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スピッツ「さらさら」 ゴリゴリ 力でつぶされそうで 身体を水につくりかえていく

2013年5月15日に「さらさら/僕はきっと旅に出る」の両A面シングル。全作の「シロクマ/ビギナー」から2年8カ月ぶりのリリースだとウィキペディアには書いてあった。アルバム「小さな生き物」の当時は東日本大震災などがあって、多忙により、スピッツから離れていた時期。ニュースで、震災後に草野さんが体調を崩してライブが延期になったなどの報道には接したけど・・・。

2011年3月11日をはさんで、2年8カ月ぶりに出したシングル。
この「さらさら」は、曲名のさりげなさからは、想像できないような暗いイメージ、哀しみが伝わってくる。

「震災をはさんで出たシングル」と聞いて、わたし自身にもバイアスがかかっている可能性はありますが、歌詞を見ていきたいと思います。

「素直になりたくて 言葉を探す
何かあるようで何もなくて
雨の音だけが 部屋をうめていく」

ありがとうとか、好きとか、あなたが必要だとか、何か自分の中から言葉を紡ぎ出したいけど、何も出てこない。雨の音だけが聞こえる沈黙の空間。

「だから眠りにつくまで そばにいてほしいだけさ
見てないときは自由でいい
まだ続くと信じてる 朝が来るって信じてる
哀しみは忘れないまま」

上記がサビ。誰が、誰に向かって「そばにいてほしい」と思っているんだろう?そこが全く分からないので、いつもながら想像を巡らせていくしかない。

次のフレーズで

「的外ればかりまた謝って
ゆがんでいることに甘えながら
君の指先の 冷たさを想う」

君という代名詞が出てきましたね。君が誰なのか?がこの曲の全体像を大きく左右します。なので、いくつか想定してみたいと思います。

1.好きな相手
2.自分の子ども
3.亡くなった自分の子ども
4.亡くなった好きな相手
5.死にそうな自分が、好きな相手に対して

いろいろと想定してみましたが、「君」は亡くなっているのではないかと感じてしまいます。

「眠りにつくまで そばにいて欲しいだけさ」

この部分は、亡くなった相手に対して、そばにいてくれているような気持ちが芽生えており、ずっといてほしいと懇願しているのかな。

「見てないときは自由でいい」

自分が眠って意識がないときは消えていてもいいよ。

「まだ続くと信じてる 朝が来るって信じてる」

君が生きてると信じたい。朝になれば、生き返っているって信じたい。

「哀しみは忘れないまま」

亡くなったことは知っているんだけど。

勝手な解釈をしてみました。どうでしょう?

「ゴリゴリ 力でつぶされそうで 身体を水に作りかえていく
魚の君を泳がせ 湖へ湖へ
優しい光が僕らに射して 巧妙な罠を抜け出したんだ
夢オチじゃないお話 百度目の答えなら 正解 正解」

ゴリゴリ 力でつぶされそうで・・・どうしても震災をイメージしちゃう。それでも、自分を犠牲に「君」を救って安全なところへ。

あれ、死んでるのは、自分なのかしら?うーん。

「夢オチじゃないお話 百度目の答えなら 正解 正解」

はどういう意味なんだろう。本当に難しいですね。私の力では解釈できそうにありません。

「結び目はほどけそうでも」

何もかも終わってしまいそうでも、という意味かしら。

そうかあ。いつもながら、解釈は中途半端ですが、久しぶりに出したシングルがこの歌詞だったら、当時のファンは心配しただろうなあ。草野さんのこと。

「さらさら」。2011年3月。あらゆる死、あらゆる別れがありました。さらさらと、簡単に消えて行ってしまったような命がたくさんありました。

私には、この曲からは、苦しみ、哀しみ、嘆きしか伝わってきません。

2022年9月1日 トラジロウ

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