、何故か海外の方々は眠ったまま。
何がそうさせているのかというと、実は「日本語」そのものが自然界の音を言語として認識させる能力を持っており、外国の人であっても、幼少期から日本語で育てられた人は、同じ能力を開花させることが明らかになっています。

では何故「日本語」がそうさせるのか。
これにもちゃんとした理由があるのです。

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【日本語の「音」が持つ特性】
ここで声を発する際の口の動きについて、そのメカニズムを詳しく考えたことがある人はどのくらいいるでしょうか。殆どの人が疑問に思うことなく、当たり前のように口を動かしてお話していますよね。

発声において「母音」や「子音」という言葉を聞いたことがあると思います。

母音とは、舌や歯、唇などで息の通りを封鎖せずに発音できる音。子音とは、舌や歯、唇などを接触させたり狭めたりして出す音として認識されています。

日本語はこの母音を基盤に持っている言語であり、母音である「あいうえお」に対して子音の音を結びつけることで成り立っています。「あー」や「うー」という子供の声に耳を傾けたとき、感情をそのままに吐露させる音は母音が持つ特性です。人類が言葉を生み出す前段階の生の音と言えるでしょう。
実はこの「母音主体」の言語は、日本語の他にポリネシア語圏のみに見られるもので、それ以外の西欧人はもちろん、同じアジア圏でも中国、韓国などの言語は子音を主体としているのです。

この言葉の原初ともいえる母音を主体とする言語には、命そのもの、霊性なるものへ直感的にアプローチさせる特性が備わっていると考えられています。

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因みに・・・
現在の全世界の人間の数は約70億人。世界で承認されている国の数は約190ヶ国。そして世界で話されている言語は約7000言語。

その中でも日本語とポリネシア語圏のみが、母音を基本とする言語を話しているんですって。
なんだかちょっと面白いですよね。

次回は、ここまで語ってきた日本人と言霊についての補足や追記を残していけたらいいな。

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